1:振り返れば、青空。──IMPACTorsだった男たちへ

 デビュー前にどこかに書き残しておきたかったので、今更ながらに振り返ってみたりなど。

 2023年5月25日をもって、私は所謂“ジャニオタ”を卒業した。大好きなIMPACTorsがジャニーズを卒業したからだ。離れていた期間はあれどなんだかんだでオタク人生の半分以上を占めていたそれ。お別れするのは、なんだか不思議な心地だった。

 IMPACTorsとのお付き合いは約2年ほどだった。私の人生においてこの数字は決して長くはない。けれど、ジャニーズJr.としては最初で最後の自担であったから、結構特別だった。彼を推して、初めてのことが沢山あった。新鮮な経験や喜びを沢山知った。彼は私の好きになる舞台人の傾向にまるで当てはまらない人だったから、なおのこと面白かった。事務所や場所に限らずエンタメを享受してきた、それなりに目が肥えた厄介オタクを、彼はある日表現ひとつで惚れさせたのだ。彼が本当にすごいということ、私が彼をすごいと思い続けていることは、ここで明言しておきたい。

 閑話休題。世界が一変した12月26日。そして、それが確信になった1月1日。私は不安よりも悔しさが勝った。憧れを手放すということが、宝物を自らの手で捨てるということが、どれほど痛いだろうと思った。それだけのやんごとない事情があったのだろうと推察はできるが、それを深堀する気にもなれなかった。ただただ、決断そのものではなく、それによって手から滑り落ちていくものが、それを掴み直さないという選択を取るまでに至ったことが、悔しかった。私はIMPACTorsの曲が好きだった。衣装が好きだった。このグループは必ずデビューして活躍すると信じていた。そしてそれは、彼らもそうであるはずだったから。
 それでも決断それ自体には納得したし、今に至るまで異を唱えたくなったこともない。悔し泣きを終えた頃、こうも思った。「大切なものを山ほど手放して、それでも最後に残った手放せなかったものが、“7人でアイドルとして、PINKyと歩むこと”なんじゃないか」そう思ったら、今度は泣きたくなるくらい嬉しくてたまらなかった。7人でいるなら、それでいい。それだけで満足だと思った。7人でいるのなら、彼らが彼らを貫いてくれる気がしていたのだ。
 それは卒業のその日まで変わらずだった。スプパラでオリ曲たちを目に焼き付けながら、なんの確信もないのに大丈夫だと思った。この人たちについていこう。この道を自分の意思で選ぼう。迷いはなかった。7人の真ん中で、強い瞳で笑う彼の姿が忘れられない。やっぱりここが彼の場所だ、と思った。

 時は流れ。
 彼らは期待通り、否、期待以上の姿で表舞台に現れた。TOBE所属、IMP.として。
 そして8月18日、彼らはデビューする。PINKY.を連れて、新たな旅路への第一歩を踏み出す。

 素直に、嬉しい。まずはそれだ。ずっとずっと彼らの口から聞きたかった「デビューします」の言葉を聞けて、この世に彼らの音が、エンターテインメントが放たれる。嬉しくて、たまらない。

 それと同時に、ああ私はやっとここでIMPACTorsを振り返れる、と思った。
 後ろを見てみると、色々なことが転がっていた。彼らを初めて直接見られた、滝沢歌舞伎ZERO2021。おさらいのように見た配信では、幕間で彼が活躍するのを正座のまま見つめていた。クリアファイルひとつに狂喜乱舞して、セブンイレブンを回り、アイスの食べすぎでお腹を壊したこともあった。出演映画のために朝早く起きたり、やたらとたんぱく質を摂取する生活を送ったり。もちろんステージを見に行けば、彼らの輝きに圧倒されながら、握り締めた煌々と輝くピンク色に感情を込めて。それを声として届けられたのはたった一度きりになってしまったけれど、それだけでも贅沢すぎることだと思った。自己満足の言葉を綴る度に、“佐藤新様”と書いた紙に封をする度に、自分の心の中でどれほど彼の存在が輝いているか思い知らされた。その日々のどれもが、間違いなく宝物だった。
 思い出たちは決して、私の腕や髪を掴もうとはしなかった。寧ろ、いってこい、とでも言いたげに背中を押している気さえした。
 まるで青空だ、と思った。あの夏の眩しい青空より青くて、芽吹いた春よりあたたかい。悔いの雲ひとつ浮かばない、晴天だと思った。そうしてくれたのは、いつだって全力を、ひとりひとりにぶつけてくれた、大好きだった7人だ。

 今だからやっと言葉にできる。私は、IMPACTorsが大好きだった。
 大好きだったから、その先を望むことができた。IMPACTorsのおかげで、私はIMP.を好きになれた。だから改めて言いたい。IMPACTors、本当にありがとう。私はあなたたちが大好きでした。

 そして、IMP.、改めてこれから先、ずっとずっとよろしく。PINKY.になった私は、やっぱりあなたたちのことが大好きなようだから。


【追記】
 これは私の言語に対する感覚で、シニーユを完全に分離したものとして扱っているから、これを読んでいる方にはまるでIMPACTorsとIMP.、PINKyの自分とPINKY.の自分が全くの別人を指しているように感じられるかもしれない。私はそう思ってもいるし、同時に完全にはそうではないとも思っている。ただ同じ存在として扱うには、シニフィエを失った“過去のそれ”の行き着く場所を示せる気がしなかったのでそう表現することにした。これは言語の不完全性と、私の技量不足が招いたことだと思ってほしい。

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