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夜と夕暮れの隙間に

手に入れることができないものがなんだったかを
思い知らされたとき
涙がとまらずあふれ出た。
たしかにそれはこの手のなかにあった。
誰にも言わずに
ずっと宝物のように大事に
奥底にしまってきた。
それは、ずっと私のそばにいて
ずっと私の言葉に耳を傾けてくれていた。
現実じゃないと知っていたけど日常だった。
でも圧倒的なリアルは
それを飛び越えて
いまの私に突きつける、何が本当かを。

グレイに群青色が混じった空を二人で眺めると、
君にはその先の清々しい青い空が見えた。
私にはその先のくすんだ城が見えた。
それでもいま同じ道を歩いている。
私たちは夜の帳が降るときを知っていた。
私は向こうを向き、君は私をみる。
君はいう。
明日の朝も二人で散歩しようと。
私は20年後の影を追いかけて、走り出す。

朝、目が覚めると、
日常が寝息をたてている。
私も日常と一緒にそっとまた眠りにつく。


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