初心者向け DJ機材の選び方 【現場仕様】

この手の記事やYouTubeの動画は色々あるけれど、現場でもプレイしてきたDJ歴13年の私の視点で解説します。



序章

まずはどういう形でDJがしたいのか。
これによって機材選びは変わります。
まず大きく分けて現状のDJのスタイルは3種類。

1.アナログレコードを使うスタイル
2.USBデバイス内のデータを使うスタイル
3.PCDJソフトを使うスタイル

え、CDは?と思う方もいると思いますが、2023年現在CDでDJするメリットはほとんどないと言っても過言ではありませんし、現場でもほぼ見ませんので、詳しい話は割愛します。

それと、それなりに"ちゃんと"DJがしたいならPCは必須です。
現場でのプレイで使う/使わないに関わらず必要になります。
なんならCDでやる時も必要です。
一部タブレットやスマートフォン対応の機材やソフトもありますが、基本的にはオモチャに毛が生えたような物だと思いましょう。
安いので勘違いされがちですが、初心者が練習する機材ではなく、上手い人が遊びで使う機材です。

また、以下で紹介しますが、現場を目指す場合はまずPioneer DJ一択だと思ってください(ターンテーブル以外)。

ではいよいよ本編。


アナログ編

近年レコードのリバイバルにより再注目されているスタイルです。
最近の若い世代は違うかもしれませんが、おそらく30代以上くらいの年代でDJと言えば、レコードを擦ってるイメージが強いでしょう。

メリットとしては、アナログ特有の音、DJをしているという満足感、すでにコレクションしているレコードが実戦で使える・・・などでしょう。
デメリットは敷居の高さや音源集め・管理の大変さ、PCDJなどに比べて操作の難易度が高い、大量のレコードを現場に持って行くのが大変・・・といった所でしょうか。
ただ、デメリットを覆せるだけの独特の魅力があるからこそ現在でも支持されているスタイルになります。

アナログの場合はターンテーブルが最低2台とミキサーが必要です。

2ターンテーブル 1ミキサー

ターンテーブルはTechnicsのSL-1200シリーズで間違いないです。
これは昔からDJ用ターンテーブルとしてずっと支持されているモデルで、クラブにあるターンテーブルも基本SL-1200です。
現行機は7代目のMK7なので、新品で買うならこれになります。
中古品も多く出回っていますが、DJ用として特に人気なのはMK3D、MK5G、MK6あたりだと思います。
MK3なんかは相当古いので状態が気になりますが、良い個体を引けば長く使える事でしょう。

Technics SL-1200MK7

SL1200以外であれば、残るはPioneer DJのPLX-1000でしょう。
Pioneer DJは元はCDJで一躍DJ界のトップに立ったブランドですが、テクニクスがMK6を最後に一時ターンテーブルを製造していなかった時期にリリースされた物です。
SL-1200の代替となれるよう、デザインもかなり近付けてあります。
たまに現場でも見ます。
下位機種のPLX-500もありますが、こちらはややトルクが弱いとかなんとか。
個人的には状態の悪い中古テクニクスよりはこっちの方が良い気がしています。

それ以外は正直辞めた方がいいです。
ターンテーブルはCDJやPCDJ以上に操作感やフィーリングがプレイに直結してくるので、なるべく現場環境に近い方が良いです。


USBデバイス編

こちらは恐らく今現在一番現場で採用されているスタイルです。
DJに興味を持っている人なら、よく「CDJ」という単語を耳にすると思いますが、「CDJ=USBを使う機材」だと思って下さい。
もちろんCDも使えますが(最新のCDJ-3000は使えない)、使っている人はいません。
USBメモリなりSSDなりに曲データをブチ込んで持って行くだけなので、圧倒的に楽です。
ポケットに突っ込んで手ぶらで現場行ってもプレイできます。

これをやるにはPioneer DJのrekordboxという管理ソフトが必要です。(無料)
とりあえずDJをやりたい人は入れておきましょう。
rekordboxに曲を読み込ませると、楽曲のテンポやキー、波形などを解析してくれます。
あとはこれをUSBデバイスにエクスポートして、現場に持って行くだけです。簡単。

