かみーゆの選ぶ2020年ベストソング 20-1位

遅くなりました。では、かみーゆの選ぶ年間ベストソング20位から1位までです!!!!

20. Rina Sawayama - XS
Produced by Valley Girl, Chris Lyon, Clarence Clarity & Kyle Shearer
"Gimme just a little bit (More), little bit of (Excess)/Oh me, oh my"
2000年代の初頭のChristina Aguileraを思い出させるようなR&B風ダンスポップに、ニューメタル・ギターを差し込む大胆なポップソング。気候変動などで終わりつつある世界で今も終わらない資本主義の矛盾を突き付ける"XS(Excess)"。何よりもジャンル的にもリリック的にもこれだけの要素を詰め込みながら、懐古主義にも説教臭くもならずに”ポップソング”としてまとめ上げるRinaのセンスが素晴らしいです。

19. Lianne La Havas - Bittersweet
Produced by Beni Giles, Aqualung & Lianne La Havas
"No more hangin' around, oh"
前作から5年ぶりのシングルにふさわしい、Lianneの潤沢なヴォーカルが堪能できる、彼女にしては王道すぎるくらいのソウルフルなバラードソング。歩み寄るにも歩み寄れないところまできた二人の関係について想い悩む歌詞はリアルで、何か変えようとはしているものの行動に起こすほどのエネルギーも二人にもう残されてないようにも思えます。

18. Christine and the Queens - People, I've been sad
Produced by Ash Workman
"It's true that, people, I've been sad (People, I've been sad)"
Christine and the Queensの最高傑作とも称されるこの"People, I've been sad"は、混迷の2020年を象徴する曲として多くのメディアから称賛を集めました。英語とフランス語を織り交ぜながら、孤独や悲痛の想いを歌う姿はそのエコーのかかったヴォーカルも相まって神聖な領域に達しています。それにこの曲は私の2020年の姿そのものでした(突然私情を挟む)。

17. City Girls feat. Doja Cat - Pussy Talk
Produced by Southside
"Pussy talented, it do cartwheels/And he pay 'cause he like how that part feel (Yeah)"
City GirlsとDoja Catの才能あるプッシーは、金のない男は必要としません。しかし、英語もスペイン語もフランス語を話せるマルチリンガルです。ミニマルすぎてアンバランスではとすら感じるビート上で、Yung Miami、JTとDoja Catが流れるように発するリリックはどれも写経して暗唱したくなるほどのインパクト。しかし、その根底にあるのは"WAP"と同じで「私のプッシーは私のコントロール下にあり、お前のものではない」という強いメッセージ。

16. Róisín Murphy - Narcissus
Produced by Richard Brrett
"Oh, if you fall in love with your own reflection like it was planned/You would die in love, failing to feel or to understand"
今年出たアルバムの中でも個人的にお気に入りだったこの曲、昨年のリリースですが入れさせてください。すでにクラシックでタイムレスなディスコソングのような風格すら感じるこの曲、繰り返されるバイオリンの音色はとにかくタイトで、囁くように"Narcissus"と"Be in love"を連呼する部分は、単調さの中に”侘び寂び”を見出すことができます。本来のExtended Mixは11分37秒もあるのですが、それも1970年代の本当は10分以上あるのにシングルカットの際に4分にぶった切るディスコソングの慣習を思い出させて興味深かったです。

15. SUNMI - pporappippam
Produced by Sunmi & Frants
"보라빛 밤(Purple night)"
pporappippamは"purple night"という意味。「人々の気分が落ち込み、重い気持ちになっているこんな時だからこそ、みんなを元気づけるような」曲を書こうという意図の元、Sunmi自身がソングライティングを手掛けたこの曲。70-80年代の今トレンドのディスコポップの要素もありながら、シティ・ポップ的なレトロなサウンドが光る文字通りのバンガー。

