鉄の檻⊿




今日の夢


 鉄の檻に龍と兎がいる

 兎はそこにある草を喰み地を飛び跳ねる

 休む 吐く 寝る 撫でる

 龍はそこにあるものに触れずそこに在る

 龍は質問をしない ただ頷くように

 太い髭と大きな鱗を微振動させるだけ 逆鱗

 既におこっていて 動いている 常にかも知らん

 兎は揺れる空気に冬毛を震わせ

 草を喰むように質問する

  どうしてここにいるんですか

   龍は眼差して問い掛ける

    何となくお前が寂しそうで

     悲しそうか苦しそうだからだ


鉄の息吹に砂鉄を流し込んで温度を上げる
本当はそれで温度は上がらない
必要なのは炭と空気だ
命の終わり一つと始まりの一つを吹き込んで
命全体のヴォルテージを上げる


   あなたはこの檻を出られますよね

   あなた縦長だから

 兎草を喰み 吐き 懸命に逆質問する

    私の胴はお前より太い

  龍の真実が応答する

 兎は臼歯の運動を止め
 齧歯なる前歯で宙を咲こうとする

  足りない足りない 足りないんだ

 龍は眺めても応えない

  私は確かに種を持っている
  しかし足りないんだ 土が ここでは

 鉄のキューブトライアングル軋み悲鳴上げる

    もう離してください
    どうかもう話して

 兎唯一これだけこたえる

  殺さないでください 転がしてください
  ころころと ころ ころころと ころろ
  転がしてください

 忍び込んだ蛇地這いながらこたえる

     お前は宇宙を転がれるはずだ
     その軽やかがお前なのだから
     わたしとは違う脚がついてる

 龍曰く

   お前の頭はわたしの手より小さい
   お前のしろはわたしの黑よりずっと軽い
   私も彩 色を取り戻す道中にある


 それで兎はぴょんこらと跳ねて
 檻の隙間を飛び出していった
 帰ってなんて来ない
 龍は蛇ごと檻を 鉄の澱をバリバリと食べた
 世界にはその分だけの虹が孵って
 飛行機雲走り 新たな螺旋形が生まれ
 蝶と蜻蛉羽ばたく
 空金色に輝く


そんな万華鏡
そのエフェクトがこの夢なんだとおもう
















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