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あそぶ!ゲーム展 -ステージ1:デジタルゲームの夜明け-に行ってきた

 1958年。ニューヨーク州アプトンにあるブルックヘブン国立研究所。
 ここは主に原子力の研究機関であり、研究者の中にはウィリアム・ヒギンボーサムをはじめ、マンハッタン計画に参加した人間も多くいた。故に研究所周辺の住民の中には、現在ほど理解の進んでいなかった原子力に不安を抱く者も少なくなかった。
 そこで研究所では、そうした科学や研究そのものの安全性を訴えるべく、年に一度一般公開を行ってきたのだが、専門的な機材や写真ばかりで、訪れた住民には決して好評ではなかった。
 そこでウィリアムは、技術者のロバート・ボブ・ドボラックと共に、来た人が触って楽しめるものを作ろうと考え、オシロスコープとアナログコンピュータを用いたテニスのようなゲームを作り上げた。
 結果これが大評判となり、数時間待ちの行列を作るまでになったという。
 後にゲームの研究者たちによって、これが世界で最初の電子的ゲームとして位置付けられていくことになる。

 TVゲームは、未知への不安を払拭したいという願いから生まれてきたのだろう。誕生から半世紀、今やそれは歴史として扱い、整理するに値する文化になった。

 埼玉県川口市、彩の国ビジュアルプラザにて行われている『あそぶ!ゲーム展 -ステージ1:デジタルゲームの夜明け-』に行ってきた。
 デジタルゲームの歴史を、当時稼働していた実機と共に俯瞰していく展覧会。今までもレトロゲームを中心としたイベントは珍しくなかったが、その多くが展示品の保存のため触れなかった。

 だが今回はその名が示す通り、そのほとんどのゲームで遊ぶことができるのだ。(一部エミュレータ)
 そして何より内容がとにかく濃ゆい。入っていきなり先述のテニスゲーム(復元)が置いてあるのもさりながら、伝説のミニコンピュータ(とはいえ冷蔵庫くらいのサイズはある)PDP-1のレプリカや、PDP-1から生まれた最初のアーケードゲーム「スペースウォー!」をはじめ、黎明のゲームを生み育てた名機が並ぶ。
 もちろん日本が生んだゲームのアイコン、インベーダーとパックマンも展示。開発者のインタビューや、手書きの開発資料など、ファン垂涎のお宝も間近で見られる。

 個人的に面白かったのがこれ。1976年に誕生した「デスレース」なるこのゲーム。死神となって車を運転し、グレムリンにぶつかっていくというゲームなのだが、これが当時米国で大問題となったという。
 理由はその残酷さにあるというのだが、今見てもリアルとは程遠いグラフィックである時代から、こうした問題がつきまとっていたのかと、少し切ない気分になった。

 他にも、マリオのデビュー作ドンキーコング。温泉ホテルの名物(?)スピードレース。2Dアクションの始祖平安京エイリアンなど、綺羅星の如き名作が並んでいる。

 会場を眺めていて面白かったのが、小学生の食いつきが意外と良かったことだった。
 中学年くらいの子がギャラクシアンにがっつりはまっていたり、パックマンに一喜一憂していたりするのを見ると、なんだかうれしくてたまらなかった。 

 また子供に「はやくいこうよー」とせがまれて、お父さんが「この面だけやらせて!ね?」と懇願する様などは、まんまと企画者の思惑に嵌っているように見えて痛快であった。 

 おそらくこれだけのゲームが一堂に会し、しかも触れる機会はそうそうあるまい。

 かつて遊んだ人も、見るのも初めてだという人も、ゲーム好きを自負するならば行って損はない。否、行って欲しいと切に願う。
 そして企画者たちはステージ2で何を見せてくれるのか、今から楽しみで仕方がない。

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