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女王陛下と民主化

「主権在民」を旗印にした民主化運動では、香港が有名ですが、其より更に有名なのがフランス革命です。宝塚ファンならずとも「ベルサイユのばら」のオスカルとアンドレの名前は聞いたこと有るでしょう。「パンがなければ、お菓子を食べればいいじゃない」と言った王妃の首を刎ねちゃうんですから民主化運動ってのは過激です。フランス革命より大騒ぎだったのはアメリカの独立戦争です。アメリカは当時の宗主国と仲良くしてるみたいですので、実際の処、貴族同志の勢力争いの要素も有ったかもしれませんが、宗主国からの独立を宣言し、憲法が制定され、選挙で国家元首兼軍最高司令官が選ばれるようになったのですから民主化と言って良いでしょう。

では、今日の民主化運動が如何有るべきかというと、国際司法裁判所(ICJ)「コソボ独立宣言の国際法上の合法性事件」が参考になります。此件は、コソボが親政府の合意無しに「一方的」に独立を宣言した事の是非を国連総会から国際司法裁判所に勧告を要請しました(コソボの一方的独立宣言が国際法に適合しているかに関する国際司法裁判所の勧告的意見の要請)。此件に関する日本政府の見解は以下です。

同陳述書においては、コソボの独立宣言自体は事実行為であり、これを規律する国際法はないと解されること、また、コソボの分離独立については、国連を中心とする国際社会の深い継続的関与に特徴付けられた特殊性にかんがみ正当化され得るものであり、関連の国連安保理決議を含め、国際法に照らしても問題はないと考えられるとの立場を述べた

国際司法裁判所(ICJ)「コソボ独立宣言の国際法上の合法性事件」
に関する日本の陳述書提出について

此件の国際司法裁判所の判断は、「2008年2月17日に採択されたコソボ独立宣言は国際法に違反していなかったとの意見である」(コソボに関する一方的独立宣言の国際法適合性に関する国際司法裁判所の勧告的意見)。裁判所の判断は判例に拘束されるので、此見解は今でも有効です。つまり、或る地域の住民が親政府の合意無しに独立するのを妨げる国際法は存在し無い。

では、或る地域が親政府から独立したいとすると如何するかというと、民主的運動としては、独立の是非を問う住民投票が最も適切でしょう。例えば、英国ではスコットランドの独立を問う住民投票を2014年に実施してます。此処で政治が絡んできます。親政府が法律で独立の是非を問う住民投票を禁止してたら如何なるか?独立するのだから、実際上無視しても問題無いという意見と違法だから無効という意見が有って決着は着いて無いように思います。

例えば、スペイン政府はカタロニア地方の独立運動を抑圧するために、親政府の合意なしに独立を問う住民投票を実施したとしてカタロニア地方の指導者達を刑務所に閉じ込めたりしてる。勿論、スペインは王国ですので、国際法に従うのは王様の判断一つです。一方、共和国や「法の支配」を訴ったえるような良識の有る国の政府は国際法を尊重するのを期待される。

やっと、本題です。2014年2月20日ウクライナでクーデター騷ぎが起こり、22日親ロシアと言われてた大統領が解任されました。2月27-28日、クリミア議会はウクライナからの独立を宣言し、3月16日にロシアに併合するか、ウクライナに戻るかを問う住民投票を実施しました。住民投票の結果は97%の投票者がロシアを選らびました。

何故だか、フランスもアメリカも此住民投票は無効だと主張してます。それが尾を引いてのウクライナ戦争です。頭の良い人達は短期記憶しか無いので、数百年前に自分達のやった事は忘れたのでしょう。其でもコソボ独立に関する国際司法裁判所の判断は数年前の事ですから覚えていても良いかと。

因みに、日本政府はクリミア独立の話には近寄ら無い様にしてます。というのは、日本政府は此件に関しては脛に傷を持つ身です。1871年から1879年にかけて琉球処分と称し琉球を武力で日本に併合、又、1869年に函館で独立宣言した蝦夷共和国を武力で抑圧しました。武力に依る占領から其地域を自国の領土とするは国際法違反です。なのでロシアを悪者にすることで関心をそちらに向け、自分達に火の粉が降りかかって来るのを避けたいのでしょう。多分、コソボ独立の司法判断の時は自分達のしたことと、国際法との繋がりを考えて無かったのでしょう。頭の良い人達に有りがちな自己中思考です。


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