水中のシャボン玉

水中を移動するシャボン玉という、不思議な現象を紹介します。
やり方は簡単で界面活性剤入りの水を、ストローでちょっと吸い取って、それをもとの水面にポトンと落としてやるだけです。すると、シャボン玉のような泡がゆっくりと水中を漂います。

水中を泡が移動しているように見えますが、実はこの『泡』、普通の泡と全然違います。

なぜなら、通常の泡の中には空気がぎっしりと入っています(下図、左)が
水中シャボン玉の泡の中は空気ではなく、界面活性剤入りの水が入っています
(下図、右)

ちょっと常識では考えられない、不可思議な現象ですね!
でも、この現象、どこかでで見たことないでしょうか?

というわけで、次にこの動画をご覧ください。

水面を水玉が転がるこの現象、よく目にしていますよね?

この現象は、水が持つ極性(分子がもつ電気的な力の偏り)により、空気中の窒素や酸素が水面に引き寄せられているため、水滴と水面の間にそれらのガスが挟まってしまってしまうためと考えられています(参考1)。
水中のシャボン玉の現象は、この水玉が水中に沈んでしまっているものと考えられます。

さらにここで、水中シャボン玉を作るために使われている界面活性剤の性質を加えて考えてみましょう

・界面活性剤は疎水基と親水基からなる
・界面活性剤は水面側に親水基を、空気側に疎水基を向けて並んでいる
・界面活性剤入りの水が他の水面と一体化する際、接触面に親水基を向けてからでないと一体化ができない(参考1)

つまり、水中シャボン玉は、水が空気をまとったまま水没してしまい、水没後も界面活性剤によって液面同士が一体化するのを妨げられて起きる現象なのです。

液体の表面には実は空気が引き寄せられて張り付いているって、なんだか面白いとは思いませんか?

日常生活の中にひっそりと存在しているこの水中シャボン玉と水面を転がる水玉の話、実用性こそないかもしれませんが、こういう予想だにしないことが身近な場所に潜んでいることを知ったときの喜びこそが、理科好き人間の原動力になります。

身の周りは、科学/化学の教材でいっぱいですよ!

参考1.
【水面を動く液滴 ~2つの液体が一体化しないのはなぜか~ 】
http://tnsc.sugoihp.com/eki2000/eki1.html
富山県立富山高等学校自然科学部

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