【2010年代のベストアルバム100枚】Katy Perry "Teenage Dream" (2010)

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概要

"Teenage Dream"はアメリカのシンガーKaty Perryの通算3作目のスタジオアルバムです。すべての曲について、Dr. Luke、Max Martin、Benny Blanco、Tricky Stewart、Stargate、Greg Wells、Bonnie McKee、Ester Deanといったプロデューサー・ソングライター達とKaty Perry自身が共作を行っています。全米アルバムチャートでは初週に192,000枚を売り上げ、1位を獲得しています。結果的にアルバムはアメリカだけで300万枚以上を売り上げるロングヒットとなりました。さらにこのアルバムからは5曲の全米ナンバー1ヒットが生まれ、Michael Jacksonの"Bad"以来となる記録を作りました。

砂糖みたいに甘く、食欲をそそられるアルバム

Katy Perryは今作の中身について「少し砂糖みたいに甘いけど、このアルバムを最初から最後まで聴けば、完全に食欲をそそられると思う」と表現しており、「ただのクラブソングはいらなかったの。みんな本物の人生を生きていて、仕事をして、恋愛もしている。この作品にはもうちょっとそういう重要な事柄や物事の見方があるの」と語っています。

「正直になろうとしていたり、正しい動機のために行動していれば、人はそれを見ているもの。最近の子供たちはすごく賢いの」と彼女は指摘しています。「特に音楽については、子供向けにマーケティングされたものを見たら、糾弾するの。『この女はデタラメだ』ってね」と彼女は語っています。「セルアウトはしたいわ。だけどただ『私はセルアウトしてる』って感じではなくて。アリーナを売り切りたいし、何百万ものレコードを売りたいの」

当時の婚約者Russell Brandの存在の大きさ

Katy Perryは今作の半分が当時の婚約者Russell Brandについての曲であることを明かしており、「このアルバムの何曲かは愛にインスパイアされたものなの。"Hummingbird Heartbeat"って曲があるんだけど。彼は私にそのHummingbird Heartbeatをくれるの」とベッドルームでの情事について歌った"Hummingbird Heartbeat"について語っています。「彼の惹かれる部分の一つが、彼の脳。今まで出会った中でも最高に賢い男性の一人よ。彼の隣に立っているってだけで、賢くなったように感じるの」

Russell Brandに出会ったのはその中でも、タイトルトラック"Teenage Dream"の制作中だったことを明かしています。「本当にたくさんの人が共感できるような感情についての曲。20代や30代になって10代の頃を思い出すと、一か八かって感じで恋愛にのめりこんでいたから、傷つくことも多かった。だけど、本当に素晴らしい感情だった。すごくピュアで美しくてありのままのね」

また"Not Like The Movies"についてはRussell Brandとの関係が花開いた2009年の終わりに完成させた曲であることを明らかにしています。「彼のことを想いながら完成させたの。これって映画みたいだとわかってたから。彼は映画とかに出てたから当然よね。時々、これって自分が手に入れることのできる最高の状態にいるって感じられることがある。私は真実の愛を本当に信じているし、人はそれをちゃんと見つけるべきよ」

『オン・ザ・ロード』の一節から生まれた代表曲"Firework"

さらに後に彼女の代表曲の一つとなる"Firework"は、Russell Brandが見せてくれたJack Kerouacの小説『オン・ザ・ロード』の一節に影響されたことをKaty Perryは明かしています。「うるさくて、活気に溢れてて、みんなに『あぁ、空に広がる花火みたいだな』って思われるような人たちに囲まれていたかったってことをその本の中で語っていたのね。それって私のヴァイブそのものだと思うの。すごくいろんな意味で、みんなに『あぁ』って思ってもらいたい。生きる花火になりたいの」

「"California Gurls"、"Peacock"、"Firework"を完成させて『シートベルトを締めて、行くわよ』って気分になったの。起き上がって、もう一度ポップスターになる時だってね」