CDJ-3000とDJM-900NXS2
現場でよく見る組み合わせ例

そもそもがPioneer DJのソフトを使ったシステムなので、基本Pioneer DJの機材(CDJシリーズ、XDJシリーズ)でしか使えません。
ただほとんど全てのクラブなどはPioneer DJの機材があるので、心配する事はありません。
注意すべきは、CDJと言っても旧世代のそれこそCDをメインとしていた時代の機材では使えません。(CDJ-800系、1000系)
CDJ-2000系、900系、3000であれば問題ありません。850はLINKできないので微妙。
また飲食店のブースやミュージックバーみたいな所ではXDJシリーズがある場合もあるでしょう。
こちらでも問題なく使えます。

ではこのスタイルで自宅機材は何を買えば良いのかですが、ずばりXDJシリーズのオールインワン型が一番オススメです。
もちろん100万ぐらい予算があれば、CDJ-3000x2とDJM-A9が最強ですが。
現状オールインワンタイプのXDJは、XDJ-RX2、XDJ-RX3、XDJ-XZが販売中かと思います。
個人的には今買うならRX3かなと思います。
2chしかありませんが、ディスプレイ部がCDJ-3000に一番近く、ミキサー部はDJM-900NXS2に近いです。
この環境が27万円くらいで揃うのはかなりコスパが高いです。

XDJ-RX3 
先ほどの画像と比べてみてください

次点はXDJ-XZでしょうか。
こちらはCDJ-2000NXS2とDJM-900NXS2のセットと言った感じです。
まあCDJ-2000NXS2も未だ現役なので、4ch欲しい場合はこちらでも良いと思います。
ミキサー部にX-Padが付いていたり、ほぼ900NXS2と同じです。

もう一つ、OPUS QUADというちょっと異色な機材もあります。
こちらは機能的にはXDJ-XZのマイナーチェンジのような感じです。
デザインが落ち着いているのでインテリアに馴染ませたい人はアリかもしれませんが、個人宅で持つ機材ではない気がします。
結婚式場やホテルなんかが似合う機材。

他にはバラでXDJ-1000やXDJ-700もありますが、これらは旧世代のCDJからの買い替えや既にDJセットを持っている人向けなので、これから始める人は一体型をオススメします。


PCDJ編

3つ目のPCDJです。
今回一番話したかったのはここかもしれません。

まずPCDJソフトは現在2大巨頭が存在します。
1つはPioneer DJのrekordbox、もう一つはserato DJです。
このどちらにするかが結構悩ましい所でありますが、個人的にはレコボ推しです。
以前serato専用コントローラーを使っていた時期もあるのでserato DJ Proのライセンスも持ってますが、seratoも確かに素晴らしいソフトではあるものの、レコボの方が色々と痒い所に手が届く感じがあります。
また現場での使用率が高いという点でも有利です。

が、これがヒップホップの現場に行くとseratoが多数だったりします。
ヒップホップメインでガッツリ擦ったりしたい方はseratoをオススメします。
四つ打ちで言えば、個人的な体感ですがレコボの方がMIX中の音の混ざりが繊細な気がします。seratoは結構大味な印象。

他にもTraktorやらVirtual DJやらありますが、今回は割愛。
結局周りに使ってる人がいないとトラブルシューティングもしにくいし、現場でトラブルも起きやすいので長い物には巻かれた方が吉です。

もう一つrekordboxの大きな利点としては、PCDJソフトとして使うのと同時に、当然楽曲管理ソフトとしても機能するという事です。
つまり、家ではコントローラーでPCDJをしていても、現場に行く時にはUSBにデータをエクスポートして現場のCDJが使えると言う事です。
実際Pioneer DJもこの運用を想定しているのか、最近のrekordbox用コントローラーは現場にあるCDJ/DJMシリーズを模したデザインの物が多いです。

ここからやっとオススメコントローラーのお話です。
巷ではDDJ-400やその後継のFLX4が入門用として最適と言われています。
実際それはその通りだと思います。
3~4万で必要十分な機能が搭載され、レイアウトも現場仕様なのでコスパはめちゃくちゃ高いと思います。

ただ個人的には「買えるなら一番高いやつを買え」と言いたい。
DJコントローラーは他のスタンドアローンの機材に比べると安いです。
現にオールインワン型の最高級機OPUS QUADが40万円以上するのに比べ、コントローラーでの最高級機DDJ-FLX10は税込み23万円です。
もちろんPCから買うっていう場合はプラス10万くらいは掛かりますが、相場が安いのはお分かり頂けると思います。

