From the cradle to the grave

重低音が響く、渋滞で遅延している。停留所付近に一般車両が停車して、運転士がクラクションを鳴らした。確かに厳密には道交法違反だけれど、ここでは日常茶飯事。煩いという顔をして、ドライバーは急いで車を動かした。
このまま目的地に着かなければいいのに。

まだ着かないでくれ。
片道30分、車窓から眺める景色だけ見つめている。
実際にその地へ降り立つより、車窓から眺める方が魅力的なのは何故だろう。窓越しに見える車たち、人、家屋。日常が高速に流れている気がする。

ガラス越しに写る世界が好きだった。
エンジンで振動する車内が好きだった。
寝床より心地よくて寝てしまうのは何故だろう。着いてほしくないから寝るのだろうか。
このまま終着点を超えて、どこか連れて行って
そんな妄想を。

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