幻の閉会式

 本日は第八回関西学生大会にご来場いただき、誠にありがとうございました。この場をお借りいたしまして、ご協賛・ご後援いただいた団体の皆様に心より御礼申し上げます。
 さて、関西学生大会は今年で8回目を迎えることができました。これは偏に大会を楽しみにしてくださる方々や大会の運営に惜しみない協力をしてくださる方々、そして何より、この大会を目指して日々研鑽を積み重ねている選手の皆さんのおかげです。皆様からの温かいお気持ちに応えるべく、私たち運営メンバーは今回、出場者の増加とアラムナイ部門の新設という新たな取り組みに挑戦しました。大会の趣旨である「学生が目標とし、活躍できる場」を一人でも多くの人に提供したい、そしてかつて同じ舞台を踏んだ人たちの演技を見て、新たな刺激を受けたり交流を深めたりできる場にしたい。この想いが今日この場で、少しでも形になっていれば運営としてこれほど嬉しいことはありません。
 選手の皆さん、舞台の上からの景色はいかがだったでしょうか?思うような演技ができた人にとってもそうでなかった人にとっても、今日の経験があなたのジャグリングライフの中で、思い出に残るワンシーンになりますように。そして観客の皆さん、長丁場となりましたがお楽しみいただけましたでしょうか?明日からのジャグリングのモチベーションにつながる何かに出会えた、と思ってくださる方や来年はこの舞台に立ちたいと思ってくださる方が一人でもいらっしゃれば、運営冥利に尽きます。
 最後になりましたが、運営役員と当日スタッフの協力なくして、今日という日を迎えることはできませんでした。半年間それぞれの役職を全力で勤め上げた役員と、スケジュールの円滑な進行に尽力してくれた当日スタッフに大きな拍手をお願いします。(ここで拍手があったはず)
 お帰りの際には「来てよかった」「来年も楽しみ」といったお気持ちをぜひ、入り口付近の役員が持っている箱の中にわかりやすい形にして入れていただけますと、大変うれしいです。
 皆様、本日は本当にありがとうございました。

 

 こんな話を、するつもりだったのである。中止の経緯はHPの通りだが、決断を下すまでにも、そして決断を下した後も、随分と葛藤した。

 中止。その選択肢がちらっと頭を掠めた瞬間、体を半分もぎ取られるような痛みを覚えた。真っ先に(これは界隈が狭いことのいいところであり、悪いところでもあると思うが、)頑張ってきた選手たちの顔が浮かぶ。しかもかなり具体的に。ある人にとっては仲間と離れて遠い異国の地で黙々と積み重ねてきた一年の成果を見せる場だったのかもしれないし、また別の人にとってはこの大会が学生最後の舞台で、中止になればもう人前でジャグリングをする機会は潰えてしまうかもしれない。それぞれの想いを無碍にするようなことはしたくない。それだけではない。役員の、そして他でもないわたしの半年はどうなる。とんだエゴだと思うが、こう思ったことを隠すのもまたフェアではないだろう。運営は楽しいものだが、時には大変なことも正直ある。その大変な時でも忙しさの合間を縫って、時に眠い目を擦りながら頑張れるのは、当日が来ることを、その喜びを知っているからだ。それが、肝心の当日が来ないなんて、到底受け入れがたいことだと思った。それに既に手元に届いている日付とわたしの名前が入った表彰状はどうすればいい?

 一方で頭の片隅からは冷静にならなければという囁きも聞こえていた。代表という責任ある立場にある以上、開催したいという気持ちだけで動いてはいけない。開催するなら可能な限り手を打たねばならないが、今から何ができるのだろう。コロナウイルスという言葉がニュースを賑わせ始めた時に、なぜ日本でも感染が広がる可能性を考えなかったのか。街からマスクとアルコールスプレーが消える前に1セットでも入手しておけば。一応就活生たる身、日々ニュースをチェックしていながらなぜイベントの開催自粛の流れをこんなにも他人事のように受け流していたのか…このあたりで全てがぐちゃぐちゃになってしまった。しかし、当日は刻一刻と迫っている。立ち止まっている場合ではなかった。どうにか状況と自分の思いを整理して、信頼できる人たちに投げかけた。彼らはわたしのSOSに200%の助け舟を出してくれた。それでも苦しいことに変わりはなかったけれど、温かい助言のおかげでどんなに苦しくても最後は自分が決断を下さなければならないと腹をくくることができた。

 「中止にします。」そう全体LINEに送った後、自室で文字通り崩れ落ちた。泣き虫というのは本当に嫌なものだ。居間には家族がいるというのに涙が止まらなかったので、そのまま自室に立て篭もった。異変を察知したのか様子を覗きに来た母には悪いことをした。先に立たない後悔に身悶えし、泣き言を漏らし、悪態をつきながらどうにか作業を終えて時計を見たら3時間近く経っていた。我ながらよく頑張ったと思う。何ならこの半年で一番頑張った3時間だったかもしれない。

 あれから1週間、自分の判断が正しかった自信は持てないし、もっとできることがあったのではないかという後悔もぬぐい切れてはいない。これらの感情とはしばらくは付き合わなければならないのかもしれない。でも、これが完全なゲームオーバーでないこともわかっている。これからできることがあるかもしれないし、過去を悔やむくらいなら未来の可能性に賭けて動き出そう。

 運営の備品にマスクとアルコールスプレーを追加して。

 

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