悲しみの話





悲しみの話を しようと思う そのための話し方を知ってる 無理に力を出さなくていい 緊張感は手放して 多すぎる言葉も少なすぎる言葉も捨ててしまって 沈黙と吐息を頼りに 自分の記憶を産婆していく 今ここでほら出してご覧よ 怒りや喪失の前 青い悲しみが血液のように漏れ出した時の頃 もうこういう聞き方を何度もしてきたね 少しずるいかな でもそれくらい 君と君の 恐らくは私の 悲しみの話をしたい


無駄な力は要らない 多すぎる言葉も少なすぎる言葉も 本当は目を閉じるだけでもいいのかもしれない 多くの境界線の上に立つ君の それだけに込み入った悲しみの話 本当はね 込み入ってなんかない そこに居なかった人にとって少し遠いだけ そこはそこだった 君はそれだった 幾つもの境界線の交錯地点 多くの判断軸についてどちらの側の風景も見渡せてしまう そんなアンビバレントの場所 君は一人で そこに居たんだよね そこからしか見えない風景を眺めながら そこでしか呟けない数少ない言葉を 呟いていたのに 誰も聞かなかった 誰も聴けなかった そこに居たのは君だけだった 私はまだ生まれてもいなかった


これ以上のことを何と言おうか 多くの境界線の交錯地点で あらゆるどちらからも手を引っ張られながら 笑っていなきゃ 微笑んでいなければならなかったお前 悲しみの話をしろよ 怒り 力みは要らない お前の悲しみを今ここで垂れ流せばそれでいい 多くの事柄がそれで終わりを迎える 新しいお前 新しいお前に悲しみはない 新しい人間とは 怒りの火を 心の底から汲み上げた悲しみの青い水で 消した人のことだから だから怒りも消えてしまって 俺はどうしてこんな話をしているんだ まだ怒り足りないのに お前が俺を殴れよ 理由はなんでもいい 怒るための正当な理由を 俺の悲しみが探している


要らない 無駄な力は要らない 多すぎる言葉も少なすぎる言葉も 怒りの火 明るすぎる赤も要らない 本当はコントラストなんて要らない 一つの色を知るためには ただそれを指でなぞって 腕の肌の柔らかいところへ擦り付ければいい BGMもドグマも要らない 偶然の色彩と 触れる指 擦れる肌 見つめる目 それだけがあればいい ただそれだけをそのまま 写し出して眺めていたい 青を青として青いと言いたい 肌色でない肌の上の青を青いと思いながら 私はとろとろとした涙を流して 涙の碧は青と混ざって 空と海を重ねた色が生まれる その色をまた何と言おうか


悲しみ 誰もがそこで繋がることの出来る場所 心の深層アドレス 宇宙心理の普遍番地 そこで会いたい それは喜び それは悦び 沢山の文字で語られるオレンジ色の楽しみ 心の底から沢山の水を汲んだら 火と砂に与えて 君の星をまた緑にしよう 緑に青を重ねるとシアン その青は空の青色 君もまたとろとろと涙を流して 涙の碧はシアンと混ざって 青を紫に近づける 本当かな やってみなきゃ知らないね












ae