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180度ターン演出!モノトーンにはどんな意味が?SHISEIDO MEN 「男の美しさは、肌に出る」篇の研究

SHISEIDO MENという男性基礎化粧品のコマーシャル「男の美しさは、肌に出る」篇30秒は、反町隆史さん松嶋菜々子さんご夫妻が出演するとういう豪華なものです。コマーシャルは全体モノトーンな色調で構成されています。シンプルな家具や背景、反町さんや松嶋さんの衣装もシンプル極まりないものです。シンプルだからこそ反町さん松嶋さんの印象が際立っています。

カット01

最初のカット、かなり引いた構図。下手から反町さん、上手から松嶋さんが歩み寄り中央に配置されたテーブルの席に着き物語がスタートします。9分割構図において縦横両方向の中心に反町さん松嶋さんそしてシンプルなテーブルと椅子が配置され、さらに商品名もこの分割画面に配置されています。カメラは少しだけしかもゆっくり中央にズームイン。視線は圧倒的に中心部に誘導されます。視聴者の視線が誘導される画面の部分を映像の重心と呼びます。このカットの構図の重心は圧倒的にど真ん中です。このカットにセリフはありません。静かに音楽が鳴り始めるだけです。セットは少し青みかかったモノトーンの平面で構成された非日常的な空間です。モノトーンは洗練さを表現するときによく使われる色調です。白とグレーと黒の色彩バランスが重要になります。色調を確認しておきます。

カット01カラー

背景はグレー基調、反町さんの衣装や松嶋さんのパンツや髪の色は黒。彩度がある顔が差し色となり印象的になります。

カット02

下手が反町さん、上手が松嶋さんで横並びの構図です。構図的には松嶋さんが美に関しては反町さんよりも知識があるとすれば納得する位置関係です。

カット03

松嶋「夫の肌を見ると思います。これまでの経験や思いが」
松嶋さんのナレーションで物語は進行します。つまり、妻の立場で夫への思いが語られていきます。なので、まずは主語としての松嶋さんの顔が見える構図、次のカット04で述語の反町さんの顔が見える構図となります。カット割にはそれなりの原理と理由があるということがわかります。

カット04
カット05

松嶋「そこに全部刻まれているなって」
なぜ、反町さんの手のカットかというと、「そこ」が手であり次のカットの顔のことです。

カット06

反町、照れ笑い
ここまでがテーブルを挟んだシーンになります。イマジナリーラインを跨ぐことがない基本的なカット割です。

カット07

このカットから新しいシーンになります。セットは明確には描かれていませんが、視聴者は二人が鏡の前に立っていると想像してしまいます。スケッチには描いていませんが、背景にかなりボケていますが蛇口らしきものが映っています。

カット08

松嶋「ひとつひとつ、丁寧に続ける」
松嶋、反町の手に商品を押し出す。

ここからこのコマーシャルは、イマジナリーラインの180度転換をやり遂げます。カット08では反町さん左方向を向いています。

カット09

松嶋「そういう生き方が」
反町、顔に化粧品を塗る。

このカット09は、鏡側からの見た構図です。実際にはそんなカメラ位置は存在するはずがないのですが、このコマーシャにはどこにも鏡が登場しないので不自然さがないのです。

カット10

松嶋「これからもいい顔を」
カット09からアクション繋ぎでカット10へ。頬に化粧品を塗る動作が生放送でのスイッチングのように切り返されることで違和感を解消しています。これでカット08では左向きだった反町さんがカット09で正面向きに、そしてカット10で右向けへ180度ターンが完結しました。
なぜ反町さんを右向きに変えたのでしょうか。
左を向く構図は過去を表現し、右を向く構図は未来を表します。すなわち、この商品を使う前は左向き、使った結果右向きになるのです。カット08が左向きの構図であることがこのコマーシャルのポイントカットなのです。

カット11

松嶋「作っていくんだと思います」
未来を向く夫を見つめる妻の構図です。この商品はもしかすると、妻が購入して夫に勧めるという購買行動を促しているのかもしれません。

カット12
カット13

松嶋さんは左寄りの構図、反町さんは右寄りの構図。それぞの余白空間が重力のように二人を近づける効果があります。

カット14

カット12からこのカットまでセリフはありません。動画には視聴者がメッセージを受け止め、自分なりに咀嚼、納得理解するための時間が重要になります。
カット14は黒地に白文字です。それまでの明るめのモノトーン基調で進んできた物語に突然の黒地でなのでインパクトは大です。さらにこの黒地をよくよく見るとただのベタ塗りではありません。モニター性能を判別するかのような低コントラストで同心円を描いています。分かりやすいようにコントラストを調整した感じでスケッチしてみるとこうなります。細かい仕事がプロフェッショナルを感じさせます。

カット14調整
カット15

反町「SHISEIDO MEN」
ここで初めて反町さんのナレーションで商品名をコールします。
カット01のような9分割中央に3種類の商品を配置した構図です。16対9の画面でみると左右の余白が空き過ぎ?と思うのですが。勝手な想像ですが、縦動画に変換することを想定した素材ではないでしょうか。どのカットも縦動画の構図で切り取りやすいカットになっています。他にもカット03と04と11も縦動画でも使用できる構図です。横長だけであれば、もう少し反町さんと松嶋さんが離れた配置でも問題ないと思います。撮影前の絵コンテで丁寧に検討したからこそだと制作スタッフを尊敬します。

カット16

反町「なに?」

カット17

松嶋「ううん」
カット16と17はプラチナカットです。尺が許されるならばカット17はあと5フレ欲しかったです。1秒間は30フレームですので5フレと言っても6分の1秒ですが。


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