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詩をおくところ選集〈はじまりの歌〉


詩をおくところの中から選んで作成をした選集です。21篇収録。

もくじ

はじまりの歌

煙島
この世
幸福は。
裸婦の呼吸
ちょっとした坂道の変
風を
白楽天との約束
空腹の満たし方
夕食祝い
宇宙フライパン
カラスに頭をつつかれる男
ルビー

髪切り職人ゾズタブ氏の館
石の塔
詩の森
悲鹿
飲み込まれる
森の料理人




はじまりの歌

通りを進んでいた。夏の祭りに行ってしまったのだろうか、人影はまばらだった。並ぶ街灯のうちの一灯が、チカリチカリとしていた。行きつけのレコード店へと向かう。
いつまでも、いつまでも夜が続いていた。

(いらっしゃい)

(こんばんは)

店内には、店長が世界中から集めた珍しいレコードがぎっしりと置かれてあった。

(また、夜が明けないみたいです)

(そうみたいだね)

(あのレコード試してみても良いですか)

店長が店の奥から一枚のレコードを出して来て流してくれた。

 完

 ト

  マ

   ト

  幾

 つ

 し

  つ

   ぶ

   す

   よ

  う

 に

 し

  て

   描

    く

     太

      陽

 そうして、赤い朝が来た。その歌のような凄まじい空だった。

(どうですかねぇ実朝さん)

店長に礼を云い、ようやっと自宅へと向かった。


自分の部屋に
見覚えのない猫たちが
いたようだ
一匹、二匹、三匹
羊のように数えてみる
しあわせだな
そのうちの
一匹は極端に小さくて
かわいらしい
僕はその子ばかりを
かわいがってしまいそうで
急に怖くなった
この子は人にあげてしまおう
そう決心して泣いた
けれど
すばしっこくて
とても捕まえられない

三種の毛がふわふわと舞った

一人じゃ無理だ、と
大声で妹に助けを求めた。


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