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金の鳳凰座の私がライティングに挑むワケ

しゃべることが苦手だ。
思ったことをすらすらと口に出して表現することができない。
私の頭と口は回路がつながっていないみたいに、出てくるまでがとても遠い感覚がある。
 
周囲には、反射神経でしゃべるような人もいる。
歩くことと同じように、何も考えずに話せるのだという。
目の前にカンペも出ていないのに淀みなく説明できて、オチまでつけて笑いを取れるなんてすごい。
私は43歳にもなったのに、よちよち歩きのままだ。
 
“ノリ”でしゃべれることを格好いいと思っていた中学、高校時代、私にはそれができずとても苦しかった。しゃべりが上手な人が学年のヒエラルキーのトップにいるような気がしていた。
毎朝一緒に中学に通っていたAちゃんもとても話し上手だった。
彼女は学校まで歩く25分の間に、前日の古畑任三郎のあらすじやハイライトを上手く話してくれた。場面が見えるようだった。
 
大人になったらうまくしゃべれるようになるのではと思っていたが、ちっとも変わらなかった。
20年もサラリーマンをやっているが、会議での報告は事前にメモをしていないと上手く話せない。
自分が話す番が来るまでドキドキしながらメモを反芻しているから、前の人までの話は上の空である。
そうやって、これまで普通に話せる人を必死で装ってきた。
頭の中にあることを一度文章として見える状態にして、そこを経由すると初めて口に出すことができる。
一度バッグの中身を全部机に出してみないと、何が入っていたのか分からないような感じなのだ。
周りの人たちが普通にできることができないので、私って頭が悪いんだな……とコンプレックスだった。
 
ところがある日、新しい概念によってそれは少しだけ変わった。
急に目が覚めて眠れなくなり、仕方なしにスマートフォンでYouTubeを観始めたある夜のこと。
普段、占いや風水のチャンネルを好んで観ているので、「おとめ座の3月の運勢」や「一粒万倍日の○月○日におススメの行動」といったような動画がサジェストされてくる。
その流れでゲッターズ飯田の動画がサジェストされたのでタップして再生した。
ゲッターズ飯田はお笑い芸人で占い師だ。
彼自身が編み出した五星三心占いが人気で、著書の累計発行部数も1000万部を超える。(2024年3月現在)
五星三心占いは、6つのタイプ(○○座と表現される)×生まれた西暦年数が偶数(金)か、奇数(銀)かの2つのタイプで計12タイプに分かれる。
私は自分が金の鳳凰座であることを知っていた。
 
YouTubeでゲッターズ飯田は言った。
「鳳凰座の人はおしゃべりが下手なんですよ。だから電話で話すとか地獄ですよね……」
 
え~、まじ!
私って宿命的にそういう特徴を持つ人だったの!?
それを聞いて、生まれながらにしゃべりが下手なのはショックだけど、ちょっとラクになった気もした。
人種の概念を知らずに白人社会に生きていて、「私って目も髪も黒くて鼻ものっぺりしていて、なんでみんなと違うんだろう……」と悩んでいたところに、あなたは黄色人種でそれが特徴だから、ということを教えられたようなものだ。
どうりで喋れないはずだわ!!
黒い目はメラニン色素が多いから白人の青や緑の目よりも眩しく感じないといういいところもあるらしいし、一長一短あるよね。
 
しゃべりが下手な代わりといっては何だが、聞くことは好きだ。
実は2年ほど前からとあるご縁で、様々な企業の女性役員にインタビューをして記事を書くという仕事を副業にしている。
自分から何かを語るのは苦手だけれど、他人には非常に興味があるので、その人がその生き方をしている理由が聞きたくて仕方ない。
だから、インタビューというのは好奇心が満たされるとても楽しい仕事だ。
取材が終わって書く段階になると、30~40分のインタビューでも結構な量になるのでなかなかしんどいが、書きながら再びその人に会えるような感覚があり、こういう部分がこの人の素晴らしいところだなぁ……なんて改めて感心し、その人への尊敬が確たるものになっていく。
 
インタビューは4000字、エッセイは2000字前後を目安に書いている。
この量を書くのは大変で時間もかかるが、自分の外に出てしまう前に、中で形にしてみて整理できるという意味で、私にとっては苦しいけど気持ちの良い作業でもある。
ゆっくり考えることを許されているという状態や、その時間が落ち着くのだと思う。
 
私が本格的にライティングに取り組もうと思った表面的な理由は、面白いインタビュー記事を書けるようになりたいと思ったからだった。
でも心の一番奥底では、しゃべりが下手な鳳凰座の私にとって、ライティングが人生の救世主になってくれると期待したからなのかもしれない。
実際のところ、書くことは私にとって、遺跡を掘ってるみたいに私の思考が徐々にくっきりしてくるような感覚をもたらしてくれる。
私は書くことで、私自身を深く知ることができるのだ。
 
金の鳳凰座には、こんな特徴もある。
「どんな仕事でも『これが自分の天職』と思い込んで没頭すると成功するタイプ」
この文章を書いている間にも、私って書くことが好きかも……とじわじわと思い込み始めている。

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