お返しのチョコは、ほろ苦かった

最初と比べたらとっても近くなったから忘れていたけど、随分自分の生活のいろんな場所に出てくる人だった。少しだけ距離ができてから、改めて気づく。思い出の場所、共通の友人、自分の進路の話、どんな場面でも悪意なく出てくるのはそれだけ自分が背中を見てきたからで、今このタイミングでふと日常にたくさん出てくることを攻めたいような攻めることができないような存在だった。

もう、5年半になる。

憧れの人はどれだけどれだけ追いかけても絶対に追いつけなくて、だけど確実に徐々に距離を詰めた5年半だった。

唐突に起こったことは夢のようで、今でも現実だったのかわからない。感覚を思い出そうとしても思い出せない。すぐに終わったことだったから夢だったかもしれない。けれどしっかりと残る履歴に、夢ではないことを知って、心がきゅっとする。

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とつぜんに渡されたチョコレートは、お返しだった。海外旅行のお土産なんだけれども、私が追っかけの1年目に渡したバレンタインのお返しだった。

「遅くなったけど、あのときの」

少し笑ってしまった、けどあれだけ前の出来事をまだ心の中に留めておいてくれたことが嬉しくて、あのときの純粋な気持ちが蘇った。

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夢みたいな時間のあと、散らかって座る場所も少ない自分の部屋で冷たい床の上に崩れ落ちた。手にしっかり持った六角形の箱を開けると、箱の形まんまの巨大なチョコレートだった。最後までらしくて、笑ってしまった。でもかじったらほろ苦くて、思わず涙をこぼしてしまった。

遅めのホワイトデーの夜の話。

#3回目 #チョコレート #バレンタイン #ホワイトデー #エッセイ



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菜乃

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