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麻雀AI「Mortal」の特徴と弱点、効果的な使い方、ratingと一致率の考え方

 みなさまどうも、Mortalくんを使い始めてからというもの、麻雀の調子が良くなり、実力も少しずつ向上し、毎日の食事も美味しくなって、健康診断の数値が改善し、自宅の庭からは石油が湧いて出て、今目の前には「転生の前にあなたに特別なスキルを与えましょう」と言っている美しい女神様もいます。途中からは幻覚でしたが筆者の最高級牛肉です。
 今回は麻雀AI「Mortal」について、作者や関係者ならびに有識者の方々のお言葉や感想などから、効果的な使い方や考え方についてまとめてみました。Mortalの長所や短所をふまえて使うことで、より良い麻雀ライフが送れますように!

Mortalの特徴と弱点

 では早速見ていきましょう。ざざっと箇条書きでドン。

・基本的には「平面(※1)に強く、場況や点数状況の判断は苦手」
・機械学習AIなので「経験則からくる直感=第一感(※2)」が強い
・仕様上「第1候補以外の選択の評価が過剰に低くなる」ことも多い
・有意差のない(特に序盤の)三元牌の切り順にも評価の差がつく
・中盤くらいまではめいっぱいに構えさせたがる
・6ブロック(から5ブロックへの移行)が苦手
・遠い仕掛けや染めを理解していない
・必要に応じた手役の追求(戦略的な打点づくり)を理解していない
・差し込み含め、他家へのアシストを理解していない
・3-6、4-7待ちをダマ寄りで判断している(NAGAと同様)
・天鳳七段配分で学習したので魂天配分には最適化していない
・上級者にとってはAkochanの方が参考になる可能性も

 機械学習について詳しい、あるいは興味を持っている人にとっては「なるほど」と思える項目も多いかもしれません。
 また、思ったよりも弱点が多くてびっくりした人もいらっしゃるのではないでしょうか。しかし逆に言えば、これだけ弱点があっても鳳凰卓安定以上(≒魂天クラス)の実力があるのです。
 重要なのは「どうやって良い部分を取り入れるか」ですね。

※1:自分の手牌だけを見て行う打牌選択。対義語は立体=河や副露、立直状況含めた判断。平面何切る、立体何切る、などの用法がある。
※2:将棋用語で「盤面を見た際に、最初に思い浮かぶ手」。その手が良い理由は即座には出なかったりするが、精査するとそれが正解であることが多いとされる。機械学習は「結果的に得だった選択」「結果的に損だった選択」のデータを無数に積み重ねることで精度を高めていくので、人間で言うところの第一感が強くなるが、その理由については説明できない。あくまで「経験上、こんな風な状況ならこの選択が得だったから」と判断しているわけである。


Mortalの効果的な使い方

 上記したあれこれをぎゅぎゅっと圧縮して言い換えれば、おおむねこんな感じになるでしょう。

・状況をあまり加味しない牌効率≒基礎的な「何切る」の勉強に最適
・アガリへの最短ルート上にある役は拾うが、遠回りはしない打法の習得の訓練に向いている
・アガリ効率の最大化を好むため、防御面が薄くなりがち(なのでベタオリの精度も同時に高める必要がある)
・一般的に有効とされる戦術を評価してくれないケースもわりとある
・実際にはどれを選んでも差がない選択の評価にも大差がつくことがある

 そこから、以下のような結論が得られます。

・牌効率やベタオリの精度がまだ低い初級者~中級者にとっては無料で使える最高の先生である(※3)
・反面、打牌理由の説明はしてくれないので、本や動画を含めて、上級者の解説を受けるとより効果的(※4)
・上級者でも自分では気づきにくいミスを発見する役に立つことがある
・染めや手役追及、他家へのアシストなど、戦術的/戦略的な理由での意見の相違なら「これはそういうもの」と割り切って良い部分もある
・同様に、守備的な打ち方を好む人はratingや一致率が低くなりやすいが(安牌を抱えると怒られがち)、スタイルの問題でもあるのであまり気にしないことも大事
・実際にはどれを選んでも差がない選択の評価にも大差がつくことがあるのを念頭において使うのがいい(※5)
・より繊細な牌譜検討を行いたい上級者にはMortalよりもAkochanの方が向いている、かも?

※3:Mortalの詳しい使い方については1本目の記事『麻雀AI「Mortal」の牌譜検討で雀力向上! 使い方を詳細に説明!』を参照のこと。
※4:例:「124sの形で、4sではなく1sを切れとMortalに言われた。何故?」→「3sの受け入れのロスがなく、5s6sの分だけ受け入れに差ができるから」というような理由を覚えると、Mortalの牌譜検討で得られる経験値が爆増する。こうした知識を得るためには見るだけで勝てる!ゆうせーの麻雀講義チャンネル」や「平澤元気麻雀ch」の動画を観ることが非常に効果的! 動画が気に入った人は、是非是非おふたりの著書も買ってみよう!(ステマ)(でも初心者~中級者くらいの方は本当に、劇的に強くなれます)
※5:そこまでの差がつく理由が思いつかないからとりあえずスルーでいいや、くらいの軽いノリでさらっと流すことも時には重要。トレーニングを積み重ねてレベルアップしたあとで類似した選択に理由がつけられるようになっていた、なんてこともきっとあるはず。


ratingの目安@雀魂

 前回の記事でも軽く触れましたが、Mortalのratingの平均値を求めれば、自分の実力を相対的に理解することができます。しかし、自分の牌譜ならともかく、他人の牌譜まで大量に調べることは非常に手間がかかる作業です。
 ……ですがなんと、雀魂の魂天である麻雀Vtuber南風乃てつん氏が雀魂におけるratingの平均値を段位/部屋別に調査したものをTwitter上で公開してくださっているのです! 神!
 この場にて改めてお礼を申し上げますとともに、公開してくださったデータを簡単に整形してご紹介いたします。

