「MIX - 初音ミク多頭飼い合同誌」は性癖が胸をうがつSFだった

はじめに

 この note は,コミックマーケットC96 4日目(2019年8月12日)にサークル tete-a-teteWebカタログ)が頒布した同人誌『初音ミク多頭飼い合同誌』(全3話)についての感想です.ここで述べた感想は本書を実用とする場合の邪魔となる可能性があるのでご注意ください.

 まずタイトルについて.衝撃的でした!クリエーターと複数のミクさんが同居,という設定はよく聞きます.でも,「多頭飼い」という言葉の不穏さはこじれた性癖をつくヤバさを期待させてくれました.購入時にくれたピンクチラシのできも良く,劣情をあおってくれます.深夜まで営業してる怪しい本屋にあるチラシ,そんな感じのやつです.

 ここで1つ忠告.ガッツリと実用したい方はこの note を読む前に第2話で致しておくことをお勧めします.

1.ジャンクストックメモリ
          side: もなかミク by 夕凪ショウ

 気怠げな女性マスター(主人公)がジャンクなミクをいじめるとは,初っぱなから驚かされます.

 オナホを埋め込む際の表現,見下しながら語るマスターのセリフのコンボがエロくてむごい.そして,「新しい臓器の...」で語られる設定,関係性にただならぬものを直感しました.あ,これサイバーパンクだ.

 マスターの大切なミクさんから隠され,無き者の扱いされてもマスターを気遣うけなげなミク.返されるセリフの絶望感,でもミクは絶望なんか感じない,機械だから.このサイバーな絶望が日常なウィリアム・ギブスンの『クローム襲撃』を連想しました.

 はじめ,「アタッチメントの効果絶大ね」というセリフ中のアタッチメントが何なのか理解できませんでした.読み返してそれが何なのか想像できたとき,うなりました.「そういうカオ」はそれで可能になったのか!

2.天使90分20000円
           side: 夕凪ミク by もなか最中

 マジミラのライブが終わった後から始まるお話.この同時間的な設定が実に良いですね.同担拒否な闇落ちしているPを誘う主人公のセリフのはまり具合がやばい.えっ,でも「うちのミク」ってどっちの事と思ったら,出てきたのは首輪ミクちゃん.デリバリーなお店で客をとらされています.うぁぁ.

 闇落ちPに陵辱されミクちゃん,実にそそります.処理させられる際の損害,そのシーンでのセリフがまたすごい.闇落ちPをあおってミクちゃんをいじめさせるシーン,あおりかたがエグい.

 間接的にマスターに汚されたミクちゃんですが,それでもマスターが大好きでお礼(!)のメールを送ります.でもその報われなさっぷりが徹底しています.切ない.

3.lip on
          side: しろくろミク by しろくろ

 この話に出てくるのは「ミクさん」.マスターのパートナーとしての大切にされています.彼女に歌ってもらうのを聴きながらマスターが思い浮かべる他のミクたちの姿.彼女たちへの仕打ちは曲の肥やしとするものだったのか,ミクという存在へのリビドーをぶつける先だったのか気になります.

 感極まって思わずした行為の際に放たれるなにげないセリフが刺さります.ここ,第2話で闇落ちPとともに致していたらどれだけの痛みを感じる事ができたか.

 最後になぜあのセリフを発することができたのか,解答が提示されます.ここで『ニューロマンサー』から始まるスプロール・シリーズの神々を連想しました.あぁ,ここにも神が,われわれの女神が生まれたのだと.

おわりに

 ミクがあれこれされることを期待しながら本書を読み始めたところ,予想外な SF 要素に胸を躍らせてしまい,1週目に致せなかったのは失敗でした.1週目で用を済ませて賢者モードの2週目で SF 要素を楽しめばよかった.

 とはいえ,本書ではエロと SF を同時に味わえるという楽しい体験ができました.ボカロキャラのエロ同人誌は幾つか試したことがあるのですが,それではあまり楽しめませんでした.というのも単純なハーレム物で,ボカロキャラ要素が邪魔になってしまった感じでした.対して本書はミクに対するこじれた性癖がくぎとなり心をうがってくれました.

 最後に本書のような刺激的な同人誌を頒布してくれた著者の皆さまにお礼を申し上げたいと思います.ありがとうございます,とても美味しかったです.🙏🙏🙏

書籍情報

MIX - 初音ミク多頭飼い合同誌
発行日: 2019年8月12日
著者: 夕凪ショウもなか最中しろくろ
発行サークル: tete-a-tete
本文ページ数: 34ページ
頒布イベント: コミックマーケットC96 4日目(2019年8月12日)
印刷: 株式会社栄光

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