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フマジメの種

正しいこととか、素敵なことが世界にはたくさん溢れていて。
それを見つけて「いいなぁ」と嘆息することもたくさんあるのですが、
根がどこか真面目一辺倒になりきれない、フマジメなわたくしは、
真剣だったり真面目な場面の中に、間違ったように登場してきてしまった
ちょっとした「あひゃひゃ」の方に、どうしても目が行ってしまいます。

例えば、以前、世界の不思議と素敵さについて書いたnoteで紹介した
ドイツ人の研究者のこともそうです。彼からの話を聞いている時、
話に耳を傾けながらも、私の視線はどこにあるかというと、彼の鼻元に。
だって立派な形の鼻の穴から、ひょろり〜♪と爽やかに鼻毛が出てまして。
それを本人は特に気にしていなそうだから、却って観察もしやすいという
ものだ。でも、彼の鼻毛さんは彼の髪の色と同系色の亜麻色だったので、
「へ〜、この色だとあんまり不潔感ないのね〜。なるほど〜」と思った
次第。もちろん、「鼻毛出てるよ」などという無粋な指摘はしない。

N○Kで、(私の大好きな、時々ぶっ飛んでいることもある○テレの方では
なく、マジメ度がより濃い方のチャンネル)随分前に、高齢化社会を取り
扱った番組(多分)をやっていて。都市部でもそれはもちろん問題なのだが、地方に行くとそれはより深刻味を増す、と。さらに寒い地方で豪雪地帯
だったりするとそれはもう大変で……。という感じの流れだったように記憶
していますが、いかんせん「フマジメの種」をどうしても見つけちゃう私は
その番組の内容自体は、最終的に実はあまり覚えていないのです。

ある地域がその年も何メートルにもなる雪に覆われ、高齢者ばかりとなった
その場所では雪かきの人手もままならない。周囲を白い雪で覆われ、少々
腰の曲がったおばあさんが自分の背丈の3倍くらいはありそうな雪の壁の
間をよちよちと歩いて外に出てきて、○○Kのインタビューの人に答える。
「春になって溶けるまで、雪はこのままですねぇ。地域の除雪車が1日に
数回は来てくれますが、自分の家の屋根などの雪かきまではとてもとても」
みたいに語っている。「ふむふむ、そうか、こんなすごい雪じゃあ大変だ」
珍しく真面目に見ていた私だが、でもだめですね。見つけちゃうんです、
こんな時でも。

そのおばあさんは、頭を手ぬぐいで包んでいて。いかにも地方のおばあさま
という風情を醸し出している(別にその為にしている訳じゃあるまいが)。

「ははぁ、手ぬぐいね。髪の毛をまとめるのになかなか便利なのかしらね」
(見つめるわたくし)ふと、その手ぬぐいの模様が気になってくる。
「あれ?何の模様かな?何やら文字が書いてあるみたいだけど……」
(じーーっと見つめるわたくし。もはやインタビューの内容は頭に入って
こない)多分、そのおばあさんは向きとか表裏とかそんなのどうでも
よくて、身近にあったのを自然に手にとって、そのまま髪の毛をまとめた
のでしょうね。うらっ返しになった文字が彼女の前頭部で踊っているのが、確かに読めました。

【闘魂】 

と。手ぬぐいの薄さ、恐るべし。

さて、話はガラリと変わりまして。朝の通勤ラッシュ、大変ですね。皆さんも「みんなもっと早く家を出ようよ」とか「毎日毎日飽きもせずこんなに
混んでいる電車に乗っているだなんて、好きなんだとしか思えないわ」とか
思うことがあると思います。自分のことは棚に上げて、私自身も「うひー」となりながら、そんなことをぼんやり考えてしまうことがあります。しかし
フマジメな人間(私のことです)の前にはフマジメな種がどうしたって
転がってきちゃうのであります。