画像1. Mortalのrating平均値@雀魂

 この表の使い方はとても簡単。とりあえずあなたの直近の10戦分程度の牌譜からMortalのratingを調べて、その平均値を出し、この表のどのあたりに位置するか確認するだけ!
 例えばそれが「81.0」だった場合、あなたは雀豪2くらいの実力があるので、段位戦を繰り返し打ち続けていれば少なくとも雀豪2までは昇段できる可能性が高いです。
 また、同時に玉の間の平均くらいでもあるので、玉の間で打ち続けていれば、平均順位は2.5に近いものになるでしょう。
 つまり、ratingの平均値は「現在の段位とはあまり関係なく、実際の実力が判断できる指標のひとつ」であると言えます(※6)。

 ……とは言え、わずか10戦分程度では統計的に意味のある数字=あなたの実力を真に反映した数字は出てきません。この10戦分を100戦分に、100戦分を1000戦分に、とサンプル数を増やしていくことで、より真の実力に近い数字を出すことができるようになります。
 この機会に日々の段位戦の牌譜をMortalに検討してもらい、ratingなどの数字を記録し始めてみてはいかがでしょうか。きっと、あなたの実力向上のための手助けになるはずです。

※6:「安定段位」と似たようなものという認識もできるが、安定段位の方は現在主戦場としている部屋の対戦者のレベルによっても、牌山の内容などの運不運によっても大きく結果が変わる可能性があるのに対して、ratingの平均値の方は基本的に状況に左右されない(状況によって大きくratingの平均値が変わるような打ち方は、長期的に見て損であることが多いはず)。


ratingと一致率についての考え方

 これも前回の記事で触れましたが、8/14のアップデートでmjai-reviewerがバージョンアップし、一致率の項目が実装されました。
 ちなみに、Mortalのratingは一致率ではありません。それぞれ意味合いが違いますが、簡単に言うとおおむね以下の通りです。

・rating:評価値のようなもの。Mortalにとっての誤打との差が少なければ高評価になる。
・一致率:Mortalの打牌選択とプレイヤーの打牌選択が一致した確率。

 ぱっと見では似たようなもののようにも思えますが、いくつかポイントがあります。

・打牌の選択肢は基本的に3種類以上ある
・打牌選択のオススメ順のうち第1候補のみ「一致」とカウントされる
・打牌選択のオススメ順が低いほど評価もより低いものになっていく
・評価が低い打牌選択が多いほどratingが下がっていく

 一致率は「一致」の数が多ければ多いほど高くなるわけですが、逆に言えば「一致」ではなかった選択の評価についてはまったく気にしません。
 ratingは評価が高い打牌選択が多ければ多いほど高くなるわけですが、逆に言えば「一致」の数にはそこまで影響を受けない可能性があります。

 つまり、たとえ一致率が90%を超えていたとしても、一致しなかった10%の部分の打牌選択の評価が極端に低かった場合、ratingはきっと低いものになるでしょう。
 また、たとえratingが90を超えていたとしても、「第1候補と第2候補の評価がほとんど変わらない場合の第2候補を選んでいたことが多かったので、一致率はあまり高くなかった」といったようなケースが存在し得ます。
 ただし、基本的にはこのふたつの数字には強い正の相関があるので、片方が高ければもう片方も高くなり、片方が低ければもう片方も低くなります(※7)。

※7:筆者の最近の20戦分のratingと一致率から計算してみたところ、相関係数は0.86でした。

 では最後に、ratingと一致率の高低の組み合わせ、それぞれについて考えてみましょう。
 なお、以下の文中で言う「ratingの高さ/低さ」や「一致率の高さ/低さ」の具体的な数値はそれぞれのレベルによっても異なってきますので、前述のratingの目安なども参考に、ご自身に合った基準を各自で設定してみてください。

・ratingと一致率の両方とも高かった場合
 理想的な形です。このパターンを維持できるように頑張ってください。

・ratingは高かったが、一致率が低かった場合
 一致率が「少し低め」くらいだった場合はさほど気にする必要はありませんが、一致率が「明らかに低い」場合は、ratingが偶然高かっただけの可能性が出てくるかもしれません。
 後者のケースでは基礎的な牌効率やベタオリに細かい部分で改善の余地が多数あることが考えられますので、牌譜検討の詳細部分をよく確認してみてください。

・ratingは低かったが、一致率が高かった場合
 基本的には良い選択ができているようですが、ところどころ大きなミスが発生している可能性があります。
 牌譜検討の詳細部分を確認して、明らかに評価が低い選択をしてしまった部分とその理由を洗い出してみましょう。

・ratingと一致率の両方とも低かった場合
 基礎的な牌効率やベタオリについて、理解実践できていない部分がたくさんある可能性が高いです。まずは、基礎知識について教えてくれている動画や本を参考にしながら勉強してみてください。




補足:Mortalの使い方の詳しい説明

 Mortal自体の使い方や画面の見方などの基本的かつ詳しい説明については以下の記事をご覧ください。

 また、以下の記事でMortalの作者の方に対する寄付についての説明もしております。
※一言で言うと「Mortalの開発にはとても趣味の範囲内に収まらないような予想を大きく超えた額のお金がかかったそうなので、余裕のある方は是非、作者の方にコーヒーを奢って差し上げてください」という感じです!


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