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ロキソニンが手放せない

2017年10月、僕は一か月の活動的な無職期間を終えアルバイトを始めた。

少しまとまった額のお金を貯めたかったため、田舎としては時給の高い鋳造工場(時給1000円)で働くことにした。

実家が鋳物屋ということもあったが、純粋に興味があった。

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工場は家からそこまで遠くなかった。だいたい車で10分ちょっとのところだ。

工場自体はそこまで大きくはなく中規模程度だ。従業員も自分が入った時で10人を切っていたと思う。

働いている人は結構いかつめだったけど、皆さんとても優しい方たちだった。

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まず最初に与えられた仕事は砂型作りだった。

砂型とは読んで字の如く砂の型だ。

ここに溶けた鉄を流し込んでいく。

砂型作りは誰もが昔公園の砂場でやったように、水の含んだ砂を詰めたバケツをひっくり返して砂の山を作るのとまぁ同じ要領だ。

違うのはバケツが木型で(これも読んで字の如く木の型だ)、水を含んだ砂が硬化剤を混ぜた専用の砂というだけだ。

あとはひたすら木型から砂型を取っていく。

砂が固まるまで30分くらいかかるので、待っている間にまた別の型に砂を込める。

こんな感じで30分経ったら、始めに込めた砂型を木型から外し、また砂を込める。複数の木型を一つのローテーションとして必要個数砂型を取る。ひたすらこの繰り返しだった、

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ここでの仕事は特に嫌ではなかった。

先に言っておくと、基本力仕事なので全身筋肉痛と腰痛がしばらくの間続いた。ロキソニンが手放せない。ヤク漬けだ。

環境的なことだと、壁と屋根はあるので雨風はしのげるが、夏はくそ暑いし冬はくそ寒い。自分がアルバイトをしていた期間は冬だったので、本当に寒かった(日中最高気温が氷点下の日とかあった)。防寒対策をしっかりしないと指の感覚がなくなる。

そもそも重いものを扱うし、煌煌と赤く光るどろどろの鉄は1200℃以上あるし、一歩間違えれば大事故につながる。危険だ。

こんな感じの仕事でも楽ではないが、続けられた。

元々単純作業が好きだったのもあるが、心地良かった。決して楽しくはないが新鮮な感覚だった。

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仕事は朝8時から夕方17時まで。

朝は遅くても7時には起きて支度をした。

なんだか数年ぶりにこんな規則正しい生活を送っている気がする。ストレスもない。精神状態が安定しているのが分かる。

仕事は必要な砂型の型番と個数を確認し、木型を探してきてあとは黙々と作業する。それだけで社員の方も工場長も社長も会長もみんなが褒めてくれた。こんなに褒めてもらえたのは本当にいつ以来のことだろう。

空いた時間で必要な備品を加工したり、道具の整理をしたり、掃除をしたりした。

この行動はここで働く人たちのことを思ってやっていた。自分が直接使うものでなくても「この備品少なくなってきたから作っておこう」とか、「ここ整理して掃除したら作業しやすくなるな」とか他の人ことも考えて行動していた。

きっと僕は誰かのために頭で考えて、実際に自分の手と身体を動かして、理想を実現させていくことにやりがいと心地良さを感じるのだと思う。

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作業環境が厳しかったり、給料が安かったり、教育環境が整ってなかったり、休みが少なかったりといろんな理由で職人の世界が若い世代から選択肢から消えてきている。これはよくない。

自分も職人の世界に入ってみて、本当に新参者に厳しい世界だなと思った。やりたい人は一定数いるのに、一部の古い考えとやり方を振りかざしてくる人たちが業界の文明レベルの進歩を止めてしまっている。

もっと間口は広くて良いはずだ。

僕はまだまだ未熟だけれど、いつか必ず職人を目指す人が少しでも増えるような活動や環境作りをしていきたいと思う。少なくとも僕はこの思想のもと自分の道を進んでいく。





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さる山

デザイナーから家具職人へ。注文家具屋勤務。頭の中を少しずつ文章にしていこうと思います。考えていることいろいろと。京都市在住。
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