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ぶっちゃけ妊活日記 vol.5(前編) / はじめてのクリニック


 カチッカチッカチッ…グゴゴゴーーーー

 リビングから聞こえる時計の針の音がいつもより大きく聞こえる。
 そして、隣からは旦那さんの豪快なイビキが響いてくる。針の音とのハーモニーは、朝食のキッチンオーケストラとは違って、いつもより心をざわつかせ、今夜はなかなか寝付けない。

…のんきに寝ちゃってさっ。

 ちょっとだけ八つ当たりで、Tシャツから覗かせた癒し系の旦那さんのお腹を平手でパチっと軽く打つ。

フガガガ……

 イビキ止んでくれるかもしれないと、淡い期待を抱きながら待ったが、再び腹の底からチューバのような重低音を響かせた。ダメだ、こりゃと志村けんのような表情を浮かべながら、昼間の出来事を振り返った。


  

 今日は初めての不妊治療についての話や、検査のために2人で病院へ出発した。車内ではいつもより緊張感があり、街並みが流れるように変化していくのを、助手席からただただボーッと眺めていた。

 旦那さん「グーグル先生がここだって」
 わたし 「わ〜!思ったよりキレイだし、大きいね!」
 ようやく、いつものテンションが少し戻ってきた。

 不妊治療専門ラッコクリニック…看板を立ち止まって見上げた。

 海野螺子(海のラッコ)院長先生の名前に衝撃を受けて、あの後電話で何を話したか思い出せないままだ。確か持ち物や、注意事項だった気がするが…気を取り直し、意を決してエントランスを抜けて1階の受付へ向かった、心の片隅には受付にはラッコがいるのではないかという淡い期待…疑いを抱いたまま。

 そして、自動ドアを抜けると…



   そこには!!!!!







 受付 「こんにちは。お名前は?」
 わたし「… 15時から予約の◯◯です」
 受付 「では、こちらご記入ください」


 受付には人間の女性が座っていた。
書類を受け取って、近くの空いている席へ着席した。
そして旦那さんにヒソヒソ声で話しかけた。


わたし ( ねぇねぇ、受付の人…人間だったよ!ラッコだと思ってた!)
旦那さん( …ん?まだ寝ぼけてるの?)


 わたしは一人なんだかホッと安心して、書類に目を通しながら記入を開始した。書類は氏名、住所などの連絡先、緊急時の連絡先などの基本的な内容や、裏面には月経情報として一番最近の情報や、生理周期、出血量、日数、既婚か否か、過去の病気情報など、大事なことをギッシリ記入した。
 わたしは普段Eggyというアプリに生理情報、基礎体温や体調について記入している。これはとても便利で、基礎体温は自動でグラフ化したpdfを簡単にメールできたり、印刷できるのでとっても使いやすい!


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とある月の基礎体温はこちら

 男性からしたら、体温を気にしたことない人の方が圧倒的に多いだろうが、1ヶ月のうちに体温は2層の低温期と高温期に分かれる。婦人体温計は細かい表記があり、比較的短時間で測ることができるため、朝の早い忙しいレディーたちの味方だ!
 朝起きて、寝ぼけたまま婦人体温計を口の中に入れる。数秒後にピピピッと合図がしたら完了。3日坊主のわたしでもギリギリできるほど、頼もしいスピード測定である!
 ちなみに、最初は口に体温計を入れるのは抵抗があった。なぜなら人生で体温を測る時は大抵脇の下だったからだ。しかし、人間速攻で慣れるものだ。ものの2日目で慣れたのだが、多分毎朝寝ぼけているから、気にならないのだろう…(照)


 記入が終わると、受付に再提出し、2階の待合ロビーへ促された。
階段を登っていくと、白を基調にした広々とした清潔感あるキレイなソファやカウンター席などがあり、デスクトップ型のパソコンも配置されていた。
 3台ほどの大きなモニターに音楽と共に番号とどこへいくか指定場所が表示される。

ピロロン♪
 C 30番 様
カウンセリングルームへお越しください。


 とうとう呼ばれた!
2人共顔を見合わせて、カウンセリングルームへ向かった。
入り口に、担当看護士さんが迎えてくれた。

看護士さん 「どうぞ、こちらです」

 なんだか優しそうな小柄でやや年配の女性だった。2人はカチコチになったまま促されたイスに座った。

看護士さん 「記入シートに沿って、院長先生の前に質問事項の確認いたしますね。えーと、早速ですが、体外受精というのは何か理由がございますか?」
わたし   「あの、旦那さんがジャパンにいないので、タイミング法など厳しいかと思いまして…一気にステップアップしかないと思いまして」
看護士さん 「なるほど、ジャパンにいらっしゃらないと…」
 つられて「ジャパン」と言いながら、看護士さんはモニターに記入し始めた。

看護士さん 「ちなみに、どれくらいいらっしゃないのですか?」
旦那さん  「月の半分だったり、不定期で2週間いなかったり、3週間いなかったり…」
看護士さん 「かなり長期間なんですね。確かに人工授精は当日に精液が必要なので、やはり難しいかもしれませんね…院長先生にもお伝えしますね。えーと、あとは…おタバコは吸ってらっしゃいますか?

 わたしはちょっと意地悪な微笑みで旦那さんを見つめると、旦那さんもバツが悪そうにしていた。
旦那さん  「はい…」  
看護士さん 「どれくらいの量ですか?」
旦那さん  「えーと、1日3本…です」
看護士さん 「あら、意外に少ないんですね〜(微笑み)」

 3人はここで笑い合った。看護士さんの正直な感想がなんだか場を和ませたのだ。旦那さんはメキシコ寄りの濃い顔にヒゲをはやし、やや長髪で左右を少し刈り上げている。どう見てもヘビースモーカーっぽいし、なんだったら葉巻の方が似合いそうな風貌なのだ。

看護士さん 「では、諸々の情報を元にして、この後院長先生のところで具方向性を決めましょう」


ピロロン♪ 
C 30番 様
診察室 第1へお越しください。

 
カウセリングルームから出て、今度は診察室へ向かった。向かいながらも、わたしだけなんだか落ち着かない。

 (いよいよ海のラッコ先生とのご対面だ。名前がたまたまラッコだっただけで、別に本人がラッコなわけない…そ、そうだよ!受付だって、人間だったし!逆にラッコだったら、メディアとかが放っておかないよっ!)

旦那さん 「緊張してるの?」と顔を覗き込んできた。

 (確かに!ある意味ね!)と思いながら、なんとなくハニカミ笑いをしてごまかした。そして緊張をほぐそうと、旦那さんがわたしの手を引っ張って、診察室の扉を開けた。


ガララ…


 旦那さんの後ろをついて行きながら、診察室へ入った。なんとなくまだ背後に隠れるようにしていると、声が聞こえてきた。


「どうぞ、こちらへお座りください」

声の方向へ、背後から顔を覗かせると…




そこには!!!!





後半につづく…


banner illustration by サタケシュンスケさん




いよいよ本格的に不妊治療を始めることになったので、
 記録として不定期でエッセイ的妊活話をしたいと思います。
 不妊治療ってどうしてもデリケートな話になりがちだけれど、
想いや出来事をシェアして、
 悩み考えているnoterさんと、
 繋がるきっかけになれたらいいなと思っています。

9月に妊活や不妊治療についてのマガジンを制作予定です!
妊活や不妊治療の体験インタビューに応じてくださる方、募集中!
(経験者や現在治療中の方で、もし運営興味あれば…ご連絡ください!)


ぶっちゃけ妊活日記 vol.4はこちら

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