分かっていること




純粋抽象が具現化した時

人はそれに狂わされ

無限の運動を開催します

今のところそのようなものとして

貨幣 時計 文字そして死があります

それらは実は虚ろなる同伴者か

実体を破る虚無の一点なのですが

傾聴したり直視をすると呑み込まれ

それまでの生は生を離れて組織され

やがて生命であることを止めてしまいます

虚無を魅力的なスパイスに留めるには

どうも極端な戦略が必要なよう

聴き取りはするが傾聴しない

視界に入れるが直視はしない

触れはしても掴まない 又は

直視したらば目で焼き尽くす

傾聴するなら耳から飲み込む

掴んだなら握り潰してから手放す

人間と自然に本来的な価値ある物事は

ご存知の通り

お金にも時間にも言葉にもなりません

少なくともなりにくく

なりやすいものに掻き消され易いです

私達は知能の亢進に伴って

幾つかの閾値を越えて来ました

それらの偉業は虚無を直視し傾聴し

掌握することによって齎されました

須く 個人によって認められた小さな虚無

私達の認知機能に孕まれて 穿たれた虚無

それは複雑な系の綴込みであったのでしょう

此方から見れば闇となる彼方からの光です

しかし膜の外側から来る

生命ではない虚無の力に 今

私達は圧倒されています

見たのに目を離し

聞いたのに耳を外し

触れたばかりに手を放したからです

虚無との戯れを始めたからには

自分の目と耳と手によって

虚無を焼き切り 呑み込み

握り潰してから手放す他ありません

すると貨幣も時計も文字も言語も

生命を盛り立てるスパイスとなって

かえって来てくれるとおもいます

多分これは分かっていても仕方のないこと

するするしていく他のないこと

ことこと音を鳴らして一緒にしようね
















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