むっちゃん節が止まらない

 モントリオールでの生活が始まって1週間、どんくささを全力で発揮しながら生きていますよ、というお話。2話まとめてどうぞ!

チャオorチータン?

 上海→モントリオールのフライトで最後の機内食が配られた時のこと。よくある「ビーフオアチキン?」ではなく、「チャオorチータン?」という変化球が飛んできた。そう、ご察しの通り。チャオもチータンもわからなかったのだ。ここで、わからないときは適当にごまかさずに聞き返しましょうという教育を受けてきたわたしは、その教えに従って聞き返そうとした。しかし、ここで重大な疑問が発生。「わたしは今、何語で話しかけられたんだ……?」さすがにフランス語ではない。じゃあ中国語か?たしかにチャオもチータンも中国語っぽいし、中国発のフライトで乗客の多くが中国人なんだから、わたしが日本人であることに気づかず中国語で話しかけられても不思議はない。しかし、しかしである。このCAさん英語かフランス語しか喋っていなかったはずなのだ。下手に"Sorry, I don't understand Chinese."とも言えないではないか。どうしよう。結局、口から出てきた言葉は「チャオ、please.」。むろん当てずっぽうである。肝心の中身は……中華粥だった。しかもめっちゃ味薄い。仕方がないのでスプーンと一緒に入っていた塩を入れた。そしてチャオとチータンの真相は中華粥とともに胃の中に葬り去られたのである。

ここはどこ?わたしは誰?

 モントリオールに着いた次の日、空港近くのホテルから下宿先へ向かう途中の出来事である。空港から下宿先のある市内までバスに乗ったのだが、ここで我が旅路を邪魔したのが二つのスーツケース。停留所に着く前にスーツケースを置いていた棚から下ろし始めたのだが、重いしあちこちに引っかかるしでなかなか下ろせない。周囲の乗客に助けられながらどうにか1つ目を引きずり出したあたりで停留所に到着。ちょっと焦りながら2つ目を出すが大きくて重くて思うようにいかない。ヤバイよヤバイよ。あ、出せた!急げ!……

「ブー」

 あゝ無情。降車口の戸が閉まり、バスが発車してしまった。あぁ、と思って顔をあげると母親くらいの歳のレディと目が合った。"Oh, no......Hahaha!!!" 
とりあえず次の停留所で降りることに。と思ったのだが、なかなかその「次」にたどり着かない。これはまずいかもしれない。さすがのわたしも危機感を覚え始めた頃にようやくストップ。今度は無事に降りられた。しかし、ここで大変なことに気づく。

「スマホ使われへんやん……!」

 回線の開通がカナダ到着に間に合わず、この時点では屋外でネットが使えなかったのである。なぜ空港で紙の路線図をもらっておかなかったんだと後悔するも時すでに遅し。両脇に合計30kg超えのスーツケース、背中にパンパンのリュック、肩にはポシェットをかけて手にスマホもとい金属の塊を握りしめた状態でどこかもわからない場所に放り出されてしまったわけだ。そろそろ「こいつはバカか?」という声が聞こえてきそうだが、ここからの起死回生の復活劇までどうかお付き合い願いたい。ともかくどこか地下鉄の駅へ行く必要があった。どこかのカフェかお店に入って店員さんに"Where is the nearest metro station?"と聞けばいいはず!と意気込んだはいいが、なぜかどこのお店の前にも段差がある。しかも店内がめちゃくちゃ狭い。スーツケース2つその他の荷物を抱えた状態で入る気が失せた。道ゆく人に聞こうにもここはカナダ第二の都市、都会特有のせわしない足取りで皆歩き去ってゆく。もはや行く当てもなく、よいしょよいしょとスーツケースを押しながら歩く惨めさよ。しかし、立ち止まっていても仕方がない。どうすっかなと呟きながら広告塔らしき物体を避けたその瞬間である。何を思ったのか自分が避けたはずの物体を振り返るとそこには!なんと!地図が!急に立ち止まって後ろを歩く人に変な顔をされたが何処吹く風、地図に駆け寄るときちんと現在地も書いてある。そして地下鉄の駅、地下鉄の駅……あった。そう遠くはなさそう。念入りに方向を確認して歩き出すと程なく到着した。駅にエレベーターがなかったのは計算外だったが、通りすがりのお兄さんにスーツケースを運んでもらってことなきをえ、無事に下宿先にたどり着きましたとさ。

 その後、外でスマホが使えるようになるまでさらに数日かかり、それまでは息をするように迷子になっていた。10分あれば余裕で着くはずの最寄駅をたっぷり30分歩いてようやく探し出したこともあったが、とにもかくにも生きている。ありがたや。明日から大学でオリエンテーションが始まるので、来週の目標は「友達を作る」。また気が向いたらnoteも更新するので期待せずお待ちくだされ。

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