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春になったら

【春になったら】

▶︎連続ドラマ

ここ最近で1番好きになった作品。
ドラマ史上1番涙を流した作品かもしれない。
毎話毎話どこかしら泣いてしまうような作品だったけど最終回は最初から最後まで泣きっぱなしだった。
私は春が好きだけど、生きてきた中で初めて春が来ないでほしいとこのドラマの最終回が見たくないがために思ってしまったほど影響された。


私的にものすごく好きな、心地よいテンポ感のある会話を作り出す瞳(奈緒)とお父さん(木梨憲武)の親子が好きだったし悲しいはずなのに心が温まるし、お父さんと娘はもちろんのこと脇を固める方まで配役がぴったりすぎるし本当に素晴らしかった。

元々、奈緒にしか出せない日常に近い雰囲気の演技が本当に好きなのだが、そんな奈緒とは正反対のオーバーめな演技をする木梨憲武とのコンビなのになぜかとてつもなくマッチしていてふたりの温度感の違いが本当の親子感を出していた気さえする。
それに加えてオフショットを見てもふたりが本当の親子のような空気感になっていたしリアルな時間も含めてふたりは椎名親子になっていたんだろうなと思った。


お父さんはいつもふざけているけど、3話で瞳たちと遊園地に行ったあとに死ぬまでにやりたいことリストになぜ遊園地に行くことを入れたのかが明らかになったとき本当にグッときて涙が溢れた。それを娘には最後まで言わずにいる姿にもグッとくる。
娘に対してはいつも軽い調子で向き合っていて娘のほうがしっかりしているような仲良し親子だけど、妻(森カンナ)が亡くなってから精一杯娘に向き合って強い父を全うしてきたことがわかる場面だった。
そんな実は弱い父のことを本当は全部分かっている瞳はずっとお父さんより強くいようと頑張ってきたはずで、最後までお父さんが安心して旅立てるように結婚式前日に「大丈夫だよ」と伝えてあげられるほどのしっかり者。
別にどっちがしっかりしていたかは重要ではなくて。妻であり、母である佳乃が亡くなってから瞳とお父さんがさよならする春が来るまでお互いがお互いを支えてあげるためにしっかりしようと生きてきてそれが結果二人三脚になっていたんだろうなあと思わされる。

だから旅立つ先は全く違うけど、ふたりが一緒に旅立ち式をすることは瞳から父へのサプライズプレゼントでありながら父から瞳へのエールでもある。
どんなに仲の良い親子だろうと夫婦だろうと友達だろうと絶対に永遠はないから、必ずいつか別れはくるから瞳とお父さんのお別れも本当は悲しいだけのものではないんだよね。
あんなにたくさんの愛に包まれて人生を終えられる雅彦(木梨憲武)はもちろん、あんなにたくさんの愛を伝えて見送れる瞳は幸せ者なのだとも思う。
別れの物語だけどそんなことを教えてくれる作品。


雅彦の余命がわかってからの闘病記録ではなくて、瞳も雅彦も周りのみんなも雅彦の余命を知りながらも普通の何気ない日々が続いている。
それがすごく好きだった。
父のことは気になるけど日常はさほど変わらないし仕事は当たり前にやっている瞳、それが現実だと思うしその変わらない生活の中で悩むしかなくて限りある時間の中で全部追い求められず自分の明るい未来を考えられずに一旦結婚を手放そうとするその考え方がものすごくリアルに近い感じがした。
まきちゃん(筒井真理子)はずっと淡々と過ごしていて必要な限りのサポートはするけどそれ以上何か手や口を出すことはない。一見、冷静に全てを受け止めているように思うけど旅立ち式で誰よりも泣いている。そこで雅彦の唯一の姉で、瞳とはまた違う時間を一緒に過ごしてきた雅彦の家族であることが思い出されるし瞳や雅彦のために冷静な感じを演じていたけれど弟が先に死んでしまうことを簡単に受け入れられているはずがないよな、と考えさせられるリアルさがあった。
恋人のかずまるくん(濱田岳)や友達の岸くん(深澤辰哉)や美奈子(見上愛)や瞳の職場の人たちはもちろん大切な人の父親の迫り来る死に驚き瞳と共に悲しみながらも瞳の人生をちゃんと生きてほしいとそれぞれに願っている。
余命宣告をされると目に見えたカウントダウンが始まるからその人に残された人生を重要視してしまうけど本当は全ての人がいつ死を迎えるかなんて分からなくて全ての人が死へのカウントダウンをしながら生きている。
だから瞳の周りの人が瞳の生活が父中心になることに違和感や危機感を覚えるのもリアルなんだと思う。当事者になると気づかないけれど。
そのことを優しく遠回しに瞳に教えてくれる先生(光石研)や、瞳の気持ちを尊重しサポートしながらも社会から切り離さない節子先生(小林聡美)の存在は瞳にとって大きなものだっただろうし、作品にとっても雰囲気をさらによくさせる大切なふたりだった。


直接的な死の描写がないところも好きだった。
瞳が産まれるところ、助産院で赤ちゃんが産まれるところや旅立ち式は大切に描かれているけど、佳乃と雅彦が亡くなるところや葬式は描かれてはいない。
まだまだこの先も瞳は助産院で命をとりあげていくだろうし、かずまるくんとりゅうちゃんとの新たな生活を始めていく。
岸くんと美奈子の恋が始まるかもしれない。
だから春になったら死んでしまうのが主軸ではなくて、春になったらそれぞれの場所へ旅立っていくという明るい物語なんだと思う。



かずまるくんのネタも優しくて好きだったなあ︎💕︎︎

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