空気を揺らせ 鼓動を鳴らせ。


Perfumeが大好きだ。

どれくらい大好きかというと、私がPerfumeについて話すと、だいたい「気持ちが悪い」という感想を賜る。

人が何かを愛する時、他人はそれを追体験することはできない。受け入れることができないものを前にして人は「気持ちが悪い」という言葉を選ぶと思っている。高校生の時に、今はもうない群馬県は前橋市内の商店街の鄙びた映画館で、話題のアニメ映画を母親と観に行った、その時観た映画の最後のセリフがそれだ。これがどれほど大惨事であるかというのは知っている人しか分からないであろうが、とにかく「気持ち悪い」。そういう感じだ。

私にPerfumeを教えてくれたのは、職場の同期の女の子だ。別に彼女の個人情報を開陳したいわけではないのだけれど彼女とは新人研修所のヤニ部屋で話をして親しくなり(その時私はマルメンだったのだけれど彼女はラーク赤で格好良かった)、彼女がタバコをやめ私がタバコをやめ彼女が結婚し離婚し再婚し夫の海外赴任に休職してついていって私は結婚しゴタゴタして仕事を休んでいるので、彼女がその後職場に戻ったのか知らない。働きたくないと言っていたし再婚相手の子なら産みたいと言っていた。そういう相手と彼女が結ばれたことを私は心から嬉しく思うし眩しいと思う私にはできなかったから。話が逸れたが、彼女がある日、mixiでPerfumeのライブに行ったことを書いた。それが私とPerfumeの出会いだ。彼女だけではなく、幼馴染もPerfumeが好きだ。みんなPerfumeが好きだ。好きだよね?好きだよね??

だからPerfumeを好きになった頃、私はまだギリギリ「女の子」を自称できる歳だった。社会人だったけど。そういえば今年41になる私の目標は「生きているのであれば『若人ぶらない』」ことだ。生きているのなら。何なら今回はOT延長系で薬を貯めている。そういう状況だ。私はどうでもいい。でもPerfumeはここ15年以上好きだ。昨年の紅白でPerfumeが20年とか見てああ彼女たちは大人になって私は老けたんだなあとしみじみ思った。

紅白のPerfumeは、最新曲の「Time Warp」と同系の、リップが目立つメイクで出演していた。あーちゃんは相変わらず可愛くて、のっちは誰もが太鼓判を押す美女に成り、かしゆかはいつもいつだってPerfumeの「楔」として2人にないところを補い繋ぎ止めそしてこれこそがPerfumeであるというパフォーマンスを紡いでいた。大人になり、それぞれが成熟しようとも、PerfumeはPerfumeであるという安心感をファンにもたらす貫禄のステージだった。

どうして私はこんなにもPerfumeが好きなのだろうか。艦これのちっとも減らないゲージを削りながら、精神のしなやかさを保つために私はPerfumeのMVをずっと流している。小心で艦これの艦隊戦を見ていられないから、彼女たちの新旧織り混ざった映像をYouTubeで見ながらたまに艦隊に指示を出している。私の心が平穏になることはないけれど、高揚と高揚と絶望、高揚と絶望と高揚、それを繰り返している。それは、まるで、鬼を呼吸で斬るように。

ところで、Perfumeのプロデュースを手がける中田ヤスタカ氏、彼と私は同い年松坂世代だ。Perfumeをずっとずっと聴いているけれど、いつだったか、「ヤスタカ氏レベルになるとボカロではなくあーちゃんとのっちとかしゆかになるんだな」と思ったことがある。なんて彼女たちに不敬な物思いであろう。しかし、ただ、彼女たちのヒットの背景の一部はそういうことなのだろうとも思う。でも、でも、しかしだ、米津玄師氏だ。ボカロも素晴らしいけれど人間はそれを超えたパフォーマンスができる。米津玄師氏はそれを分かりやすく教えてくれたけれど、つまりそういうことだ。ノストラダムスを何事もなかったかのように乗り越えた私たちは、もう一歩音楽の多様性を手に入れた。その派生の一つがPerfumeだと思っている。

