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PJS Season 1 Day 6 Round 12 1万字ガチ分析

こちらの記事で私のコメントが掲載されていますが、ベストシーンとして挙げさせてもらったRascal Jesterの最終ラウンドのムーブを解説できなかったのは宿題をやり残した感がありました。ちょうど、マップ配信の映像をDMMさんがわかりやすいように倍速でアップしてくださっています。コレを踏まえて今一度分析してみたいと思います。

ちなみに1万字を超えてしまっているので、お茶とお茶菓子なんかをご用意いただくといいかもしれませんね。すみません。はい。

そもそもムーブとはっていう話なんですが、他のFPS/TPSに存在しない、バトルロイヤルゲームにのみ存在する新しい概念です。直訳すれば皆さんもご存じの通り、『動き』『移動』という意味になります。戦闘における立ち回りとは別物です。意識して区別するために、ムーブという言葉を使います。

PUBGにおけるムーブは二種類存在します。個人的な分類なので諸説あります。

1. パルスから逃れるため = 受動的なムーブ
2. いいポジション、強いポジションを取るため = 能動的なムーブ

どれだけいいポジションを取っていたとしても、パルスの収縮という概念がある以上、いつかは移動させられてしまうのがPUBGの常です。パルスから逃れるだけのムーブであれば、誰でもやります。いつものことです。

しかし、競技シーンでドン勝をもぎ取るためには、いつ・いかに・どんなポジションを取る/奪うかを能動的に決めて動くことが重要です。素直な動きは容易に予測されてしまいます。お互いがお互いの状況をわかった上で撃ち合うとなれば、パルスに追われていない側の方が遮蔽をばっちり使えて有利です。

最終戦におけるRascal Jesterのムーブには、流れに任せた動きではなく、自分達が主体となって行った決断が多く見られました。能動的に動いた結果、それぞれのフェーズにおいて、最小のリスクでリターンを最大化することができていました。

キルを取ってドン勝しなければ100%降格。超絶望的状況下で、見事命を繋いだRascal Jesterのドン勝までの軌跡を今から追っていきたいと思います。

降下~第1フェーズ、航路は中心を北上するラインとなっています。この航路の特徴としては、航路直下のランドマークであるMilitary Base、Pochinki、Rozhok、Severnyへのアプローチがしやすいことでしょう。航路から外れたランドマークでファームを行うチームは、ファーム時間の確保と車両の確保が課題となります。

中心付近にはいくつか強いポジションがあります。強いポジションと言った場合は、だいたい以下のようなもの指します。

・車を守れる場所
・開けていて敵には近づかれにくく自分達は脱出しやすい場所
・高台などにあって広い範囲を視界に収められる場所
・道路付近で敵チームの動勢を探ったり、キルを狙える場所

本来であればマップのど真ん中のいいところを押さえることができれば、Phase2以降での主導権を握りやすくドン勝に大きく近づけたと言うことができます。しかし、今回のマップはマップは大きな山や丘陵、川などで分断されがちなErangelです。特に今回の安置ではど真ん中を川にぶった切られています。むしろ中心付近にポジショニングすると身動きが取りにくくなると言えるでしょう。また、中心付近にはRozhokを拠点にしているDGWが最も近いので最速でアプローチできます。一応、この安置の場合のDGWの初動はほぼ固定されています。しかし、コレまでの傾向や予測を100%信頼して動くのはハイリスクです。気分次第ではDGWがどこにいてもおかしくはありません。

中心を取るメリットがそこまで高くなく中心付近を最速で抑えられるチームが決まってしまっている。このような場合、中心から少し外れたポジションを取るチームが多くなります。

見てわかることしか言ってませんね。しかし、PUBGではこの(観戦視点であれば)見てわかることを、どれだけ自分たちの視点(プレイヤー視点)に落とし込めるかが重要です。わからないと自分たちのムーブにおける判断を補強できる材料が少なくなり、ふんわりとした動きにつながります。ふんわりとした動をすると死にます。

さて、Rascal Jesterの動きを追う前に、まずは彼らにとってこの航路がどうかというところからレビューしていきましょう。

ファーム地点までは少し距離がありますが、ほぼ文句ナシです。元々Novorepnoyeは車両の確保が非常にやりやすい場所です。高確率で車両が産まれるガレージがテリトリー内に3つもあります。マップの中心からは離れているために、他のチームによる侵略もほとんど発生せず、車を奪われる心配もありません。時間さえかければ4人分の車両が99.999%揃います。ファームの効率も良く、物資量も豊富です。なので、直接Sosnovka Islandの東側に降下できる時点で初動は100%成功していると言えます。

