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部屋中に散らばる戦闘服

マイPのブログ発信の企画マイドヨルの妄想族に参加してみました。記事中の「部屋中に散らばる戦闘服」の写真から、私が妄想したらこうなりました。

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「ふふ、どれがいいかな〜」「どれでも変わらんのちゃう?」「だってせっかくの晴れ舞台だよ!一番似合うやつで送り出したいもん!」「俺はどれでもええけどなぁ…まぁ好きにし」呆れ気味だけど立っていてくれて、わたしが取っ替え引っ替え照史くんに合わせるのを待っててくれる。ごめんね時間かけて、だって一番かっこいい姿で行ってほしいから!

時は宇宙大戦時代、この星の向こうへ戦いに出向するのは英雄の証。友人たちもみなこんなふうに、旅立つ彼に一張羅の戦闘服を見繕って送り出していた。ふふ、わたしもやっとできる〜!…って浮れてたら意外と時間がなくて、「なぁそろそろ行かなあかん、」召集時間まであとわずかみたいで。

「ん〜〜、よし、決まり!これ着て!」「はいはい」「ひ〜やっぱり似合う!世界一宇宙一かっこいい!」「知っとるわ」「うわ、かっこいいけど認めたらなんかヤダ」「アッハッハ、ええやんけ、宇宙一かっこいい俺が帰ってくるまでちゃんと待っといてな」調子のるなよばか、でも、ずっと待ってる。ハグをして送り出した。

散らかしすぎた部屋をひとりで片付け始めるけど、数日経っても終わりが見えない!あれも似合ってたし、これも似合ってたな〜、照史くんのことだからきっとすぐ活躍するんだろうな。ふふっと笑みがこぼれる。その時だった、突然目の眩む光に包まれた。え?どういうこと?考える間もなく体が、思考が、止まっていく。戦場ではなかったはずの地球が、突如前線に晒されたのだろうか。星の内部にいるひとのほとんどは外のこと知らずに過ごしていた。固まりゆく中、脳裏に焼きつく部屋中に散らばる戦闘服。ごめんね、照史くん、のんきなことしてる場合じゃなかったんだね。《忘れんといて、絶対…ら、》途切れながら、微かに照史くんの声が聞こえた気がした。

ピーーーー

▼ヒョウテキ ワクセイ:チキュウ、トウケツ カンリョウ

ピピピピピ、

「わっ!!…ゆめか」「…ん゛〜〜、なん、朝から声でか、」「ねぇ、照史くんて宇宙戦争いくの?」「?なんのはなしやねん、寝ぼけすぎやろ」「そっか、」「ん、ねぼすけは寝直しや」頭をぽんぽんされて、すとんとまた眠りに落ちた。よかった、照史くんここにいる。

俺は誰か、大切な人を抱きしてめいたはずやった。腕にはまだ熱が残っているように感じる。…思い出されへん、ズキズキと頭が痛む。それにこの服なんやねん、戦闘服?着た覚えが無い、家にあるはずもない。どういうことや?

「おい集中しろ照史!」「…え、?」「お前と俺が一斉に操作せな動かんの分かってるやろ!何ボケッとしとんねん!」…誰やねん、横を向いたまま罵ってくる男の首には〈No.2XXX1021 Nakama〉と皮下から光る刻印があった。どうなっとんねんそれ、

「はよ!時間がない!」一切こちらを見ないナカマが凝視する先を辿ると、少し離れた青い星に何か燃え盛る塊が寸前まで近づいていた。「もうええ俺がやる!そっちのシステムに侵入して動かすから合図したら照史はこのボタン押してくれ、」だからさっきからなんのことやねん教えてくれや、「…今や!!!!!!」訳もわからないまま目の前に浮かび上がったボタンに触れる。