14. The Chicks - Gaslighter
Produced by Jack Antonoff & The Chicks
"Gaslighter, you broke me/You're sorry, but where's my apology?"
Dixie Chicks改めThe Chicks、この"Gaslighter"は実に14年ぶりの新曲。Jack Antonoffをプロデューサーに迎えつつも、これまでの路線を踏襲したカントリーっぽさを残したアンセムソングとなりました。歌詞の中身自体はNatalieの経験した離婚についてであるものの、その道徳的な疑問の投げかけ、怒りや悲しみの感情などは、Trump大統領が支配するアメリカ政治へのアンチテーゼ的でもありました。

13. Jessie Ware - Spotlight
Produced by James Ford
"'Cause a dream is just a dream and I don't wanna sleep tonight"
地味だけど割と好きだったソウル路線の前作から、煌びやかなダンス・ディスコサウンドへと舵を切った訳ですが、大人で気品漂うムーディーなサウンド、決して肩肘張らないウィスパー混じりの自然なヴォーカルは、消費されていくダンスポップとの”格”の差を感じます。まさにアルバム"What's Your Pleasure"を予告するのにふさわしいJessie Wareの新たなアンセムの誕生。

12. Taylor Swift feat. Bon Iver - exile
Produced by Aaron Dessner
"I think I've seen this film before/And I didn't like the ending"
The NationalのAaron Dessnerをメインプロデューサーとして迎え、インディーなフォーク路線に移行し人々を驚かせた『folklore』から、The Nationalと親交の深いBon Iverを迎えて新境地を見せた曲。すでに終わりを告げた恋を振り返る両者の想いが淡々と述べられていく中で、二人の意思疎通不足が浮き彫りになっていく様はまさに映画のよう。Justin Vernonが声の加工をせずに普段は披露しないかなりの低音部を含めて素のヴォーカルを披露するのも新鮮でした。

11. ONUKA - Zenit
Produced by Nataliia Zhyzhchenko & Yevgen Filatov
"Літаю в небі я/Мелодія моя[I fly in the sky/My melody]"
ウクライナのエレクトロ・フォークバンドONUKA。"天頂""頂点"を意味するこの"Zenit"では、伝統楽器と現代的なエレクトロサウンドを織り交ぜながら私たちの周りにある自然の雄大さを称えています。EnyaなのかBjorkなのかCharli XCXなのか何を比喩に挙げればいいのかわからないほど独特で、キャッチーなのに荘厳な音楽で圧倒されました。ミュージックビデオではウクライナだけでなく、メキシコ、日本、アフリカの伝統文化を表現し、不完全だけど美しい私たちの生きる世界を描いています。

10. Roddy Ricch - The Box
Produced by Dat Boi Squeeze & 30 Roc
"Bitch, don't wear no shoes in my house"
全米チャートで11週連続首位を獲得し、今年を代表する大ヒット曲となった"The Box"。Ciaraの"Love Sex Magic"の壮大なイントロ部分をサンプリングしているとされていましたが、プロデューサーの30 Rocによると、Omnisphereというプロダクション・ソフトウェアを使ったものなのだそうです。"The Box"は、強盗に使われる弾倉、もしくは彼が昨年一時期拘留されていた刑務所を指しているとも言われています。何にしろバックでリフレインされるアドリブや、彼のメロディアスなラップやキャッチーなフックなど、創意工夫に溢れており、大ヒット曲と呼ぶに相応しい曲でした。

9. Ariana Grande - positions
Produced by TBHits, Mr. Franks & London on da Track
"I'm in the Olympics, way I'm jumpin' through hoops"
"thank you, next"の大成功の次のステップとして、肩の力を抜いたセックスソングである"positions"は、いろいろな意味でポジティブな内容の歌詞から、Arianaの精神状態が最も良い状態にあることの現れであるように感じました。おなじみのTBHitsらしいミニマルで美しいプロダクションに、London on da Track手掛ける鋭角的なトラップのビートが加わり、フレッシュなサウンドを提供していますね。ただ何よりも、Arianaの的を射ているヴォーカルが相変わらず曲を違うレベルに持って行っていると思います。