DDJ-FLX10
rekordbox/serato両対応

またこれはハイエンドな機材を触って初めて気づく事ですが、やはりボタンの感触一つ取っても全然違います。
もちろん下位モデルが全然ダメってわけではないんですが、普段から現場のハイエンド機と同じフィーリングで練習できるというのは予想以上に大きなメリットです。

400やFLX4ぐらいのサイズなら現場に持ち込めるという利点はあるんですが、正直面倒だしリスクが大きいと思います。
前後のDJとの転換時に自分で配線しなきゃいけないですし、間違ったケーブル抜いて音を止めようものなら・・・っていうリスクがかなり大きいです。
またブース内のスペースは限られていますので、置き場がない事も多々あります。
CDJやタンテのプラッターの上なんかに置いた日には間違いなく殺されます。
やはり家ではPCDJで練習をして、現場はUSBで、という運用がベストかと思われます。
もちろん一部機能に制限は出たりしますが、そこはさすがのrekordbox、意外とすんなり使えるようになっています。

もちろん皆さん予算があるでしょうし、特にこれから始める人は「続くかも分からないのに何十万も出せねーよ」って感じかもしれませんが、買える範囲で一番高い機材を選ぶと、後々長く使えますし満足度も間違いなく高く、長い目で見ればコスパは高くなります。

DJソフトについて
ここでDJソフトの値段はどうなるの?という疑問が出て来ると思います。
それに関しては、Pioneer DJについて言えばたいていの機材はソフト代も含まれています。
例えばDDJ-FLXシリーズだと、rekordboxのCoreプラン(月額1,000円)までの機能が無料で使えます。
実際、素人が現場でDJをするならCoreプランで充分で、これより上のプランは職業DJが使うようなレベルです。(クラウド対応など)

ではseratoはどうかと言うと、こちらは基本的には有料で購入もしくはサブスクする必要があります。(月額9.99ドル/買い切り249ドル)
現状DDJ-FLXシリーズはseratoにも対応していますが、serato DJ Proで使用する際はProのライセンス購入が必要です。
無償版のserato DJ Liteであれば無料で使えますが、録音機能がありません。
またExpantion Packと呼ばれる個別課金の拡張機能に対応していません。
拡張機能は初心者はあまり使わないとしても、録音機能がない点は無料で使えるrekordboxに見劣りします。
しかし、先日Alpha Theta(Pioneer DJ販売元)がseratoを買収したため、今後この構図は変化する可能性があります。

DDJ-REV7
Pioneer DJ製だがserato専用で、Proライセンスが付属
ヒップホップDJ向け


DVSという選択
もう一つ、PCDJにはDVSという選択肢もあります。
DVSはDigital Vinyl Systemの略で、rekordboxやseratoはこれに対応しています。
要はPC内の音源データを、ターンテーブルやCDJでコントロールしてしまおうというシステムです。
YouTubeなどでDJプレイを見ていて、レコードを一度も入れ替えていないのに曲が変わっていって不思議に思った方もいるのではないでしょうか。
DVSは基本的な機材構成はターンテーブル or CDJとミキサーですが、専用のコントロールヴァイナルもしくはCDを用いて、専用のオーディオインターフェースを介してPCと接続して使用します。

メリットとしてはコントローラーなどを持ち歩かなくても、PCとインターフェース、コントロールヴァイナルを持って行けば現場の機材がそのまま使えるという点です。
インターフェースとヴァイナルは現場に常設してある場合もあります。
(最近はミキサーがインターフェース機能を持っている事も多い)
また、CDJやターンテーブルの操作感そのままにPCDJができる点も大きいです。
ただ、恐らくこれからDJをやろうと思っている人は何を言っているのか分からないと思います。
こちらも現場での配線トラブルのリスクが大きいですし、どちらかと言うとこれまでターンテーブルやCDJでやってきた人が持っている機材をそのままにPCDJに移行したい時に特に有効な選択肢です。

つい先日Pioneer DJからPLX-CRSS12というDVS向けの革新的なターンテーブルが発売されました。
バトルDJなど、ミックスというよりはパフォーマンスを重視したDJを目指したい方は一考の余地ありです。

PLX-CRSS12


最後に

まあ現場でやらないし家だけっていうのであればこの限りではないですし、好きな機材でいいと思うんですが、DJってやってたら意外とすぐ現場でやる機会が生まれる物だったりします。
安く始めたいという気持ちは物凄く分かりますが、結局数か月で買い替えたらその分のお金を余計に使ってしまいます。
その辺も念頭に入れて、良い機材選びの参考になれば。

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