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「デリバリースーサイド2」〜作者の記録(4)〜

<「デリバリースーサイド」シリーズの原作者によるこぼれ話をお届けします>

「快適な観劇とは?」

ちょっとシリアスなお話が続いたので、閑話休題。
というより、主催者としてはこちらが主眼なお話を。

前作の「デリバリースーサイド」では、会場に飲食についての規定がなかったので、客席への飲食物の持ち込みはOKで(上演中はご遠慮いただいた)、受付のところに「ご自由にどうぞ」として、いろいろな種類の飴を置いておいた。

開場前にお待ちのお客様が少しでも待ち時間を長く感じないように、できるだけリラックスしてほしいと考えていた。

今回のロビーでもそれは行おうと思っている。


なにしろジャンルがミステリー。
どうしても、お客様が「多めの情報を頭の隅にとらえてくださる」ことが必須であって、(余計なお世話ながら)血糖値をあげていただき、より集中しやすくなってご覧いただけたら幸いだなと思っている。



ところで、主宰は40代前半、人口のボリュームゾーンの世代であり、もっと上の世代の総人口の方が多い。

何が言いたいかというと、順当にいくと
「観劇やライブなど、ちょっと体に負担のかかる催し物に来られる年齢の方がどんどん減ってくる」
ということだ。

20〜30代の方は何が負担が実感できないかもしれないが、腰痛や肩こりなどをお持ちの方にとって、2時間じっとしているのは結構きつい。
持ってなくても、多動の気がある主宰にとっては、足を組み替えるとか背筋を伸ばすとかして態勢を整えたくなる。

「快適な観劇」とは、最低限「集中して観ることに負担にならない環境」であると思う。


堀江貴文氏がミュージカル上演に関するこんなことを言われていた。

(抜粋)
日本では、誰が言い出したのか分からないけど、何となくじっと座って見なきゃいけないことになってしまっている。これもある意味では、いろんなところで起きている現象なのかなと思います。演劇をやっている人たちもなぜか「自分たちの芝居は集中して見てほしい」と思っている。だから食事の音がイヤだとか食器の音が気になるという理由で、飲食NG、私語もNG、椅子倒すのもNG、背伸びもNG……になっている。でも3時間も椅子に座っていたら当然腰も痛くなりますよね?

『クリスマスキャロル』再演の真意:僕の足を引っ張らない社会を作る――ホリエモンが演劇をアップデートする理由 より

氏の社会的な立ち位置とか、演劇についての専門性がどうとかは、とりあえず置いておいて、抜粋した箇所のような点はこちらも同感で、普段から考えていることである。

以下は個人的な見解で、反対意見もおありのことと思うが記してみる。

時々、ツイッターなどで、劇団主催側がお客様に苦言を呈している様を見ることがある。

明らかな迷惑行為をしていることであるならまだしも、その自由すらもお客にないの?と思しき苦言もあって、なんというか、良い悪いではなくて、「人を楽しませる立場の人間がやること」として「格好悪い」「粋じゃない」感覚を覚える。

何があっても、主催側・興行側がお客様に「公の場で」文句を言うのは、「いけてない」と思っている。
特に前述した、娯楽を体験するのにも体力が要る、高齢者の多い時代には。

”何があっても”って、「嫌がらせされても黙っていろというのか」という意見もあろうが、「嫌がらせ」などという強い拒否や嫌悪を示されるような、”その程度の人望のない公演”なのだという現実を、ちゃんと見た方がいい。

前からすごく楽しみにして、万難を排して見に来た、という方が多い公演は、言われなくても、お客様の方から携帯の電源を切ったり、すごい集中力を持って、素晴らしい礼儀で見てくださっていると思う。

お客様の態度が今一つだなと思われた公演というのは、制作側の配慮の下手さと、「お客様が公演自体を大事な催しと思ってくださる」力・魅力が、興行側になかった、ということを、興行側が自省した方がいいと思っている。

2年ほど前、某有名団体の公演を、販売開始と同時に予約し、楽しみにして会場に向かった。

公演と違う意味で感動したのが
「前説(公演前の注意アナウンス)が一切なかった」
こと。

東京芸術劇場のプレイハウスだったので、放送でのアナウンスがあるのかと思いきやそれもなし。BGMからすっと劇に入っていった。

・お客様を信頼している
・お客様の携帯が鳴ったところで集中力を乱される役者やスタッフがいない
・お客様の携帯が鳴ったくらいで他のお客の集中力が乱れるようなつまらない芝居じゃない自信がある

のような素敵な心意気を感じた。そして快適に劇に集中できた。
(実際にそうなのかわからないが、こちらが受け取ったメッセージとしては上記のようなポジティブなものでした)



そもそも冒頭に、丁寧にであろうと、「注意」「禁止」を散々言い渡されて、愉快になる人はいない。(だからこそ、愉快に面白く注意を伝える工夫を各団体さんがされていて、それは大変素晴らしきことと思います)

芝居は「そういうもの」だと言われる方も多いと思う。
(確かに主宰は若い頃からの芝居畑の人間ではない。だからこそ、変な慣習がそのままになってるのが気になる)

