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いまさら聞けない!? 「ブランド」っていったい何なのか?

「ブラント」とは何か? 「ブランド」という言葉は、今ではいろいろなところで聞かれるようになりました。とはいえ、その言葉の定義は実にさまざまです。企業経営にとって重要な「ブランド」を、できるかぎりわかりやすく定義してみたいと思います。

ブランドの定義

ブランドとは何かについて、あらためて考えてみましょう。「ブランド」の語源は諸説ありますが、一般的には、焼印を押す意味の「burned」(古期スカンジナビア語の「brandr」)だといわれています。これは家畜の牛に、自分のモノ(所有物)だという目印の焼印を押すことで、見た目に差がないモノを他者のモノと区別するための目印がブランドであるというものです。
それが、現代ではその意味がもっと広がって、「心の中の焼印」に変わってきたといえるのではないかと考えています。

私はブランドを「頭や心の中に存在する価値やイメージのかたまり(集合体)」であると定義しています。生活者がこれまでの経験から、企業や商品に何かしらの意味や価値を感じる。そういった頭の中の価値やイメージが蓄積されて、名前やロゴと結びつき、心の中に焼印が押された状態になるのがブランドです。
その結果、名前やロゴを見ただけで、何かしらの価値を連想できるような状態になっていきます。特に、優れたブランドは、名前やロゴを見るだけで、人々に好意的なイメージを想起させるため、競合との違いが明確になり、選ばれやすく、そして支持され続けるようになります。

「モノ」と「ブランド」の違い

ここに2つのコップに入った水があり、「どちらの水を選ぶか」と聞いたとします。すると、どちらでも同じものに見えるため、どちらか一方を選ぶということはなかなかおこらないでしょう。しかし、「エビアン」や「ボルビック」、「クリスタルガイザー」といったロゴの入ったペットボトルを一緒に見せると、人によっては「いつも飲んでいるブランドを選ぼう」とか、「社会貢献をしているブランドがよい」などと考えて、どちらかを選ぶことができるようになるのではないでしょうか。

同じように、普通のサバと大分県の佐賀関で水揚げされる「関サバ」を並べたとき、見た目はほとんど同じなのに、「関サバ」の価格は一般的なサバの10倍くらい高くなります。これは、潮の流れが激しい豊予海峡で育つ身の引き締まったサバがおいしく希少性があるということを、消費者が「関サバ」というブランド名から連想することで、価格が高くても選ばれるわけです。
ほかにも、普通のお米と「コシヒカリ」を出されたら、見た目は同じでもついつい「コシヒカリ」を選んでしまうなど、例を挙げればキリがありません。

つまり、エビアンや関サバ、コシヒカリという名前によって生産地や味、希少性、値段など、過去の経験や知識から、その名前の背景にある何かしらの価値やイメージが想起され、他のモノと差別化できるから選ばれるようになるのです。そこが一般的の「モノ」と「ブランド」の違いといえます。
要は「モノ」に名前が付き、しかもそこに何かしらの価値や意味が想起されてはじめて「ブランド」になるのです。

なぜ、ブランドが大切なのか?

「モノ」から「ブランド」に変わると消費者の行動に変化が起きます。先ほどの水の例のように選ばれやすくなり(選好性)、好きになってくれれば長く選ばれ続け(継続性)、関サバの例ように価格が高くても選ばれるようになる(プレミアム性)。これら3つによって、企業は長期的に利益を向上させることができると考えられます。

さらに、商品ブランドではなく、コーポレート(企業)ブランドとなると、そこで働く従業員にもブランドが効いてきます。従業員一人ひとりが自分の会社を好きになり、誇りを持つようになれば組織は活性化するでしょう。そして求心力が高まり一体感が醸成されることで、さまざまな企業活動にブレが少なくなります。また、「そこで働きたい」と思う就職希望者が増えれば、優秀な人材の獲得にも結びつくでしょう。

また、企業価値という点で見ると、ブランド力のある企業は、株主からも支持され、時価総額も大きくなりやすいといえます。つまり、企業価値自体を高めることにもつながっていきます。


企業経営において「ブランド」が注目されるのは、以上のような多くのメリットがあるからです。では、「モノ」から「ブランド」にしていくには何をしたらよいのか。このブランド化=ブランディングの方法については、またの機会にあらためてご紹介いたします。

ご興味をもっていただけましたら、詳細は拙著『選ばれ続ける必然 誰でもできる「ブランディング」のはじめ方』(講談社+α新書)でも触れておりますので、よろしければご覧いただけますと幸いです。


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