ピーーーー

「…おわった……、」

ナカマの指示通りにしたのになんでお前が泣いてんねん。俺なんかミスったん?先程の青い星は、俺らが何かを作動させ撃ち放った瞬間ガラス玉のような透明でキラキラとしたものにコーティングされていた。迫っていた炎塊は四方八方に細かく飛散し、終わりかけの線香花火のようにパチパチときらめいている。「これが最善やったんや…」突っ伏して小さい声で自分に言い聞かせているナカマ。「なぁ、ナカマ、」「なんやねん、今更コードネームで呼ぶなや悲しなるわ」「コードネーム?俺お前の名前知らんし」「何言うてんねん、照史、ショックで記憶飛んだんか…?」「そう…なんかな、?」「淳太。前はそう呼んでた」「…なぁ淳太くん、俺ら、何したん?」「ほんまに記憶飛んでもうたんやな…、俺らは、自分らの星を凍結した。元々そのために出向した最後の部隊や。地球に迫ってた遠くの炎弾に照史が気づいて。既に地球から出とった上層部の奴らはもうこの星を見捨てとったわ。俺らで止めるしかないって、出向を決めたんや」「…」「焼き尽くされて跡形もなくなるよりは、固めてでも残した方がまだ再生の余地があるはずや。けど、今は手の施しようがない…」

「照史も大事な人待たせてきたんやろ、その戦闘服。俺んとこも部屋中とっ散らかして選んでさ、無駄にこんなフリルまで付けてきてな、…ッ、俺が何しに行く思てんねんアイツ、」なんの覚えもないが不思議と胸がズキズキした。笑みをこぼしながら涙を流す淳太くんに胸が痛んだんやろうか。

俺らは自分らの星を、残してきた大切な人たちを、自らの手で凍結した。らしい。

「…ッ!」目が覚めて腕の中を見ると、ねぼすけが相変わらずスースー寝息を立てている。さっきこいつが変な寝ぼけたこと言うから俺まで変な夢見てもうたやんけ。一応、ギュ、と抱きしめてみる。「…凍結してへんよな、?」このあたたかい温度を守らなな、ふとそんな使命感を抱いた。

2XXX年、地球凍結。守るためにはこれしかない。星の再生方法はただひとつ、過去に遡り、二度と争いを凍結を起こさずに済む未来を作ること。時を跨ぐと以前の記憶が無くなるらしい、それでも、やるしかない。

「ごめんな、少しの間そっちの世界は止まるやろうけど…忘れんといて、絶対また会いに行くから」

戦闘服の散らばる部屋で時が止まるだろう彼女へと呟き、俺は凍結作動ボタンを押した。

ピーーーー

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…以上、長くなりましたトンチキSF!w時系列が飛び飛びで読んだ人に伝わるのか不安ですが自己満足でとりあえず投稿しちゃいました( ◜◡◝ )

2XXX年の照史くんは自らの提案で最後の部隊として地球を守るため・最終手段の地球凍結をするため出向を決めていたので、しばらく会えなくなることを分かっていました。いつもならなんでもええわって適当に服掴んで行っちゃうのに、何も知らない彼女に合わせて浮かれた戦闘服選びに付き合ってくれました。いつもの呆れた笑顔でしゃーないなぁって。この時空に帰ってこれるかも分からないけれど、絶対帰る決意を胸に、宇宙一かっこいい俺を待っといてって言葉を残していきました。

一方むにゃむにゃ夢を見ていたのは現代の、2XXX年より何世か前の照史くんと彼女。2XXX年の照史くんは時間逆走で現代の自分の体に入ったのですが、時を跨ぐと以前の記憶が消えるため未来のことは忘れています。でも、夢を通して未来の記憶に触れて、このあと直感的に使命に気づいて(思い出して)いくはず。2XXX年でコンビを組み出向した淳太くんとはまだ現代では会ってないけど、淳太くんも同じく時間逆走を決めた。今後また現代でも出会った二人で未来を変えに動き始めるのだろうと思います。

補足なしで伝わらないはなしダメじゃーん!簡潔に起承転結してるドヨルの妄想族ってすごいんだな!って思ったポンコツ妄想師アヤコバージョンの「部屋中に散らばる戦闘服」でした、まる!