けれど決して安くない金銭を払い、人生の時間を分けてくれて会場に来たお客様に「とにかく興行のために言うことをきけ」という態度はない、と個人的には思っている。

観劇人口が少ないと嘆きながら「そういうもの」とふんぞりかえっていても先細りなだけではないかと。


上述の堀江氏の文章にもある通り、大体において、演劇公演には制約が多く、お客に緊張や負担を強いる面も多い。

時間通りに(早すぎもせず遅すぎもせず)来なさい、でも通りで溜まったりしちゃダメ(ロビーも狭いのに一体どこにいればいいのか)、タバコ飲食禁止、撮影禁止(そうじゃない団体さんも最近結構あるが)、帽子をとれ、携帯の電源を切れ、喋るな、くしゃみ・咳は遠慮しろ(実際そういうことを匂わせた前説を言った団体があった)、子供は連れてくるな、その他諸々、

興行側が言うのも何だが、一体何様だろうと思うことがある。
(お客様本当にありがとうございます)

特に、設備が大劇場ほど整っていない小劇場ほど、負担をかけている傾向が強い。温度調節や椅子の状態、トイレの数や動線など「基本的にお客様に不便をかけている」ことは念頭に置いた方がいいと思う。

まあ、施設自体の設備的なことはどうしようもないとしても(そもそもの小屋の選び方なども関係しますが)、清掃を行き届かせる、動線を整える、待たせない、窮屈な思いをできるだけさせない、など、制作側ができる配慮はたくさんあるはず、と自戒を込めて考えている。

興行側が「芝居はなまものなので〜」と言い始めると、大体は不調の言い訳めいた言葉が後に続くが、「お客様だってなまもの」である。致し方ない突然の不調もある。人混みで気分が悪くなる方もいらっしゃる。

こっち(興行側)の不備不調は「なまもの」だから許せ、けれどお客の不調は禁止、などは通らないだろうと思う。

上のことについて、携帯の電源を切ってください云々は「他のお客様の観劇の権利を守るために」仕方ないとは思うし、あくまで「お客様が」SNSなどで「前のお客のスマホのディスプレイ画面がチラついていやでした」と意見されるのはご自由だと思う。

けれども全員が、そして状況が「なまもの」なわけで、
「絶対に頭痛腹痛が起こらない保証」「絶対に咳やくしゃみが出ない保証」「絶対に災害が起こらない保証」なんてどこにもない。

(劇場は埃っぽく、全然予兆がなかったのに突然咳が止まらなくなったり、コンタクトレンズに埃が入って酷い目にあったことが主宰はあります。そして、本人が一番止めたいと思ってるのにどうにもならない)

全ての興行に関して「あらゆるハプニングが起こる可能性」は絶対にあり、それを含んでの催しであるのは、自明のことなはず。

もちろん起こらないに越したことはないが、お客様に起きたハプニングは、興行側が全力で守るのは当然であり、何かあった際に「興行側が」他責の言葉でもって、公の場でお客様をディスるのは本当にいけてないと思う。
(この場合の「興行側」は役割に関わらず、公演に関わる全員を指します)

そんなわけで、最大限、快適な観劇環境をご提供できるよう努力しつつ、来月の公演、お待ちしております!!


<追記>

主宰がラジオにゲスト出演させていただきました。
お時間とご興味あらば、ぜひご視聴くださいませ。

◆多摩レイクサイドFM (79.0Mhz)
◆放送区域 東村山・清瀬・所沢・東大和・小平・東久留米・武蔵村山の各市と立川市・国分寺市・西東京市・新座市・狭山市の一部
◆「大人チャレンジ」毎週月曜 夜10時から30分
http://profile.ameba.jp/otn-challenge/
チャレンジすることの楽しさを伝える番組です。

1回目 2回目

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第2回 a-fiction m&h theater「デリバリースーサイド2」

【日程】2019年1月29日(火)〜2月3日(日)全10公演
【会場】八幡山ワーサルシアター(京王線八幡山駅より徒歩30秒)

[Introduction]
自殺者が増加した某国
法改正により新たなビジネスが生まれた
自殺の後始末を本人から請け負う専門業者
その名もデリバリースーサイド 通称DS〜ディーエス〜
[Story]
「私は自殺してません」
依頼人の自殺者が残した奇妙な書き置き
「過労死だ、会社に殺された」と兄がDSに援助を求めるが…
「デリバリースーサイド」シリーズ第2弾

2017年秋に第1回を上演して好評を頂いた
ミステリー 「デリバリースーサイド」
DSの経営者黒木と助手の伊田、吾妻と吉良の刑事コンビも再登場
新たな出演者と共に、シリーズ第2弾をお届けします
演出 赤星ユウ (レティクル東京座)
原作・脚本 菅原愛 (a-fiction)

【出演】
五十嵐啓輔(和奏AGENCY)、 中三川雄介(レティクル東京座)、田邊俊喜、
山本沙和(レティクル東京座)、 兎美心(REVE INNOVATION)、
長野耕士、 音羽美可子、大橋篤、
松山コウ(劇団C2)、ハズレKUJI(阪口拓嗣:ボクらの罪団)、
エスムラルダ、森友樹(和奏AGENCY)、
城田さおり、えみかん、卯木祐矢(劇団わたあめ工場)

チケット販売中

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