こういう航路とか困りますね
(Powerd by PUBG MAP

降下での事故がかなり少ないかわりに、Phase1以降でのErangel本島へのアプローチが最大の懸案事項です。パルスの配置に結構左右されます。思い切り北寄りであったり、ミリベ安置であれば心配はありません。今回のパルスはPhase1で北寄りなので、よっぽどRJを狙い撃った検問が敷かれない限り、特に問題なくムーブできます。

こういう安置とかですね、困りますね

それでは実際のPhase2直前のRascal Jesterのポジショニングを見てください。このようになりました。いい感じに中途半端なポジションを取れていますどうせ中心は取れません。しかし、どれだけ遠くからのアプローチであっても、内側の状況がわからないからといって、安置の端で停滞するのは好ましくありません。わからないのであれば、索敵を重ねつつできるだけ中心付近に近づいておかないと、Phase2以降でのムーブで不利を背負うことになります。

しかし、近づきすぎても良くありません。先ほど述べたように、ど真ん中は空洞化しています。各チームが、川に対してどうアプローチするか考えている時間です。RJもこの傾向はある程度把握しているでしょう。ど真ん中を取る価値が薄く、そもそも取れないのであれば最速で安置に向かう必要もないので、このフェーズではしっかりとファームを行ったあとゆっくり目のムーブを行っています。他のほとんどのチームがポジショニングを終えたあとで、十分な物資を蓄えて難なく安置内でに入ることに成功します。ここではドラマはありません。

最初のRJの取った集落がこちらです。遮蔽が多いので車を守りやすく、平地なので移動時にスピードを出しやすいポジションです。山に遮られているのでPochinki側の情報は得られませんが、Gatka方面に対しては視界が通ります。

Pochinkiについては見なくてもある程度確度のある推測が可能です。今回の安置の中心はPochinkiよりも北側にあります。街を取る場合、安置の中心に近い方を取っておかないと情報量、動き出しのスピードで不利になります。不測の場合を除いて、南側にポジショニングするチームはほぼいないと言えます。

各チームは次のPhase2でいかに次の中心のポジションに対してアプローチするかを考えているタイミングです。同様に、RJも中心に近い場所を丹念に索敵します。青色で囲ったあたりです。その結果、他のチームが不在であることが十分に把握できました。

見えている情報と予測を元に、この時点で二通りの確実性の高いムーブをプランニングすることができます。

安置が南に張り付いた場合 = Pochinki南側~Pochinki山を取る
安置がRJから見て北に寄った場合 = 見えてるGatkaの集落に行って次を考える

北に安置が張り付いた場合は考えようがありません。そのときはそのとき。ファイトしてポジションを奪うか、空いているところを探して入るの二つに一つです。

このラウンドのPhase2、安置は中心側の西に寄りました。ここでRJは最速で移動を開始し、見えていたGatka付近の建物へのポジショニングに成功します。自分たちの周辺の情報を把握できていたこと、いい感じに中途半端なポジションを抑えられているので移動できるだけのスペースが確保できていたことが大きな要因となりました。

Phase2のポジションはこのあたり

最速で配置に着ければ、最速で攻撃を始めることができます。まだ車は残したいフェーズですし、この辺りには停滞できるポジションがほかにありません。後からやってきた他のチームは、RJの周辺を避けて別の場所を探さなくてはならなくなりました。

この瞬間、脳にいいので是非動画で見てください。見事に盤面をコントロールできています。PUBGで勝つためには、敵チームを動かして不幸にしてやるということも重要だということがよくわかります。実際、RJとファイトできなかった各チームはどんどん不幸になってしまいました。

そしてPhase3

ここでも細かいですが、重要な決断とムーブがありました。他のチームはRJを迂回しようとして激戦区に飛び込む形になりましたが、HVは安置端でステイしてRJに対して攻撃を加え、本格的な戦闘のチャンスをうかがっていました。しかし、RJは安置が決まった時点で戦闘をやめ、すぐ近くの安置内側の集落へ移動します。この時点でHVは選択肢を絞られてしまいます。

