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書評・SKET DANCE

 学園ものである。が、ラブコメ色は皆無である。
 部活が中心である。が、全国を目指すようなこともない。
 ドタバタギャグである。が、時には胸の奥を覆うようなシリアスな話もある。
 どないやねん!と突っ込みが来そうな紹介だが、残念ながらすべて事実なのだ。本作はこれらをまぜこぜにしつつ、しかと一本の作品にまとめあげた、青春SFギャグストーリーの痛快な成功例なのだ。

 ちょいと自由すぎやしないか?というくらい自由な校風が自慢の、開盟学園高等学校。リーダーでお調子者ボッスンこと藤崎佑助、武闘派の元不良ヒメコこと鬼塚一愛、クールな情報通スイッチこと笛吹和義の三人は『学園生活支援部』通称『スケット団』を作り、生徒たちが楽しく有意義な学園生活を送れるよう、人助けに取り組む。
 が、実際は便利屋扱いであり、そうそうショッキングな事件など起こりはしない。だが時に、生徒たちの抱えた小さな悩みが、思わぬ事件を呼ぶことに。
 持ち前の妙なポジティブさと、ちょっぴり人間離れしたスキルで、珍事件に真正面から挑む少年たち。学園の笑顔は、俺たちが守る!

 と、私も意気込んで本稿にかかっているが、本作の連載開始は10年前。最終回も4年前のことである。なぜ今書いたのかと言われれば、この度コンビニコミックが発刊され、懐かしさも手伝って思わず筆をとった次第である。

 本作で何より楽しいのが、現実的なデザインに収めつつ(数名を除く)よくもここまで個性を立たせられたものだと感動すらおぼえるキャラたちの、日常のような特別な日々を垣間見れることだろう。

 有事にあってはそこそこ働くスケット団だが、平時はひたすらユルい。ルール有用常識無用のゲームに興じたり、カプセルトイを山ほど集めたり、美術館が平伏して寄贈を乞いに来そうな折り紙に勤しんだり、どないやねん!と突っ込みが来そうな日常を過ごしている。
 そんな日常に、ヒメコに憧れた元ヤンの天才声優や、魔法のような薬を生み出す化学教師や、幽霊そっくりのオカルトマニアや、音速の大食い美少女などを投下したら、さてどんな事件が起こるだろう?
 本作は世界を救うとか、全国を目指すといった目標はない。そうした物語に引っ張られることなく、こうしたキャラたちが学園という箱庭で生み出してしまう物語を、同じ目線から覗き込める楽しさこそが醍醐味ではないだろうか。
 無論四六時中スチャラカに生きてては読者も飽きるだろう。そこは物語の両輪ともいうべきシリアスパートで、がっちり締めてくれる。
 スイッチが自ら声を出さなくなったわけ。ヒメコが伝説と呼ばれる不良になり、またそこから日なたの世界に戻れたわけ。ボッスンが一見ただの便利屋に終わりそうな部活を作り、それにこだわり誇るわけ。そしてなんの接点もなさそうな三人が、まるで予め決められていたように出会い、肉親のような信頼関係を築き上げたわけ。
 ドタバタギャグを挟むこの物語の熱さは、こうして共存させただけでも快挙だと思うし、その完成度は文学的でさえある。

 誰にも訪れなかったはずなのに、なぜか懐かしく芳る青春の日常。宝石のような日々を飴玉のように消費することが許されるのも、若さの特権だったのだろうと彼らを見ていて思う。
 そんな日々を俊才が描き出す、青春SFギャグストーリー。
 青春が過ぎた人も、只中の者も、是非手に取って欲しい良作である。

 おっと失念していた。ここでいうSFとは、作者が敬愛する藤子・F・不二雄にちょっと倣って「すこしファルケン」の略である。

(どないやねん!!)

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