見出し画像

アラ還原付日記(仮)episode 014 迷走の果て自分と出会う ~納車59日

2019年11月20日(木)
城山ダムツーリング決行! 楽しかった。そして、近かった!

海へ、ダムへ

11月初めに1ヵ月点検を受け、ミドリが問題なく走れていることを確認すると、さっそく海へ行った。
納車以来、初めての遠出だ。
目指すは辻堂海浜公園。私の住む神奈川県央エリアから、直線距離で20km、実質的な道のりにして30kmくらいのところである。

それくらいじゃ遠出とはいわないかな?
けど、どんどん日が短くなるこの季節、あまり遠くまで行ってしまうと、私のトロトロ運転では明るいうちに帰投できない懸念がある。
夜道は怖い。昼間でさえおっかなびっくりなのに、わざわざ暗くなってから走りたくない。

11時半頃家を出て、昼食用のパンを調達するなどしながらトロトロと南下。辻堂海浜公園に到着したのは午後2時頃だった。
移りゆく季節を惜しむかのようなうららかな陽気。浜辺に出れば汗ばむ日射し、海は紺碧、江の島がすぐそこ、反対側には富士山も。
海が見られたことも嬉しかったが、同じくらい、ミドリでたどり着けたことが嬉しかった。海は何度も見たことがある。ミドリで見た海は初めてだ。

帰りはやはり途中で暮れてきた。日が陰ったら手が冷えた。しかし30kmの道のりを2時間休まずトロトロしても思ったほど疲れず、初めての遠出を無事終えることができた。

こうなると、次はもっと遠くへ行ってみたい。
そこで選んだターゲットが、城山ダムだった。

遠い? 近い? 錯覚のいたずら

地元から海とは正反対の方角にあたる城山ダム。
県央を通って相模湾に流れ出る相模川の上流にある。
1ヵ月余り前、関東地方を直撃した台風19号の記録的大雨により、1965年の運用開始以来初めてという緊急放流に踏み切った。
相模川はすでに氾濫危険水位に達していた。このうえ歴史上例のない緊急放流! 幸いにも拙宅は川からずいぶん離れているが、スマホのアラートは何度鳴ったかわからない。

午後5時→いったん見合わせ→午後10時→やっぱり前倒しと二転三転の末、午後9時30分、緊急放流実施。「ドタバタ」なんて報じたメディアもあるようだけど、雨のピークを見極め下流の水位を見定め干潮の時間まで見込んでの緻密な判断だったと賞賛する意見も聞く。
結果、氾濫は回避。神業! と私は思いますけどね?

そんな城山ダムを見たいと思ったのだ。
一路南下すれば必ず着くはずの海と違って、ダムは道を間違えたら永遠にたどり着かない。津久井湖城山公園水の苑地というところを目標にするとわかりやすいようだ。
帰りが日没を過ぎてしまった辻堂行きの反省を生かし、少し早めに出発。周到に下調べした右折左折ポイントをすべてクリアして、正午、水の苑地駐輪場に到着した。

え……正午?
まだ1時間半も乗ってないんですが。走行計も20kmほど増えただけ。
辻堂より遠いと思ってたのに。近かった?!

想像するに、海はなじみ深いものだけどダムにはなじみがないので、ものすごく遠いと脳が勝手に思い込んでいたのでは。
城山ダムに限らずダムというもの自体、訪れるのは初めてだったのだ。

堤体を間近に見渡せる展望台に立つ。
開いているゲートは1つだけ。晩秋のよく晴れた空の下、豪快というよりのどかというほど穏やかな眺めで、緊急放流の危機があったとはとても思えない。
けれど、湖には、台風の爪痕と思われる大量の流木がたまっていて、クレーンで引揚作業が行われていた。

続いて津久井湖記念館を見学。ダム建設のため水没した地域の歴史を示す資料が展示され、先祖伝来の地を離れた285世帯の方々のお名前が刻まれている。

ダムカードをもらい、湖の回りを散策して、帰路に就いたのは午後2時。
いや~近いと気が楽だ。これなら絶対明るいうちに家に着ける。いくら私がトロトロ運転でも。

が……今日のハイライトはこっからだった。

あの車は私です

国道413号から右折で城山公園に入ったのだから、帰りは左折で出なきゃいけなかった。
なのに、来る時「右折右折」と自分に言い聞かせていた私は、同じ角を帰りもナチュラルに右折してしまったのだ。

あれ~、こんな道だったかな?
同じ道も反対方向にたどれば違って見えるのかも、と強引に解釈してトロトロ進む。
だが行けども行けども見覚えのある景色は見えてこない。やだ、完全に迷走してるよ。知らない道は怖い。そう思うと余計トロトロせざるを得ない。

その時だ。
前方におっそろしくトロい乗用車を見たのは。

初心者マークをつけた車だった。
この私が「トロい」と思うんだから相当トロい。
トロいとは、ただ遅いだけではないのだ。何がしたいのかわからないのだ。進みたいのか止まりたいのかまっすぐ行きたいのか曲がりたいのか。わからないまま瀕死の虫が這うように動くのだ。

あぁぁ。あれ、私だ。四輪か二輪かの違いだけで。私もあんなふうに見えてるんだ。

何が怖くてトロトロしてしまうのか、我が身を振り返ってみた。
速度を上げるのが怖い。それもそうだが、速さ自体は、実はもうそんなに怖くない。しょせん制限時速30kmだし。
本当に怖いのは、何かあった時止まれないことだ。だから過度にノロノロしたり、周囲の車の出方をうかがってモタモタしたり、何なら四六時中、四方八方から何かが飛び出して来そうな気がしてオドオドしてしまう。
それって用心深いというより単なる挙動不審。できれば近づきたくない危険な存在なのだということが、人の振り見て初めてわかった。

ところで私は道に迷ったことを自覚しながらいつまでトロトロ前進しているのだろう。
我に返ると、コンビニを見つけて駐車場の片隅に駐めさせてもらい、ライトマップルを広げた。
迷走の原因を悟り、回れ右をして、正しい道へ戻った。
次はもっと遠くまで行けるかもしれない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?