1. RJが取っていた集落に入り込んでさらにRJとの戦闘を継続する
2. 迂回して別のポジションを探す

このふたつのうち、HVは後者を選択します。正しい選択をしました。なぜなら、戦闘の継続を選んだ場合は、RJに大きなアドバンテージがあるからです。RJ側は一人だけを後ろの集落に残して奇襲させたりもできるので、HVがファイトしたいと考えたとき、安置から外れた集落をわざわざクリアリングしてからでなければ安心して戦うことができません。時間の無駄は焦りを生み、致命的な結果につながりかねません。次のポジションが見えている、次のポジションに敵を入らせていないことのメリットの大きさが如実に出ました。

さて、次がRascal Jesterのドン勝を本当に決定づけたポイントです。

Phase4

RJはまたもや安置から外れてしまいます。が、これは当たり前です。ど真ん中にいなければ、安置に入り続ける期待値よりも、外れる期待値の方が高くなります。この瞬間、RJは今までの安定したスキのないムーブから大きく方針転換、安置の決定からたった20秒で直接戦闘を敢行し安置内のポジションを奪い取りますそして、これが最善で最高の一手でした。

まずはこのフェーズにおける盤面を検討してみましょう。便宜上RJから見て手前、南側の集落を「集落A」、北側の集落を「集落B」と呼びます。このフェーズですと、RJから見て取りたいポジションはこの二つのどちらかになるかと思います。他のポジションについては中心から外れているか、すでにほかのチームがポジショニングしています。

競技シーンにおいて、安置内の人口密集度はPhase4~Phase5にかけては跳ね上がります。その後は潰し合いレベルの戦闘がおこるので、人口が減ります。このタイミングで、有利な状況を作れるチームがドン勝に最も近づけるといえるでしょう。ここが勝負どころです。いいポジションを抑えられれば高順位が期待できますし、逆に不利なポジションに着いてしまえば、1桁順位を拝むこともままなりません。

特に、平原でのステイは敗北主義者的選択です。敵がいないことは見ていたのでわかっています。移動距離も少なく済みます。しかし、遮蔽がありません。せっかく今まで残していた車が破壊される危険性が非常に高く、その先のフェーズで安置が外れれば、もはや未来はありません。

Phase4の安置とRJから見える範囲

まずRJはこの時点で南側の広い範囲を視認できるアドバンテージを得ていました。特に、事前の段階で他チームとの同居を完全に拒否できているということも、落ち着いて索敵できる要因となっています。そんな中で、集落Aの状況はバッチリ認識できていました。事前の段階で、SeakingJaws選手がIABのNelphs選手をダウンさせ、PNGのHek7or選手にキルスティールされているので、2チームが同居していたという情報を得ています。

見たぞ

しかし、RJはここで致命的な誤認をしてしまいました。その後の戦闘で実はIABは残り一人になってしまうのですが、ここでRJはほかの場所の索敵に集中していたために「1人しか残っていない」という確定的な情報には気づけていません。PNGもIABも複数人残っている、という誤認が存在しています。(※個人視点配信で確認しました。リアルタイムで見ていた時は、RJは状況を完全にわかった上で確実に行けるところに行ったのだと思っていました)

基本的に、他のチームとファイトをしに行く、同居するという選択はリスキーです。ましてや複数チームが同居している(という認識がある)ならなおさらです。しかし、RJの視点でも周囲の状況を総括すると集落Aにファイトを仕掛けに行くことが最善の選択でした。

では何故北側の集落Bという選択は除外されたのでしょうか。すでにポジションを取っているチームがいる、ということは見なくてもわかります。誰だって建物は取りたい、当たり前です。間違いなく戦闘になるでしょう。しかし、1対1の戦いであればRJも勝てるだけのポテンシャルは持っています。問題はその後です。他のチームの動きを、全体の動きを考えなければなりません。盤面を見てください。

安置はどんどん南西に流れてきている

安置から外れたチームにとってのムーブは、自分たちから見えている近い場所に最速で移動するのがやはり安牌です。今までのRJもそのように動いています。移動距離が長くなればなるほどリスクが高まるからです。戦闘をするにしても、長い距離を移動して人数が削られた状態で行うよりは、目の前に今の最大戦力を割いた方が勝機を掴めます。

なので、西に寄れば東がポジションの奪い合いで厚くなります。特に最終フェーズに近づけば近づくほど、残っている車両が少なく、チーム間の距離も近くなっているので、一度足が止まってしまうとポジションを転換するのは難しくなります。足が止まったチームが他のチームの足をとめ、層がどんどん分厚く積み重なっていきます。スノーボール状態です。もちろん、そういう傾向があるというだけで、いつでもイレギュラーが起こる可能性はありますから、100%信頼できるというわけではありません。

