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手の美術館を開館します。

わたくしこの春、美術館を開館することとなりました。館の名前は「手の美術館」といいます。ここ数年来ずっとあたため続けていた構想を、ついに形にする運びとなりました。みなさまにおかれましては、ぜひ当館に一度と言わず二度三度と足をお運びいただき、当館所蔵の数々の逸品に触れ、新しい気づきや感動をお持ち帰りいただければ幸甚です。

と申しましても、当館はリアルの世界には存在いたしません。みなさんが今お読みになられているこのnote上にのみ存在する、形のない美術館です。

ですから、特別なメンテナンスがない限り24時間365日ご訪問いただけますし、入館料も(少なくとも今の時点では)いただきません。閲覧しながらの飲食もOK。あなたが訪ねたい時にあなたの目の前に現れる美術館。それが手の美術館です。

この美術館に飾られるのは、その名の通り、世の中のさまざまな人々の手の写真です。そして、何故その人はその手を持つに至ったのか、手の背景にある物語をインタビューを基にした文章で綴り、写真と共に展示いたします。

飾られる手の持ち主は、ありとあらゆる世界の人々です。職人さん、絵描きさん、町工場のお父さん、家族の食を守るお母さん、音楽家、農家さん、スポーツ選手、夜のお仕事の方、堅いお仕事の方、やわらかいお仕事の方、男性、女性、日本人、外国人、障がい者、健常者。そこに壁はまったくありません。

わたくしはこれまで、20余年にわたり1,000以上の人々にインタビューをし、その人生に触れてきました。インタビューの相手は、誰もがご存知のような著名な方ばかりではありません。むしろ、広く知られることないけれどその人がいなければ多くの人が困ってしまう、そんな名もなきヒーロー達に多く出会ってきました。

そしてある時、気づいたのです。そのヒーロー達の多くが、美しい傷、美しい汚れ、美しい変形に覆われた、その人にしか持ちえない味わい深い手を持っていることに。

手は、体のあらゆるパーツの中で、最もその生き様が出る部位だと思います。その手を掘り下げ、その裏側にあるストーリーを浮かび上がらせることで、我々へのメッセージとなる何かが見えてくるのではないだろうか。そう思うようになりました。

手の美術館では、そんな、人生が刻まれた美しい手を持つ人を訪ね、その手を写真に収めると共に、その人生を称え、言葉と共に収蔵いたします。いずれ収蔵品がたまったら、紙の美術館として書籍化することも考えています。また、「この手を展示してほしい」というご要望も受け付けます。自薦他薦は問いません。

記念すべき最初の展示を、近日中に公開する予定です。その際にはぜひまた当館をご訪問ください。心よりお待ち申し上げます。

たかはしあきひろ…福島県郡山市生。ライター/グラフィックデザイナー。雑誌、新聞、WEBメディア等に寄稿。CDライナーノーツ執筆200以上。朝日新聞デジタル&M「私の一枚」担当。グラフィックデザイナーとしてはCDジャケット、ロゴ、企業パンフなどを手がける。マデニヤル(株)代表取締役