劇評・PIXELS
ゲーム業界で都市伝説のように囁かれて久しい、FPSの熟練プレイヤーを軍がスカウトしているという類の噂。
モータースポーツの世界では「グランツーリスモ」を使ったレーサー育成プログラムが何年も前から稼働しているが、実際砂埃舞う灼熱の戦場に赴き、何時間も戦うのとはわけが違うと、あるいは一笑に付される話かも知れない。
だとすれば、30年も前にTVゲームで活躍しただけのおっさんが世界を救おうなど、荒唐無稽甚だしい話だろう。
だが観劇後、そんな考えは払拭される。
「いーじゃん!だって映画なんだし!」と。
1982年。ゲームはまだ記号のようなキャラを動かすのが精々だった頃。少年サム・ブレナーは類い稀なセンスで、ゲームの世界大会を突き進む。が、決勝の舞台で惜敗。親友ウィルと共に将来の成功を語らうが、30年後成功していたのは、合衆国大統領にまでなったウィルの方だった。
サムは、今や実写と見紛うキャラが闊歩するようになったゲームにはついて行けず、しがない電気工事士で生計を立てていた。
ある日サムは、ウィルからホワイトハウスに呼び出される。グァム島の米軍基地が何者かの攻撃を受けて壊滅したという。軍事衛星の映像に映し出されたその姿は、サムもウィルもよく知るものだった。
「ギャラガだ……」
懐かしのゲームキャラたちが、なぜか突然大挙して地球を襲ってきたのだ。誰が、何のために?すべての原因はサムをはじめ80年代の子供達が、宇宙に送った友好のメッセージだった!?
人類の存亡とちょっとの私欲を賭け、電気工事士と大統領と陰謀論オタクと前科者が手を組んだ!
はたして地球はGAME OVERを迎えてしまうのか!?
と、力んであらすじを書いてはみたが、正直本作はストーリーより映像とドタバタを楽しむ純娯楽作といった趣が強い。主人公の周りに大統領や兵器開発のエキスパートやハッカーがゴロゴロしてるのも、主人公が前線に立つための手続きをすっぱり省くためだ。んなこたいいからさっさと戦わせろ!というわけである。
そしてもう一方の主役というべきゲームたちも、もちろんしっかり描写される。当時のドットのまま、とはいかないものの、ゲームを実際に撃って走ってプレイする様はフレ○ドパークのようで楽しそうである。
何よりわかってるなぁと感心したのが、陰謀論オタクのハッカーが狂愛するヒロインキャラとそのゲームのみが、今作のために考えられた架空のゲームだということ。そう、俺の嫁戦争を上手に回避したわけだ。わかてるなあw
他にも、絵本を読み間違える某大統領のオマージュや、パックマンの生みの親である岩谷徹氏がちょい役で出ていたり(本人役ではないらしいです。すっっっっかり騙されましたが)、女子テニスのセリーナ・ウィリアムズが本人役で登場したりと、そりゃ笑うしかないよという卑怯な(賛辞)攻勢で畳み掛けてくる。
トム・クルーズ級のビッグネームが出ているでもなく、また題材が題材なだけに、B級かとの誤解もあるかと思うが、監督は「ミセス・ダウト」「アンドリューNDR114」「ハリーポッターと賢者の石」等で知られる俊英クリス・コロンバス。音楽は「キックアス」「ベイマックス」のヘンリー・ジャックマンと、B級などと呼ぶには豪華すぎるスタッフが名を連ねる。
その実最後までだらけることはなく、存分に楽しめたことを明記させていただく。
TVゲーム誕生から三十余年。あの頃のヒーローたちの淡い思い出とささやかな妄想を、スクリーンいっぱいに広げた快作娯楽映画。
観劇の帰路、中古ゲームショップが覗きたくなったらスタッフの勝ちである。
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