8. Perfume Genius - Describe
Produced by Blake Mills
"Can you describe them for me?"
Perfume Geniusの持ち味と言えば荘厳で煌びやかなバロックポップという大方の予想を覆す、まるでBruce Springsteenのような土臭いサウンドで、アメリカーナな新境地を見せたリード曲。歪んでヘビーなギターの音の中で、囁くように歌われる憂鬱で内省的な歌詞は対照的な印象を抱かせます。音数はかなり少なく、そのメロディーはこれまでのポップさとは程遠く単調とすら感じますが、そこに不思議と”美しさ”を見出せてしまいます。

7. Miley Cyrus - Midnight Sky
Produced by Louis Bell & watt
"I was born to run, I don't belong to anyone, oh no/I don't need to be loved by you (By you)"
トレンドのディスコ(年間ベスト記事で何度目の言及?)風でありながら、そこにグラム・ロックの要素を加えることで、長い迷走期を経て遂に”自分らしいジャンル”を確立したMiley Cyrus。Stevie Nicks、Joan Jett、Debbie Harryという女性ロックアイコン達にインスパイアされたこの曲とミュージックビデオは、苦難を乗り越えて自分を再発見した彼女の新たな門出を祝うのにふさわしい曲。怒涛の売れっ子ソングライター達によるそのキャッチーなメロディを、これまでになく自信に満ちたディープな歌声で乗りこなすマレットヘアな今のMiley Cyrusが一番カッコいいです。

6. Cardi B feat. Megan Thee Stallion - WAP
Produced by Ayo & Keyz
"Gobble me, swallow me, drip down the side of me (Yeah)/Quick, jump out 'fore you let it get inside of me (Yeah)"
女性ラッパーが性を開けっ広げに語る曲は、女性を性的対象として扱う男性ラッパーへの反抗としてこれまでも存在し続けてきました。ただ男性ラッパーは性的搾取な内容でヒット曲を出しても、Lil KimやFoxy Brown、Trina、Khiaなどがそれでポップチャートのヒットを記録することはありませんでした。露骨に性的な曲を歌う印象のないMissy Elliottでさえ、2002年の『Under Construction』の"Pussycat"のスキットでは「みんな、私がなぜエロい歌詞を歌うのか聞いてくるけど、私は女性を代表している」のだからと強く言及してたのが印象的です。
最近ではSaweetie、Megan Thee Stallion、City Girlsなどが性的な表現でヒット曲を生み出してはいたものの、「大きなクロスオーバーヒット」とまではいかなかったのが正直なところでした。つまるところ、"WAP"は歌詞の内容自体はそこまで画期的ではないのですが、女性2人が露骨な性的表現で、しかも男性を性的搾取するのではなく女性をエンパワメントする形で曲を大ヒットさせ、それが物申したいだけのおじさんたちを巻き込むほどの論争になったところに大きな意義があると個人的には考えています。
ということなので、歴史的意義とアイコニックさではまさに今年を代表している曲だと思うのですが、トラックにそこまで面白さを感じないのと、Cardi BのヴァースにMeganのようなクリエイティビティが感じられないという問題点はある気がしてこの順位となりました。(これだけ語っているので結局好きなのですが、、、)

5. HAIM - The Steps
Produced by Danielle Haim, Ariel Rechtshaid & Rostam
"I can't understand/Why you don't understand me, baby"
振り返るとHAIMの曲って全体的に”すごく完成されているポップソング”という印象が強かったなと思うのですが、この"The Steps"は心の叫びというか、唸り声をあげる轟音のギターやドラムスの音を含めて計算されすぎてない大胆さが今までにないなと感じます。恋愛関係だけでなく、普通の人間関係においても、「前に進んでいると思っていたが、そうではなかった」となることはありふれているわけで、このリリックは誰もが共感できる普遍的なテーマでもあり、日常的にプレッシャーを感じていることだと思います。私も聴いていると一緒になってフラストレーションを感じて叫びたくなるのでした。

