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【マイソングス】プリュス・ジュ・タンブラス "Plus je t'embrasse" もっとキスして / トマ・デュトロン (2020)



今回は嬉しいことに、リクエストをいただきました!
バルセロナ在住のエスパドリーユ・クリエイター、Miyukism【エスパードリーム本舗】さんから。
なかなか個性的でステキなエスパドリーユ作りと、キラリとした感性をお持ちでいつもドキドキ💗させてもらっています。

そんなMiyukismさんからのお題は、『パリらしい曲』。
既に在パリ?十年、同化し過ぎで、いったいパリらしいってどんなー? と悩む。

そして選んだのがこちら。
トマ・デュトロンの「もっとキスして」、"プリュス・ジュ・タンブラス"。
またしても、使えそうなフランス語ですね🤓



オシャレなフレンチ・ジャズ。
この人なかなかギターが上手で、デビュー当時からややジャズ寄りポップスでしたが、お年と共にもっとジャズの方に寄って来たみたいです。
ただジャズはジャズでも、ジプシー音楽とスウィングが一緒になった"ジャズ・マヌーシュ"というジャンル。

パリに来たことのある方ならご存知かもしれませんが、パリにはいわゆる定住しないジプシーの人達が今だに居ます。その中から一躍有名になったジャズ・マヌーシュ界の神がジャンゴ・ラインハルトというギタリスト。数年前にハリウッドで映画になりました。

トマ・デュトロンもデビューからこのマヌーシュスタイルを得意としていて、MVにも出てくるパリの"サンセット"という小さなライブハウスで弾いていたのを見たことがあります。

今回の彼の演奏は普通のジャズギターですが、大抵弾くのはDUPONT(デュポン)というメーカーのジプシー・ジャズギター。


右側がO型でリード用。メロディを主に担当。
左側がD型でリズム用。フレットがやや短めで高低域のバランスが良。
ピックは音量を大きくする為とても分厚いのですが、元々は平たい小石で弾いていたという話。
音は、クラシックギターにスチール弦を張ったような感じ。これはやっぱり聴くしかありませんね。



ジャンゴ・ラインハルトが弾く「ヌアージュ」"雲"。
この人は元々ジプシー出身。活躍したのは1930年代。
でも、ジプシーなんでキャラバンに住んでいたんですが、ある時火事になり消そうとして半身大火傷。右足と、写真でわかるかと思いますが左手薬指、小指に麻痺が残ります。しかしそれを克服して、生涯ギターを弾き続けました。今では彼を讃えるジャズ・マヌーシュのフェスもありますよ。

ところでこのトマ・デュトロンなかなかの血統馬でして。
パパは、ジャック・デュトロンという歌手。
1960年代にグループサウンズ的なノリの"イェイェ"ブームというのがあったんですが、その中心人物で結構トンがって良い曲たくさん歌ってました。
'70sにはイイ男ぶって葉巻をトレードマークにし、'80sではややアル中気味で身を持ち崩してしまったんですが。

こちらがジャック・デュトロンの「イレ・5(サンク)ール、パリ・セヴェイユ」"朝5時、目覚めるパリ"。(1968)


髭剃るトラヴェスティ
着替えるストリッパー
トラックに轢かれたり
疲れた恋人たち

徹夜明け組と早起き組が交差する早朝のパリの様子を歌います。

他にも、心もサイフも世界はみんなサボテンに刺される「サボテン」、朝、目覚めたらサンタクロースの娘の家の暖炉の前だった男の話「サンタの娘」、ミニでなくオレはデカいのが好きだ!と歌う「ミニ、ミニ、ミニ」、シトロエンの娘、ルノーの娘、サントロペの娘、み〜んな好きと言う「女のコが好き」、カルダンを身に纏い、フェラーリに乗って、フォションに行くように、カルティエへ出入りするプロのプレイボーイを横目にしている「プレイボーイ」など。
シンプルな中にちょっと皮肉を込めながら飄々として歌う様子は当時大ヒット。
若い時の顔は息子のトマとそっくり。

そしてママンは'60sフレンチ・ポップスのアイドル、フランソワーズ・アルディ。「さよならを教えて」(1968)は日本でもヒットしたのでご存知の方も。
私はこの曲が大好きで、フランス語を覚え始めました。

この曲はカバーも多いのですが、'80sにユーロビートの、ジミー・ソマーヴィルがした許せないカバーは置いといて、敬愛する戸川純姐さんが1985年にカバーしたものもご紹介します。

尚、フランソワーズ・アルディの歌詞とは少し違って、"幽霊になって戻ってくるワ"などは勿論、姐さんによる独特な日本語訳となっております。



と言う訳で今日は、プチ・フレンチポップス史のようでした。

きれいな夕焼けが印象的だったトマ・デュトロンの「もっとキスして」。パリが舞台のMVの中には数年前、火事になったノートルダム寺院とその工事中の様子も見ることができます。

(MV中、2'07頃です。)


それにしてもあんなに指の良く動くギタリスト大好き。
あぁ、そんなふうに私を弾いて!



...マイソングスを聴きながら。




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