しかし、RJには南側が広く見えているという事実がありました。視界内にはほとんど敵チームがいません。見えていないチームがどこにいるのか? 答えは、「見えていないところにいる」です。消去法ですね。それもかなりのチームが残っています。なので「北側が激戦になるな」という確信につながります。わざわざ激戦区になる場所に、平和な南側から突っ込みにいく必要はありません。基本的に、激戦区にはいない方が順位の上がる確率が上がります。いくら有利なポジションを取って一方的に殴れるとしても、敵と交戦するのはそれだけでリスクです。

北側の集落BはHVが抑えていましたが、この後CGXが突っ込んできて奪い取られてしまいますし、CGXも結局はnGRの同居を許してしまい最終収縮で上手く立ち回ることができずドン勝を逃す結果となりました。

平原はNO北側もNO目の前にある建物は複数チームが同居している(※と思い込んでいる)といった状況で、RJは最速で目の前の建物にファイトを仕掛けにいきます。そう、そこしかないんです。敵が同居していても取る価値がある……むしろ、同居しているからこそ簡単に奪い取れるという判断でした。地形も重要なんです。

こちらの画像をご覧ください

実際には下側の建物にIABの選手が一人しかいなかったため、RJは建物を難なく奪い取ることに成功します。今から大事な話をするので、事実は少し忘れてください。

RJの視点に基づいて話をするならば、この3つの建物に2チームが同居している状況です。確定情報として持っているのは、キルログで認識できている下側の建物のチームの人数が「1人少ない」ということのみでした。4人から1人減ったのか、3人から1人減ったのかということもわかりません。なので最大3人の敵に対して、こちらから攻めていかなくてはなりません。が、この時点で既に勝算が大いにありました。人数差ですね。

4対3という人数差は非常大きいです。有名なランチェスターの二次法則(詳しくはググってください)によれば、銃を用いた近代的な戦闘においては、『戦力は兵員数の2乗に等しくなる』と定義されています。お互い武器や実力も同等であると仮定した場合に限りますが、戦力比を数字にすると、16:9と大差です。ちなみに損耗率もわかります。勝利側の生存人数が√(4^2-3^2)で導き出せるんですね。

Google電卓ほんま優秀

つまり4人の側は2人は確実に生存できて、あと1人が体力6割で生存できます。現実なら6割分削られると生死をさまようことになるので戦力からは外れますが、ゲームなので回復できますね。身も蓋もない。3人の側は全滅です。慈悲はありません。ちなみにPUBGは気絶の概念があるので、1人でも生きてればみんな助けられますね。はい強い。

しかし、戦力比を語る場合はお互いの条件が対等である必要があります。今回はTPPで、相手は待ち構える側です。人数有利を覆せるだけの地形的有利が、本来であれば相手にありました。これやれんのか? っていう話です。

大丈夫です。安心してください。先ほどの画像の地形をもう一度ご覧ください。

見えてきましたね?

緑色の矢印はRJの侵攻ラインです。そして青く塗った部分は、守る側が使えたら強い場所です。しかし、実際は(※このときのRJの視点だと)赤線の向こうの家にも敵がいます。なので、手前のチームは展開することができません待ち構える側が強いのは、展開して一方的に攻撃できる場合のみです。このタイプの平屋は窓から通せる射線が限定的なので、RJがこの進路で突っ込んできた場合、満足に射撃も加えられません。

悪魔的板張り!

この地形と、条件を活かして、RJは正面からの殴り合いを挑みます。前述の通り、対等な条件で戦えば人数が1人でも多い方が圧倒的に有利です。手前を処してから、奥側のチームに対してはその後時間を使って対処することが可能です。もちろん、素早く反応されて漁夫りにこられる危険性もありますが、総合順位的に平原でステイしてちょっと順位を伸ばすだけではどうにもならない局面です。ここは個人技と、チームの力に頼って、最大のリターンを得られる場所を奪うために戦うしかない局面でした。

そしてその戦い方が素晴らしかった。戦う決断をしたところもすごかった。ありがとうございます。で、現実の話に戻りますと、2チーム同士でがっつり潰し合っていて、IABは1人しか残っていなかったので楽にこのポジションを奪いとれました。よかったですね。

しかし、この事実誤認が元でRJは最大のピンチを迎えることとなります。

奥側の家に敵がいると決め込んで、対応を保留にしていたため、PGRが住処を求めて迷い込んできてしまいます。PUBGにおいて一番嫌なシチュエーション、これが同居ですね。お互い足を引っ張り合う、バトルロイヤルではないただのチキンレースが始まってしまいます。