それは、いつものように電車が凄く混んでいた朝のこと。最近とみに増えて
きた外国からのお客さんが、大きなスーツケースを携えて待っているのを
ホームに滑り込む電車の窓から前もって目撃したりすると「うわー、あの
サイズの持って乗りますか。この凄まじい混み混みの中へ!」と若干の恐怖
すら感じる私なのでありますが。その日、ホームで待っていた外国人の家族連れは、珍しく(?)それぞれの背中にそれぞれ1人分の荷物だけが入って
いるような小さめのリュックのみを背負っていて。でも、父さん・母さんは
まだいいとして、子供は5、6歳くらいでしょうかね。だいぶ小さくて、
「このラッシュの中、潰されちゃわないだろうか」と少々心配したくらい
でした。

でも、ややぽっちゃり気味で(恰幅がいいともいう)優しそうな
父さんと、キリッとした表情で素敵な母さんも、それはちゃんと分かって
いるようで。子供(なんとなく顔立ちとお腹のふっくら具合が「トニー」
ぽかったため勝手にトニー君と呼ぶ
)を間に守りつつ、ビジネスマンや
ビジネスウーマン、学生の間にちょっとずつ体を入れていって乗り込んで
きます。父さんはオレンジ色のTシャツを着ていて「うわー、なんだこの
混んでる電車!」みたいな、やや引き気味の表情。トニー君(仮)は
「電車だ電車だ」くらいで、あまり混み具合には関心を払っていません。
やはり、一番「我が子を守らねば!」という表情と動きなのが、母さんで。
「ふむふむなるほど。母さんかっこいいね」と思いながら、ふと目に
入ってきちゃったのが、母さんの着ているTシャツでした。胸の所に大きく

LEADER

て。そりゃそうか、凛々しくもなるか。
しかもキラッキラのスワロフスキー的な何かで文字が描かれておる。
父さんではなくて、母さんのTシャツにこの文字。がんばれ、父さん……。

シーーーーンと静かな車内で、殆どの方がスマホとにらめっこしている中、
必死でこらえて唇を1人ぐっと噛み締めていた、わたくし。


またまた、○H○(これは○テレの方だったかな)の話。
いじめの問題について、海外ではどのように対策をとっているか、という
事例を紹介していた番組だったと思います。見ていた時に写っていたのは、
カナダかどこかの小学校だったでしょうか。教室の床にクラスの生徒が
車座になって座り、先生が考えたロールプレイに参加するみたいなもの
だったような。(すみません、やはり大事な本編の方はどうしても疎かに
なりがち。記憶の定着が)

「床に直接座って授業するだなんて、外国っぽい〜」
(この時点で既に注目すべきポイントがアホ)とか
「この形式でやったほうが、意見は出しやすいのかな〜。でもみんなの
顔が見えるから、逆に無難な意見しか出ないんじゃ?」みたいに
私にしては少々真面目な視点も持ちながら見ていました。

気が散りがちな私は、次にそのロールプレイに参加しているちびっ子たちの
表情や様子を1人ずつ観察します。話に集中してなさそうな男子(シンパシーを感じるぞ)、「私、ちゃんと先生の話聞いて、理解してます!」みたいな
優等生っぽい女子など、国が変わっても色々なちびっ子がいるのはどこも
共通なんだなと変なところで感心していると、いましたいました。

少しぽっちゃりしている(私はぽっちゃりさんが割と好きなので、どうしても目が行ってしまいがち)黒いTシャツに黒いパンツの女子が。
彼女は、柔らかそうな髪を肩より少し長めに伸ばしていて、その髪は緩く
波打っています。背も割と大きめだからか、車座の外側の輪にいて、足を
投げ出し気味で若干面倒くさそうに座っていました。でもどちらかというと
大人しめな印象で、余りクラスの中では発言しなそうなタイプに見受けられ
ました。そんな彼女の黒いTシャツの胸にも、白抜きで文字が。

Protest the Hero

ですって。ヒエーーーー、この授業の内容を事前に知らされて、
何か意思表示したくてこのTシャツを選んだの?そんなことを心配しつつ、
調べてみたら、そういう名前のバンドが北米にいるそうですね。ホッ。
でも、プログレッシブメタルバンド……。

こうして、目の前に提示された「フマジメの種」をキャッチしてしまう
アンテナばかりが今日も磨かれていくのです。嗚呼。

もしサポート頂けたら、ユニークな人々と出会うべくあちこち出歩きます。そうしてまたnoteでご紹介します。