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17:消えた友達を追って①

マガジン「人の形を手に入れるまで」の17話目です。まだ前書きを読んでいない方は、こちらからご覧ください。

友達に「リアル」と「オンライン」がいる…それはこのご時勢珍しいことではないと思う。当時大学生だった私にも、オンラインだけでつながった友達がいた。彼女と私はメッセージのやり取りを通じて親交を深めた間柄で、彼女とはお互い「家族との不具合を持つ」者同士だった。2つ年上の、隣県に住んでいた彼女の名前について、ここでは便宜上「C」として話を進めたいと思う。

Cは、とあるSNSコミュニティの「アダルトチルドレンコミュニティ(正式なコミュニティ名は伏せる)」の管理人をしていた。ごく少数のメンバーを束ねる彼女は、私より2つ年上の女性の様だった。

SNS、オンラインサービスに疎かった当時の私にとって、SNSでの交流はすぐに心の拠り所となった。(実際に日記を書くと母に見つかる恐れがあったのだ)家族のことで悩めば日記に書いて客観視し、だれかの意見を聞きたければコミュニティで吐き出した。彼女はそれに否定も同調もせず、『大変だったね』『今日は辛い一日だったのね』と返してくれた。

彼女は人との関わり方がとても上手だった。よもやすると、「あなたも私を悪者扱いするのね!」と恨みを買いそうなポジションだ。それでも彼女はコミュニティ全員から好意を寄せられていたと思う。私がそこにいた4年間、その手の諍いを見ることはなかったし、脱退者を見ることもなかった。この人のやり方を真似できれば、私も自分の人生をコントロールできるのかもしれない…私はそんなふうに感じ、彼女を尊敬した。

「ねえ、今度オフ会するの。隣の県だけど、よかったら陸さんもこない?」

この話が出たのは大学4年の春頃だった。Cは近々東京に越すことが決まっていた。すでにアパートの下見を済ませ、仕事先の目処もついているという話だった。そうして出立準備をしながら、最後に九州の町でつながった人たちとオフ会をしたいと思ったのだという。私は二つ返事で参加を表明した。

正直、Cが東京に行ってしまうのは寂しかった。でもその反面、いつか彼女を訪ねて東京に行く自分に期待する面もあった。私にとっては、幼少期を過ごした街。ずっと疎遠だったふるさとの街だ。彼女に会いにいくときにはしっかりと日程をとって、自分のふるさとも回りたい。まだ彼女すら行っていないのに、そんないつかについて思いを馳せた。

でもそのオフ会は開かれなかった。それはオフ会の数日前。Cの妹を名乗る人物から、彼女の訃報を知らせるメッセージが届いたのだった。


駆け出しライター「りくとん」です。諸事情で居住エリアでのPSW活動ができなくなってしまいましたが、オンラインPSWとして頑張りたいと思います。皆様のサポート、どうぞよろしくお願いします!