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DOTAMA氏と、大麻の話

 ※上の画像はモミジです

数日前、警察庁によってとあるサイトがオープンした。名は、「I'm clean! 違法大麻を撲滅するのはオレたちだ」。そのプロジェクトの広告塔であり、メインキャラクターを務めるのが、炎上中であり、渦中のラッパー・DOTAMA氏である。

DOTAMA氏が批判される要因は、大まかに以下のように分けられるだろう。

1. 「HIPHOPと大麻」が、切っても切れないという事実がある上に、大麻の違法性自体に疑問があるから。
2. DOTAMA氏はラッパーであるにも関わらず、バビロン(警察、国家など、権力を持つもの)の側に立ったから。
3. DOTAMA氏の行為が、彼と関わっていたラッパー・ひいてはHIPHOPに対しての造反行為だから。

では、それぞれにどのような理由があり、実際にどのような意見があるのか。

1. 「HIPHOPと大麻」が、切っても切れないという事実がある上に、大麻の違法性自体に疑問があるから。
HIPHOPという文化において、大麻(weed)の存在がなかったことは、一度として無い。事実、大麻を吸わないラッパーも大勢いるだろうが、それと文化全体は切り離して考えるべき事柄である。その上で、大麻の違法性について考える。
 ここ日本において、大麻の所持は、昭和二十三年法律第百二十四号・大麻取締法違反によって規制されている。嗜好用はおろか、医療用大麻も禁止されている。対して、諸外国においては、医療用のみならず、嗜好品についても合法化や非刑事罰化が潮流となりつつある。特に北米、ヨーロッパでは合法化・非刑事罰化が行われた地域が多い。「大麻=危険」というプロパガンダ的でステレオタイプ的な言説は、科学的根拠によって払拭されつつある。先進国での大麻解禁は、それを如実に表している訳だが、日本ではその議論でさえタブーというような姿勢が取られている。現に、当該サイトでは「大麻精神病にかかる」「鉱物化が起こる」「薬物依存になる」といった、一方的な論調が見られる。ここに挙げられたほど酷くはないとしても、確かに害があるのは事実かも知れない。ただ、アルコールやカフェイン、たばこなど、害がある嗜好品は数知れない。これら嗜好品と比べて、何が問題なのかというのは明らかに議論の余地がある。医療用に関しては、てんかん、癌、多発性硬化症などに効果を示すことから、尚更解禁が望まれているものだ。それが「大麻の違法性への疑問」なのである。大麻と密接な関わりがあるHIPHOPなのだから、DOTAMA氏にとってそれは当然知っていることだし、知っているべきことである。その上で、「違法大麻撲滅」という主張をしているのだから、彼に批判が集まるのは自然なことだ。

2. DOTAMA氏はラッパーであるにも関わらず、バビロン(警察、国家など、権力を持つもの)の側に立ったから。
 これは、HIPHOPという文化に対しての背信行為であり、冒涜だ。黒人によるカウンターカルチャーであるというルーツを無視している。とにかく、権力に抑圧された人間による音楽であるHIPHOPに携わる人間が、警察に協力する、ということの自己矛盾を理解していただければ結構だ。

3. DOTAMA氏の行為が、彼と関わっていたラッパー・ひいてはHIPHOPに対しての造反行為だから。
 HIPHOPと大麻が切っても切れない関係であること(その善悪は別の話として)は先程も触れたが、違法である日本もそれは例外ではない。直近ではD.O氏が逮捕された。UZI氏やAmateras氏の逮捕も記憶に新しい。逮捕されていなくとも、常用レベルで大麻を使用しているラッパーは大勢いるだろう。彼の身の回りにもいたはずだ。彼は、そういう世界で仕事をしてきて、そういうラッパー達とともに過ごした。「違法大麻撲滅」というポリシーを掲げることは、そのようなラッパーを密告すると宣言しているようなものであり、しないのであれば、それはそれでダブルスタンダードだ。どちらにせよ最悪である。前者は単純、仲間に対しての裏切りと言う点で。後者は、自分の意思を捨ててまで警察に付き、自分の意思とは異なる意見を発信したと言う点で、だ。本質的に、自分の意思を曲げてまで金を稼ぐこと自体、HIPHOP的な精神には背いているが、よりによってそれが警察なのだから、余計にタチが悪い。

以上のような理由があることを踏まえて、現段階でどのような意見が集まっているのか、特に当事者ともいえるラッパーを中心にツイートを収集していく。

DOTAMA氏に直接リプライを送っているリスナーの中では、賛成派が多数。ラッパー・著名なリスナーにフォーカスを当てると、反対派が圧倒的多数と見える。観点は様々だが、批判的な意見は大方、先程出した3観点のどれかひとつであるか、またその複数である。やはり重要であることは、DOTAMA氏が「大麻の使用に反対している」ことではなく、「”警察の立場から”大麻の使用に反対している」ことであり、それに関する異論反論が特に目立っている。

今回DOTAMA氏がした行為は、間違いなく炎上して然るべきことだし、何らかの説明が当人からあっていいことだと思う。その理由は今まで書き連ねた通りである。私の感覚として、世間一般において、「大麻=危ないもの」というイメージはとても強固で、「本当に危ないものなのか?議論しよう!」というような空気感は微塵も感じない。釈迦坊主氏のツイートを引用させていただいたが、それを参照するとおり、意見し合う=議論するというフェーズに世間を持って行くことは重要なことだ。そこにさえこぎ着ければ、少なくとも、医療用大麻においては、大麻解禁派には明確なエビデンスが揃っているのだから、解禁まで持ち込むことが恐らく出来るだろう。イギリスにおいては、重篤なてんかん患者の要望がきっかけとなって議論が勃興し、医療用大麻が解禁された。日本でも、医療用大麻を必要とする人の声を、世の中に届ける人が必要だ。今回の件が、大麻自体の良し悪しまで議論を及ぼしてくれれば幸いであるし、そうなることを切に願う。

参考: https://www.bbc.com/japanese/46053762
         https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-45872517

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