要は、「徒歩ですぐに戦いに行ける距離に敵がいる状態」を同居だと考えてください。同居していると、まず展開ができないので情報面での不利を背負うことになります。逆に、全てのチームは敵同士なので、敵の攻撃を受け止め殲滅してくれるといった恩恵を受けることもたまにはあります。先ほどのRJのムーブも、こういった要素を逆に活かして、同居の恩恵を受ける形での攻撃を行っていました。

他にも同居しているチームは複数あります。東の方ZooBBcPNFAGAのポジションに注目してください。手前のPhaseで同居状態になってから、実は長いこと動いていません。

同居状態が生まれた場合の対処は困難を極めます。お互いの人数差がない場合、どう動いてもリスクがあります。人数差があったとしても、何が起こるかわからないので手出しをしにくい側面があります。しかし、対応にあぐねている間に安置が遠のけばもう最悪です。相手が生存よりキルを優先してきたら、パルスの外から背中を撃たれるなんてケースもあります。なので、基本的には同居は安置から外れる前に解消する必要があります

確実なのは人数有利を作ることです。グレネードKarの一発など、チャンスを作れるものをキメられれば、やはり仕掛ける転機となります。もう一つの選択は、離れることです。別のポジションへ。ただ、同居状態では満足な索敵もできないので移動先を見つけるのも一苦労、車の音を聞かれてしまえば無防備な状況で後ろから攻撃を受ける可能性もあります。

今回、RJはPGRは侵入してきた時点で初めて奥側の建物が開いていたということに気づきます。敵がいると思っており、フェイスチェックを行っていなかったためです(´・ω・`)

ただ、その後のリカバリーはナイスでした。安置のど真ん中であれば同居をしていてもまだ可能性はあります。しかし、まだ安置から外れる可能性があるフェーズで、同居を長引かせてしまうとドン勝は遠のきます。

ここで、RJはPGRの射撃音があまり頻繁ではないことから、「人数差があるかもしれない」という情報を得ました(その瞬間のクリップ)。相手のアクティブさも重要な情報の一つです。人数が多ければ当然発砲の回数は多くなります。逆は逆です。

5:09 PGRの侵入
5:18 PGRがAGHに対して散発的に射撃
5:47 RJが攻撃開始

そこで、互いが安置に入っている状況で先手を打ちます。安置から外れた場合や、収縮が始まってしまっている場合、余裕がなくなってしまいます。ベストなタイミングでした。

まずは、ファーストキルを狙いに、ありったけのグレネードで猛攻を仕掛けます。PGRにとっては一番嫌なタイミングでの攻勢です。2対4では満足に戦うこともできません。しかし、RJのグレネードラッシュを、PGRは一旦はなんとかしのぎます。

そして、RJ側は山側からの射線もあり一度攻撃をあきらめます。そう、あきらめる判断ができるだけの猶予があるのも、早めに仕掛けるメリットですね。安置外の攻防では殺るか殺られるかのふたつにひとつしかありません。

人数差もあり、パルスにも余裕があり、能動的に動けるRJは落ち着いてPGRの殲滅を狙います。対するPGRはスモークを炊いて乱戦に持ち込もうとします。が、これが逆に仇となりました。「相手チームは人数が少なく満足に戦えない」という確信をRJ側が得る形となったのです。スモークの中で耐えているという読みでまたグレネードによる攻勢、そこでファーストキルを獲得したのがRJです。人数差は4対1となります。その後RJは、自分たちの周囲を完全にクリアすることに成功し、次のムーブに対してじっくりとプランを練るだけの猶予ができました。

そして終盤

元々いた集落には3チーム分の車が残っていました。しかも、赤く囲ったエリアの状況は既に見えています。これより北側は車線も視界も通らないので、RJにとって考慮するべきはいかにこの南側の斜面を抑えるかのみです。元々一番近かったのはDGBですが、彼らはSZやROXと戦闘を行っている最中でした。次の安置が決まった瞬間、RJは動き始めます。

最速で安置に入ってきて展開したRJに対して、安置外のDGWは中に入ってポジショニングしなくてはなりませんでした。安置の外で展開したとしても、遅かれ早かれパルスに焼かれてしまうからです。

RJの展開速度がこここでは圧倒的でした。故に、DGBは上手く展開できず、RJの全容を把握できないまま殲滅されてしまいました。安置の近くにいればいいわけではなく、いかにエエ感じにアプローチできるかが重要だということがよくわかる流れでした。