参照

リリース時の評価

2010年のベストアルバム・リストにこの作品を挙げたメディアはほとんどなく、全体的にアルバムの評価は低いものでありました。

その中でも好意的なレビューを寄せた『Consequence of Sound』は、今作について「ラジオフレンドリーな曲だらけだが、ありがたいことに同じような曲ばかりではない」と指摘しており、「彼女はポップミュージックを新たに作り替えようとも、この世界を変えようともしていないが、今日におけるポップミュージックの位置づけに関する正確なバロメーター」になっているとしています。特にタイトルトラックの"Teenage Dream"については「Nicole Scherzingerにも匹敵する彼女の力強いヴォーカルを見せつけるポップフレンドリーなビート」が「シンプルだが挑発的なメッセージを補完」しており、「ポップソングはこうあるべきだ」と絶賛しています。

中立的なレビューの『Rolling Stone』は、彼女の「クレヴァーなソングライティング」を称賛している一方で、Russell Brandとの性生活について触れた軽薄なテーマの曲や「チャットのような」内容のリリックを皮肉交じりに指摘しています。

2010年代における評価

『The Associated Press』が9位に、『Billboard』が14位に、『Consequence of Sound』が70位に、それぞれ2010年代のベストアルバム・リストに選出しています。

『Billboard』は、Michael Jackson以来となる5つの全米ナンバー1ヒットを生み出した今作の功績をたたえており、「等しく示唆に富む」楽曲が揃っており、「さらに重要なことに、それらの曲が多くの人の心をつかんだ」ことを指摘しています。また、デラックス・ヴァージョンに収録された新たな2曲のヒットの成功も経て、彼女が「ポップ・ミュージックの世界で無視できないほどの影響力」を持つ存在になったと称しています。

『Consequence of Sound』は、"Teenage Dream"を「ライフスタイル・アルバム」と称しており、当時も今も変わらず収録曲を耳にする機会があるほどの「アンセミックなポップ」である今作は多くの人々の記憶に刻まれており、そのヒットシングルの規模からも「途方もない偉業」を成し遂げたと称賛しています。

かみーゆ的まとめ

リリース前に"California Gurls"の大ヒットがあったものの、Katy Perryが1枚のアルバムから5曲の全米ナンバー1ヒットを生み出すほどの大きな存在になることは誰も予想していませんでした。そのあまり大きくない期待感は、当時の批評家からの辛辣なレビューは勿論、Lady GagaやTaylor Swiftといった人気ポップスターの当時の売り上げと比較するとビッグとはいえないアルバムの初週売上”約19万枚”という数字にも表れていました。

しかし結果的に2年間にわたってチャートを支配したビッグヒットの数々のおかげでこのアルバムは長いスパンをかけてヒットを記録し、300万枚以上を売り上げることになります。その今作と、2010年代を代表するもう一つの巨大ポップ・アルバムであるTaylor Swift『1989』の決定的な違いは、”打算的ではない奇跡的なバランスのポップさ”にあると個人的に思っています。敬虔なクリスチャンの家庭で育ち、かつてゴスペル・アルバムをリリースしたこともある彼女にとって、様々な”性的なユーモア”を含有したポップミュージックは商業的なものではなく、反逆的なものだったからこそこのミラクルが起きたと言ったら言い過ぎでしょうか。

タイトルからも一見、「子供向けのアルバム」とも思える今作ですが、Katy Perryはインタヴューでもマーケティングされたものを見抜ける「最近の子供の賢さ」を指摘しており、それは狙っていなかったはずです。実際に彼女は”自分に正直なアルバムを作ることで商業的に成功する”ことこそが大事であるとたびたび強調しています。彼女のその考えは正しく、結果的に老若男女に愛される象徴的な存在となった今作は"Teenage Dream"や"Firework"といった今も愛されるアンセムを生み出し、誰もマネすることのできないレガシーを築き上げたのです。

トラックリストとミュージックビデオ

01. Teenage Dream

02. Last Friday Night (T.G.I.F.)

03. California Gurls feat. Snoop Dogg

04. Firework

05. Peacock

06. Circle The Drain

07. The One That Got Away

08. E.T.

09. Who Am I Living For?

10. Pearl

11. Hummingbird Heartbeat

12. Not Like the Movies


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