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これがトントン拍子と言うやつか

2018年12月、僕は生まれて初めての食中毒を引き起こし高熱に見舞われていた。

最初は時期が時期だけにインフルエンザだと確信していたが、検査の結果陰性だった。

医者に最近期限切れの肉とか、火が通りきっていない肉は食べなかったか?と聞かれた。

いや〜、そんな変なものは食べてな…。

あ。

食べたわ。火が通りきってない肉。

4日前に居酒屋で鳥のたたき食べましたわ。

後日、医者から検査結果の連絡があり、カンピロバクターという細菌による感染性胃腸炎を引き起こしていたことが確定した。

しんどかったランキング1位は小学生の頃、スキー授業で足を骨折して運び込まれた病院の医者がヤブ医者だったことだけど、確実にランキング2位に食い込んでくるくらいきつかった。

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僕は高熱があるにも関わらず、アルバイトでの僅かな稼ぎしかなかったため、病院に行くこと一度躊躇した。

このとき命の危険と情けなさを同時に感じ、高山での生活にも飽きてきたところだし、こんな訳の分からないタダ働きはやめて、すぐにでも仕事を始めようと思った。

ちょうど食中毒になる前の週に木工のワークショップがあり、そこで知り合った方に「ここ知ってる?」と個人家具工房のInstagramページを見せてもらっていた。

ブランドとしての統一感もあり、製作物からはっきりとしたコンセプトも感じられて、僕の脳内ではいいねボタンを連打していた。

高熱で意識が朦朧としている中、僕は教えてもらったこのアカウントをGoogleで検索していた。

Instagramのアカウントページを見ると、なんと求人募集をしているではないか。脳内ではアドレナリンが出まくっていた。

工房見学歓迎します!と書いてあったので、とりあえず見学させてもらおうと思い速攻でメールを送った。

すると返信されてきたメールに一応履歴書持ってきてと書いてあった。

なるほど、なるほど、そういうことですか。

稀にある説明会だけのつもりがそのまま面接になるパターンのやつですね。(体温39.7℃)

気付くとスマホを握りしめたまま眠っていた。

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僕は面接が苦手だ。

自分のことを知ってもらおう、ちゃんと伝えようと喋りすぎてしまい、結果として若干引かれる。

しかし、僕は失敗を重ね少しだけ成長した。

力んだ肩の力を抜いて、相手と落ち着いて会話のキャッチボールをすれば大丈夫だ。

そんなことを考えながら工房へ車を走らせていた。

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面接後、僕はとても気分が良かった。

今までの面接の中で一番会話のリズムが良かったからだ。

帰りの道中、感極まって車内でかけていたアジカンの曲で泣きそうになった。

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人生いつ何が起こるか分からないというが、僕はこのような経緯で現在、京都の家具工房で働いている。

これがトントン拍子と言うやつか。

11月の終わりに工房のことを初めて知って、1月の始めに採用の連絡があった。約1ヶ月の間の出来事だ。

実は自分しか応募がなかったんじゃないかと思ったが、20名以上から応募があったとあとから聞いた。

人生は不思議なもので自分の一つ一つの行動と巡り合わせが今に繋がっている。

もし高山に行っていなかったら、ワークショップに参加していなかったら、食中毒になっていなかったら、おそらくどれか一つでも欠けていても僕は今、京都にいることはないだろう。

きっとこれからもこういう人生の分岐点に成り得る出来事や出会いがいくつも待ち受けていて、それらを逃さぬようにレーダーを張り巡らせ、大事なことを嗅ぎ分ける嗅覚を研ぎ澄ましていくことが必要だと思った。

僕は感慨にふけながら、もう二度と鳥のたたきは食べないと堅く誓った。

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工房準備中 @craftsmans_harbor
制作アカウント @object_wood

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