4. Lil Baby - The Bigger Picture
Produced by Noah Pettigrew & Section 8
"It's bigger than black and white/It's a problem with the whole way of life"
"The Bigger Picture"は、2020年の"Black Lives Matter"を象徴するプロテストソングとして最も記憶に残る曲でした。そもそも2015年のKendrick Lamarの"Alright"がすでにBLMを象徴するアンセムとなっていた中で、それと同等の訴追力のある曲が今年あったかと言えば、それは正直ほとんどなかったわけで、結局同じメッセージが繰り返されてる印象でした。しかし、あまりシリアスな内容をラップしない印象だったLil Babyが、警察の腐敗や構造化された人種差別に言及するだけでなく、それを客観的かつauthenticな視点でラップしたことは何より大きな衝撃でした。より大局的な視点から物事を見て社会を変革していこうというメッセージとそれを支える、緊張感がありつつも美しいトラック。全リリックを理解できなくても聴くたびに心を動かされる数少ない1曲でした。

3. Lady Gaga & Ariana Grande - Rain On Me
Produced by BURNS & BloodPop
"I hear the thunder comin' down/Won't you rain on me?"
試練の連続だった2020年を浄化する超エンパワメント・アンセム"Rain On Me"なしに、私たちはこの1年を生き延びることができなかったでしょう。完璧なポップソングとはまさにこのこと!と思わせる曲を、この苦難な時代にLady Gagaは再び生み出してくれました。感謝感激Rain On Me。誰も予想していなかったLady GagaとAriana Grandeの組み合わせですが、二人の歌声が完璧にマッチしていることが嬉しい驚きですし、もちろんLady Gaga節が炸裂したフレンチハウス的なベースラインが特徴的な90年代風ダンスポップは文句の付け所がありません。これからも人生の雨は降り続けるでしょう。それでも私たちは今この時に感謝して、踊り続けるのです。

2. Phoebe Bridgers - I Know the End
Produced by The Trilemma, Phoebe Bridgers, Ethan Gruska & Tony Berg
"I'm always pushing you away from me/But you come back with gravity"
自身のドラマーと破局後、その彼がギターに合わせて歌った"I know, I know, I know"という、二人の別れを受け入れようとするフレーズから始まったこの曲は、世界の終わりを想起させるPhoebe史上最もスケールの大きいドラマチックなものとなりました。序盤の郷愁に浸るリリックは儚く憂鬱なテンションが貫いていますが、それでも彼女は前に進もうとします。なぜなら終わりはすぐそこまで来ているから。後半では視点が今の社会情勢に移り、アメリカ・カルチャーへの言及やSpace Xとエイリアンの陰謀論に言及するなどより現実を見据え始め、そしてPhoebeは終わりにたどり着き叫び始めます。まさにその叫びは、まるで世紀末のようだった2020年に呼応しているようでした。

1. Megan Thee Stallion feat. Beyoncé - Savage Remix
Produced by J. White Did It
"On that Demon Time, she might start a OnlyFans (OnlyFans)"
これがRemix、R-E-M-I-X!“Savage”を初めて聴いたとき、個人的には”これがTik Tokで流行ったのね。OK”な立ち位置でした。しかし、同じヒューストン出身のBeyoncéが参加したことで、この”Savage”はOKな立ち位置から「死角なし、まさにSavage」な曲へと進化を遂げます。元々、Meganの曲にしては余白が多めな曲だなという印象はありましたが、その余白に着目したのが、さすがBeyoncéだなという感じがします。もちろん、Meganのラップは自信に満ちていてパワフル。Meganは本当にClassyでBougieでRatchetだし、SassyでMoodyでNasty。異論はありません。実際にMeganは黒人女性のために声を上げ、暴力から黒人女性たちを守ること、そして結束を訴え続けてきたアーティストであり、ラップの内容もそうした信条に基づいたものであります。そんなMeganのラップを惹きたてつつもBeyoncéが幾重のハーモニー、おなじみのラップスキルを新SNSの豆知識を披露していく姿が痛快でした。
2020年はMegan Thee Stallionの年だったといっても過言ではないとは思いますが、その素晴らしい快進撃を象徴するのがこの曲でした。”Hot Girl Summer”で見せたようなヴァイラルへの対応力を見せながらも、そのラップスキルとカリスマ的な存在感、そして誰もを魅了する人柄の良さがこの1曲に凝縮されています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?