最終安置周辺の地形はこんな感じ

赤いラインの内側が、他の場所からの射線を切れるエリアです。

Phase7の各チームのポジショニング

実際の各チームの配置も、地形に沿ったものとなります。どれだけ実力のある選手であっても、遮蔽のない場所では生存できませんPUBGの基本原則です。自分達と肩を並べるチームを殲滅し、生存域を確保して初めて次のことを考えることができます。

物事は単純化した方が考えやすくなります。終盤では地形を大きくエリアごとに区切ることで、「生存人数が~」「生存チームが~」と細かいことを気にする必要がなくなります。パルスに飲まれた場所にいるプレイヤーは例外なく死にます。なので、いかに安置の中でエリアを確保するのかということが終盤では重要になってきます。自分たちは安置内を取り、ほかのチームに安置外を押し付ける陣取り合戦です。

実はこのフェーズを迎えて、RJはかなりの有利を獲得できていました。南側のエリアは斜面になっていて、車も残せていたので、全方向からの射線を切りながら自由に動き回れる状況です。逆に、北側のSSSとV3F徒歩移動です。そして、安置の一番近いところに使える遮蔽は、木と岩しか残っていません。

北側の2チームにとっては、チャレンジが必要なフェーズとなりました。道路を渡るという選択はあり得ません。全チームから蜂の巣にされてしまいます。なので、SSSも、V3Fも限られた生存可能なエリアを巡って潰し合いをすることになります。

盤面が良く、落ちついて状況を把握できていたRJは、ここで北側で戦闘が起こっていることに気づきます。そして痛烈な攻撃を加え、SSSをほぼ壊滅まで追い込みました。

そして最後の最後、安置の寄り方はRJに対していい形となりました。そもそも、事前の段階でかなりいい形で盤面を作れているので、よっぽどのことがなければ自力でドン勝ができるという局面でした。よっぽどの安置というのは、以下のような場合です。

こういう寄り方をした場合は、nGRも3人残っていて元気ですし、CGXも動く必要がないので、『CGX→nGR』と連続で2チームを相手にしなくてはなりません。また北側にはSSSとV3Fが1名ずつ残っていてイレギュラーとなっています。

逆に北側に張り付いた場合なんかは、ある程度状況が見えていますし、車を残せています。同居しているnGRとCGXを残して速攻でポジショニングできれば、全然チャンスがあるといった局面でした。事前にSSSの人数を削れていたのも大きいです。

実際の収縮はこう

実はかなりいい感じでした。なぜなら、nGRの取っていた建物が完全に外れているからです。CGXとnGRが潰しあうのは必至、その隙にRJは家に張り付き遮蔽を確保することができます。

ここでRJはkendesu選手をしんがりとして残し、しっかりとSSSの動向を見張ります。そしてスモークを炊きながらそのまま安置内へ、平屋の南側へと張り付くことに成功します。SSSもV3Fも、nGRとCGXが戦闘を始めたのを見て移動を開始します。このタイミングしかありません。が、しっかりと見張られていたため、的確に処理されてしまいました。

CGXとnGRが戦闘を長引かせている間に、RJは残っている車などを活かして素早く展開します。

完璧な展開

建物は安置に入っていれば強いですが、外れたあとは出てくる場所を把握されやすいのが難点です。

見るべき場所は決まり切っています。Rascal Jesterはこの局面を的確に押さえ、見事ドン勝、ギリギリのポイント差でPJS Grade 1残留を決めました。

終盤の組み立てもぜひ動画で確認してみてください

総括すると、自分たちの力の及ぶ範囲で、できることを上手くやり切ったという印象があります。取りたいポジションを取る、取らせたくないポジションは取らせない、倒すべき敵は倒す。しっかりとした理由のある行動を、一つ一つ積み重ねた結果が今回のドン勝だと思います。PUBGにおいて、これさえできれば勝てる魔法の一手というものはは存在しません。それだけに、土壇場の状況でドン勝をもぎ取る胆力はさすがといえるでしょう。グッときました。

以上です。長らくお付き合いいただきありがとうございました。

PUBG Winter Invitational 2018 ベルサール東京日本橋 12/16日もよろしく。

【参考】
PJSseason1が終わって  Analyst:abara
Rascal Jester Team Profile(PJS公式)
PJSseason1 Phase2 Grade1 Day6 - YouTube

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