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夜7時、とある公園の片隅で      \biscUiT22号公開記念/

こんばんは!
めいです🌱

東京大学の2年生で社会基盤学を勉強しながら、
「なにも起きていない場所の魅力を発掘する地域プレイヤー」を
目指しています。

今日、私が所属しているサークルで制作している
「東大女子が贈るフリーペーパー biscUiT」
がwebで公開されました!

と、いうことで、今回はいつもとテイストを変えて、
私が今号、「文学賞」ページに寄せたエッセイを公開します。
文学賞ページでは、東大女子が登場する物語を載せていて、
今号では私ともう1人、合わせて2つのエッセイが掲載されています。
ぜひ、読んでみてください♪

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夜7時、とある公園の片隅で

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私は、ひとり走る時間が好きだ。
自分の身体と向き合って、湧き上がってくる思いのひとつひとつに耳を傾ける。
誰かが飛び込んだあとの、プールみたい。
ふつふつと湧き上がる泡は、捉えどころもなく漂い、消えていく。
そういえば、去年はプールに行かなかったな、と思う。


今日は久しぶりにキャンパスに行った。
大学に入学してから1年半、ほとんどの授業がオンラインだった。
オンライン授業。
2年前までは、縁もゆかりもなかったもの。
それが、今の私の生活の基本になっている。
社会がいつどうなるかなんて、誰もわかりやしないんだと、痛感した1年半だった。

東大の女子は少ないらしい。
らしい、というのも、普段はビデオもつけないでオンライン授業を受けているから、
男子がたくさんいる実感が湧かないのだ。

なんにしても、東大の女子は少ないらしい。
私のクラスも、30数人のうち、女子は3人しかいない。
3人。
仲良くなれて本当に良かった。
気が合わない子と一緒だったらと思うと、少しゾッとする。

何はともあれ、東大の女子は少ない。
今朝、教室に入ろうとして、一瞬、足がすくんだ。
男子しかいない。
男友達はたくさんいるけど、やっぱり薄い壁を感じるときがある。

同クラの男子と目が合った。
「よっ」って手をあげてくれた。
「おはよ」って言いながら、私は少しホッとして、その輪の中に入っていく。
「先週の数学の課題、わけわかんないんだけど」とぼやく。
みんな同じようにぼやくけど、それぞれのノートをつきあわせると、意外とわかったりする。
やっぱり東大生はすごい。

ああ、「すごい」という形容詞を、また使ってしまった。
私はこの形容詞が、あまり好きじゃない。

〇〇してれば堅いよね。
〇〇しておけば、きっとお金に困ることはないと思うから。

こういう発言を聞くたびに、ものすごく違和感を覚える。
私たちは、この1年半、身をもって実感したはずだ。
社会がいつどうなるかなんて、誰もわかりやしない。

でも、私も含めて東大生の多くはきっと、
「なんだかんだ言って自分はきっとうまくやっていける」という自信を、少なからず無意識に持っている。
そして、こんな発言ができてしまう。

それが私には、安全だと信じている岸の上から、
ぐらぐら揺れながら進む船を眺めて、
「すごい」と、
無責任に声援をおくっているように感じられてしまう。

その岸は、もしかしたらすごく頑強なのかもしれない。
でも、そんな保証はどこにもなくて、
不安定なところを進みながら、思考と行動を繰り返していくしかないって思う。

どうしたら周りの人を、自分を、幸せにできるのか。
自分には何ができて、何がしたくて、何を求められているのか。

意識が高いねなんて、すごいねなんて、言わないでほしい。
ただ私は、これからの私のことを、周りの人たちのことを、社会のことを、真剣に考えたいだけだから。

でもみんな、口に出さないところで、そうやって考えていたり、
これからのことについての強い思いを、持っていたりする。
そんな人と一緒に、これからのことを、話してみよう。
そしていつか、それをオープンに話せる環境をつくろう。

コロナ禍に大学生になった私たちは、決して可哀想なんかじゃない。


そんなことを考えてる間に家に着いた。
5キロくらい走っただろうか。
心臓も、ふくらはぎも、二の腕も、その存在を私に主張してくる。
彼らをなだめながらストレッチする瞬間、
私が、私として生きているんだって、心から、実感する。

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ここまで読んでくださり、ありがとうございました!
biscUiTはバックナンバーも含めて、webで無料公開していますので、
ぜひご覧になってください♪

ではまた!
めい🌱

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