とかなんだとか難しいような頭の悪いようなことを述べたが、Perfumeの魅力は、与えられた曲を動かすパフォーマンス力だ。

可愛らしい声。

計算され尽くしたPVのカメラワーク。

そして完璧なダンス。

こんな行きたいところにも行けない世の中になったウイルスに満ちた世の中になる前に、Perfumeをたくさん見に行っておいてよかった。映像で見てもPerfumeは素晴らしいが、ライブでは彼女たちの個々の素晴らしさがとにかく際立つ。どちらも最高なのだ。どちらも味わってこそPerfumeの素晴らしさは身に染みてくる。

そう、彼女たちは個々が素晴らしい。その個々を最高の形でユニットにせしめているその奇蹟を享受できることを、私はどう喜べばいいのか。

個々の彼女たち、まずはあーちゃんの話から始めよう。彼女はPerfumeの顔だ。Perfumeは比較的3人セットでPerfumeと語られることの多いユニットであると思うが、彼女はPerfumeの中心と言えるだろう。それはなぜか。思うに、彼女はPerfumeの「アイドル」面を率いる役割をしているからだ。歌詞に合わせはにかみ、悲しげな目をし、そして笑う。そこにあるのは「女の子の中の女の子の顔」だ。彼女を見ているとPerfumeはアイドルであるのだということを再確認できる。

次はのっちだ。美しい。彼女は当初から今に至るまで美しい。そして、そうでありながら、彼女はPerfumeの圧倒的「ボーイッシュ担当」である。のっちの衣装を追っていると理解するが、彼女の衣装は基本的にホットパンツだ。彼女はその誰より美しい顔で、一番にクールに振る舞う。彼女は美しいけれど女の子でなくていいのだ。それは他の2人がいるから。彼女はその美貌を「女」に使わずに、それはおそらく彼女の自然体を引き出し、妖精のように舞うことができる。それはPerfumeというユニットの強みでしかない。

そしてかしゆかだ。かしゆかは凄い。彼女は「Perfumeのかしゆかとして在ること」を完璧にこなし、完成している。ブレることがない。私の幼馴染が「かしゆかは一番地頭がいいと思う」と言った時の衝撃を私は忘れることができない。そう、彼女は自分の役割を誰よりも的確に理解し、そしてパフォーマンスに生かすことができる、素晴らしい才能を持った人物であると思う。PerfumeのPVはYouTubeでたくさん見ることができるから、好きな曲でいい、是非見て欲しい。そして一度でいい、かしゆかだけを追ってみて欲しい。彼女のパフォーマンスがいかに完璧なものであるということが分かっていただけると思う。それは曲に合わせ、ダンスに合わせ、指先足先に至るまでのポージング、そして何より表情だ。それも、カメラ目線に合わせた表情は誰もが練習し実現できるであろうが、かしゆか嬢の真価は、カメラ目線を外した時の立ち居振る舞いにある。彼女は、カメラが引いた時の振る舞いを、どうすればいいか理解し、完成したパフォーマンスを魅せる。彼女のそれがあるからPerfumeは完璧に完成する。アイドルを演ずるあーちゃん、強く正しく美しいボーイッシュをゆくのっち、それに自らを黄金律たるポジションに据えることでPerfumeを完成させるかしゆか、そうして完成される3人で築く黄金律がPerfumeなのだ。


さあどうだ。気持ちが悪いだろう。


Perfumeはすごい。私の気持ちの悪さに負けずに、それを汲み取っていただきたい。美しいものを心から美しいと言うとき、好きなものを心から好きだと言うとき、他人はそれについて来ることができない。私は存分に振り切って今愛を語った。取り残されたらぜひ、Perfumeに今一度触れて欲しいと思うのだ。そして一人でも多く、「他人のついてこられない地平」までPerfumeを愛して欲しいとそう思う。


Perfumeが大好きだ。

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