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Twitterの変質は地域PRにも影響大

10月30日にイーロン・マスク氏がTwitterの買収を完了させて以降、混乱が続いています。地方自治体をはじめ、地域にとってもPRメディアとして欠かせなくなっているTwitterの「変質」がどのような影響をあたえ、どうそれに対処すべきなのかを考えます。

モデレーションチームを大幅削減

買収前よりマスク氏は75%もの大幅な人員削減計画を示していました。

創業以来ユーザー数(世界のアクティブユーザー3億3,300万人、日本国内は4,500万人)は伸びつつけた一方で、日本円で330億円以上の赤字が積み上がっていたため、リストラはやむを得ないという見方もある一方、メディア・プラットフォームとしてのTwitterの公正さが確保できるのかを不安視する識者も少なくありません。

Facebookなど他のSNS同様、TwitterもAIによる不正投稿の検出と、モデレーターと呼ばれる人の目を介したチェックによって、人種差別的なヘイトスピーチや個人への攻撃と見られる投稿を削除したり、投稿者のアカウントを凍結(使えなくする)処理を行ってきました。ところが、このモデレーションチームが大量に解雇されたと報じられたのです。既に「トレンド」の更新が止まったり、スパム投稿が増えるなど、ニュースフィード表示の混乱が起き始めています。

マスク氏の「言論の自由」に対する姿勢にも懸念が寄せられています。凍結されていたトランプ元大統領のアカウントを自身のアカウント上でのアンケート結果を根拠として復活させたことは象徴的で、これまで「公共圏」としてなんとかバランスを保とうとしてきたTwitterが今後どうなるかは予断を許さない状況です。既に大手広告主にはこの状況を嫌って広告出稿を見合わせる動きも出ています。

地域に求められる「攻めと守り」

PRはPublic Relationsの略で「自らの活動の公共的な価値を各方面に広く知ってもらい、 より良い関係を築いていく」ために行われるものです。(参考→ 電通PRコンサルティングによるPRの定義)地域においても、PRをTwitterなどのSNSを用いて行う事ももはや当たり前となりましたが、その礎となるメディア・プラットフォームとしてのTwitterの信頼性が揺らいできてしまっています。これまでもしばしば起こってきた炎上などのリスクが、モデレーションが適切に行われないことにより更に高まってしまっているわけです。どのような対策が考えられるでしょうか? 攻めと守りの両面が必要になると筆者は考えています。

攻め=エゴサーチなどよりアクティブなSNS対応へ

これまでもSNSでの情報発信が「発信」だけに留まっている地域は残念ながら少なくありません。発信した情報がどのように受止められているか、その反応も確認し、必要に応じて先手先手で対応を取ることがこれまで以上に重要になります。SNS運営者によるモデレーションに期待ができない以上は、「知らない間に思わぬ形で炎上していた」「気がついた時には手が付けられない状態になっていた」ことを防ぐのは、発信者自らの責任によるところが大きくなります。

具体的には、エゴサーチ(略称なども含めたキーワードの定期的な確認)と、アクティブ対応(重要な投稿にはメンションが入っていなくても、公式アカウントからリアクションを行う等)を定期的に行う必要があると考えています。これらの作業は炎上対策だけでなく、ポジティブな言及を拡げることにも貢献するものですが、これまで以上に重要となるはずです。

守り=緊急時対応と代替手段に備えを

モデレーションが機能しないSNSは、消防車が出動してくれない街のようなものです。炎上などSNS上のトラブルに備えて対応のフロー(エスカレーション)が確立され機能しているか、実際の防災訓練のようなチェックも必要です。以下のSalsforceの記事も参考になります。

またPRの教科書で必ず言及されているように、普段からフォロワーと良い関係を築いておくことが、トラブル発生時における心強い味方となります。SNS運営の攻めと表裏一体の取り組みとなりますが、単なる情報発信から情報の受け手との関係構築を目指したものへのレベルアップを検討すべきタイミングだと考えています。

そしてそのことが、万が一Twitterがメディア・プラットフォームとして機能しなくなり、撤退を余儀なくされるような状況になった場合でも代替の「場」への移行をスムーズなものにします。「Twitterがそんな風になってしまうなんてあり得るのか?」と思われるかも知れませんが、これまでも5年~10年程度の周期でSNSのトレンドは移り変わってきました(筆者が「足あと問題」で揺れたmixiを取材したのがちょうど10年前です)

既に一部のユーザーの間では、Mastodon・Discordといった代替手段を模索する動きが出ています。よりクローズドな場とはなりますが、Facebookページやグループの位置づけをもう一度検討する良い機会ともなるはずです。

※この記事は日経媒体で配信するニュースをキュレーションするCOMEMOキーオピニオンリーダー(KOL)契約のもと寄稿しており日経各誌の記事も紹介します。詳しくはこちらをご参照ください。
※日経COMEMOへの連載を中心にまとめた書籍が刊行されました。よろしければ以下もご参照ください。


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