わたしは「おかづ」という名の犬である。
保護犬だったおかづがこのさいとう家に来て「もう1年9ヶ月になるねー！」というある日、夫くんと散歩でのこと。

「おかづどしたん？　今日は、やたらクンクンにおうなぁ、道路になんかあんの？」と夫くんに言われる。

んん？？
ん？、
はっ！！
たしかにそうだ。昨日までの散歩では、おかづがリードをグィーーンと引っ張り、夫くんとフガフガフガフガ歩くだけだったのだが、今日は
「ｸﾝｸﾝｸﾝｸﾝ？？、、ｸﾝｸﾝｸﾝｸﾝ！！」
他の犬がやるように、道路をにおってしまう。

なぜだ？
今日は、えらく他の犬のことが気になってしまう。
なぜだ？
なにが気になってクンクンにおってるのか自分でもわらない。ほっといてくれとも思うのだが、夫くんが言う。

「おかづ、よかったね、、やっと慣れてきたんやでこの街に。ま、時間かかったけど、いいねー。。。だって、おかづの散歩ってのはひたすら前に前に進むだけの散歩で、まるで競歩やった。誰と競ってる？　。　他の犬のにおいを探してみたり、興味をもって近づく事なんかせんかったやろ。　ただ何かから逃れるように引っ張り歩くだけで、まるで強制労働してるようやったよ」と言われた。
　
う～ん、たしかにそう。周りが怖かったかもしれん。。おかづは知らない街で生まれ育った。一緒に住んでた婆ちゃんは体が弱くなったから散歩もあまり行ったことなく、ついに保護されてこの街に来た。8ヶ月の時や。。　この街のことなど何も知らない。この知らない所ばかりでなにもかもが怖く、落ち着いて散歩などできんかった。それに道は自分のにおいとは違う会ったこともない犬のにおいだらけ。そんななんも知らん所で頼りになるのは夫くんだけだったんや。
でもな…、どうも頼れそうになかったんやな。これが。
あ～、
もう、どうしていいのか分からなかったんやー、。
なんか、前に進むしかなかった。

　でもな、最近は散歩にも少し慣れた。途中で会う犬も多くなり、しょっちゅう会う奴がいる。立ち話はせんけどな。
いや、たまに夫くんがしてるな。

お互いどんな奴かわからんのに馴れ馴れしくしてくる奴もいる。やたらキャンキャン言う奴もいる。
立ち上がって吠えてくる奴もいる。が、近づくとビビる奴。

時には、おまえなんか知らん、という奴が急におかづの尻をにおう。びっくりしたー！、、失礼やぞ！

　でもな、近所にハスキーがやってきた。
この前、おかづが玄関の前でのんびり日向ぼっこしてたら、なんも言わんと通り過ぎて行きやがる。なんやこいつ！　おかづはそいつにギャンギャン言うた。言うてんのに無視！
えらそうに。
次の日もギャンギャン言うたら、また無視。えらそうにただ通りすぎる。むかついた。

で、その次の日。
ハスキーがまた通る。おかづはなんも言わんかった。そしたらどうしたと思う？
ハスキー「ﾁﾗｯ！」っとこっち見やがった。
おかづは冷めた目のまま無視。
どう？

ま、どうでもええけど。。そのころからやね。道路をにおい、公園へ自分から行ってやたら辺りをにおい、かけずり回れるようになった。なんでやろ。

一匹でも知り合いできると、こうも違うんやね。普段は全然知らんし、仲がいいわけじゃない。それにしても気になるわけだ。においで存在がわかるし、奴がどこ行ったかもわかる。
いいことやろ。

別に友達じゃなくてただの知り合い。
その知り合いの知り合いも公園へ来てる。
だから、おかづも行く。いいだろう。
それだけでいい。

今は誰も言わなくなった「公園デビュー」。
ルールなどいらない。
あっちでしっこ、こっちでウ○チするときもある。いやもちろん綺麗にするよ、夫くんが。


ここにはいろんな奴がいる。
寝転んで空を見上げてる奴、絵を書いたり本を読んだり、詠んだり歌ったり弾いたりする奴もおる。おっ勉強してる奴もおる。その横ではお笑い、ちがう？　なんか書いてんのか？
あっちではお話し、悩みを聞いたり相談したりしてる。
いいねー。
いい所。

あっ、猫がよこぎった！