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「トーベ・ヤンソンを知る」読書案内#14こぼれ話:”好きな作家が嫌いな本”を自分も嫌いとは限らない

ビネバル出版/北欧留学情報センターのnoteで新しい記事を公開していただきました。

Bo Carpelan(1926-1911)からトーベ・ヤンソンへのインタビューをまとめた文章をもとに書きました。Bo Carpelanは「ボー・カルペラン」と表記しましたが、「ボ・カルペラン」と書いてあるものもある、というかそちらのほうがインターネット上では多いです。私は日本語表記が割れる時は多いものに合わせることにしていますが、「ボー・タカハシ」のイメージに引っ張られて何の疑いもなく「ボー」としてしまいました。

さて、今回ヤンソンが読んだ本について書こうと思ったのは、インタビューのなかで『もじゃもじゃペーター』と『マックスとモーリッツ』をヤンソンが嫌いだと言っていたことに非常に興味をひかれたからです。

まずはヤンソンがインタビューで挙げた作家の本を可能な限りざっと見てみることにしました。とはいえ、子どもの本以外の作家の本も含めると1つの記事にはまとめられそうにない量なので子どもの本に絞ることに決めました。子どもの本といえば国際子ども図書館です。11月のとある日、数時間こもりました。

『もじゃもじゃペーター』と『マックスとモーリッツ』を読んだことがなかったので初めて読みましたが、私は嫌いじゃないな、というのが素直な感想でした。記事の組み立てを考えたときに、ヤンソンがなぜ教育的な本を好まなかったかという筋だけでも書けそうでしたが、私は楽しく最後まで読みましたし、二冊とも多くの言語に翻訳されており、『もじゃもじゃペーター』は日本では2020年に新版が出版されている人気の本でもあるので、簡単にではありますが「面白さ」に着目して書くことにしました。

(『マックスとモーリッツ』の新品の本はなさそうでした)

ハッピーエンドにならないな~、と思いながらもページをめくってしまうのはなぜなのか?何度も読んだことがあってハッピーエンドでないと知っているのにまた読んでしまうのはなぜなのか?記事ではテンポとリズムを理由に挙げましたが、内容的な理由は「怖いもの見たさ」みたいなものでしょうか。まだうまく言語化できていないので引き続き考えたいと思っています。

私は子どもの頃、『むしばがすっぽん』(山下明生 文 桑原伸之 絵)と、浦沢直樹先生の漫画『MONSTER』の作中作「なまえのないかいぶつ」をよく読んでいたことを覚えています。どちらもやはりハッピーエンドではありませんが、何度も繰り返し読みました。


<おまけ>
今回参照した参照した『Resa med Tove : en minnesbok om Tove(トーベとの旅:トーベとの思い出の本)』のなかのカルペランの文章「Den fruktbara osäkerheten(豊饒な不確実性)」は、ムーミンの新版を編集した畑中麻紀さんが別の視点で『ムーミンパパ海へいく』の紹介で引用しています。

ちなみに…「osäkerheten」を「不確実性」と訳しましたが、否定を意味する「o」を取った「säkerheten」は「安全」や「自信」という意味もあります。文章のタイトルの「Den fruktbara osäkerheten」はインタビューの最後に使われていた言葉です。この言葉の前に『ムーミン谷の冬』のトゥーティッキの台詞「ものごとって、みんなとてもあいまいなのよ。まさにそのことが、わたしを安心させるんだけれどもね」が引用されていたので「不確実性」としてみました。

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