東大で人気沸騰!産学官エリートが共に学ぶ「究極の金融講座」のスゴイ中身!これは、やばい!

昨年の春、東京大学に入学したばかりの新入生、医学部の学生、大学院生、さらには審議官クラスの官僚、上場企業の幹部らが机を並べ、1年間、共に「金融」を学ぶ──そんな前代未聞のワークショップが始まった。

そんな、ニュースを見たときに衝撃を受けたのを良く覚えている。

教壇に立つのは、数理脳科学の世界的権威でAI研究のレジェンドといわれる甘利俊一氏、気鋭の若手経済学者・安田洋祐氏、内閣府金融担当副大臣を務める越智隆雄氏、さらには大ヒット経済小説『ハゲタカ』で知られる作家の真山仁氏など、豪華かつ多彩な顔ぶれ。

開講した「近未来金融システム創造プログラム」(東京大学金融教育研究センター・株式会社Finatext共催)は、初年度は参加費無料ということもあり応募者が殺到。抽選で選ばれた100名が、月2回、本郷キャンパスに集った。

東大が実施するリーダー養成プログラムとしては「東京大学エグゼクティブ・マネジメント・プログラム(EMP)」があるが、このプログラムはその金融版を目指しているとのこと。プログラム責任者の赤井厚雄氏が、創設の狙いを明かしていた。

なぜいま「金融」を学ぶべきなのか?

世は第4次ベンチャーブームを迎えています。

2016年のベンチャー企業の資金調達額は2000億円に迫り、直近のボトムであった2012年の約3倍、リーマンショック前のピークを上回る水準と言われている。

そのなかでも金融分野のテクノロジーで、AI(人工知能)や機械学習、ビッグデータ解析、ブロックチェーンなど、これまでの金融のあり方を根本から変える可能性のある技術をビジネス化するFinTech(フィンテック)領域が、大きな注目を浴びている。

米大手銀ウェールズ・ファーゴの成功を手本に、大手金融機関が囲い込みの意図も抱きつつ企画するビジネスコンテスト等には、それらのフィンテックベンチャー事業者よりも多くの投資家・大手金融機関担当者が集まることが常となり、ブームに悪ノリし、にわかにフィンテックを名乗り始める似非フィンテック企業も少なくい。

ことほど左様に、フィンテックベンチャーの世界は玉石混交である。資金提供を担うベンチャーキャピタル(VC)のサイドも、何がフィンテックで、何が従来型金融周辺企業なのか、見極めできていないように見える。

その混沌から何かが生まれるという楽天的な見方もあります。しかし「一時のブームが去って、訳も分からず損をした」という機関投資家が出てくれば、「フィンテック悪者論」が日本の金融市場を席巻しかねないという懸念がある。

かつてデリバティブ(金融派生商品)や証券化商品への投資、不動産投資でそうであったように、この分野で、いつか来た道をたどりかねないということ。

その結果は、フィンテックという革命的変化によって大きな変貌を遂げるであろう近未来の国際市場間の競争のなかで、わが国の取り組みが停滞し、その存在が埋没することに繋がる。

日米の金融業界の第一線で活躍してきた赤井厚雄氏がプログラムを統括していた。
フィンテックとこれまでの金融工学とはどこが違うのでしょう?

ひとことで言えば、「国境を越えて人々の行動を変える、一種のパラダイム転換を導く技術要素がそこにあるかどうか」ということではないか。これまでの「金融取引がちょっと便利になる」といったものとは根本的に違うといえる。

これまで取り扱いが不可能であったビッグデータを加工してさまざまな金融取引で活用する技術や、情報の集積のあり方を根本から変えるブロックチェーンなどの取り組みは人々の行動を変え、たとえば銀行という業態や不動産の登記制度などを過去のものとする可能性がある。

それらは、紙や自動車や飛行機、あるいはデリバティブの発明に匹敵する文明の転機を導くことになるのかもしれない。

だからこそ、世界の投資家がそれらのシーズを探し出し、手中にしようと躍起になっている。ただし、それらは社会の仕組み自体を変える可能性があるゆえに、まだまだ未完成であり、ハードサイエンスと(金融)実務の格闘のなかで、磨き上げる余地が大いにある分野でもある。

実は、そのハードサイエンスの分野で日本が国際的に比較優位を有することは、2000年以降のノーベル賞受賞者が16人に達することからも明らか。

他方、金融や不動産業のビジネスモデルでは、わが国の立ち遅れは目を覆うばかり。そして近時の金融危機後は、この分野での米国などとの差が開く一方となっている。

この際、フィンテックをまやかしにしかねない既存金融産業の視点にはとらわれない、サイエンス主導のフィンテック革命を導く仕掛けを作ることが、この国の活路を切り開くことになるのではないか。

日本は金融分野において世界的に遅れをとっている

振り返ってみれば、資本主義経済の血流というべき「お金」を経済システムのなかで循環させる役割を担う金融は、グローバル化を伴いながら拡大し、実体経済を支える「脇役」から、本来の主役(実体経済)を超えてその行方を左右しうる巨大な存在となり、幾多のバブルとその崩壊、その帰結としての経済危機、それを追いかける規制の強化というサイクルを乗り越えて、常にそこに存在している。

金融は常に時代の最先端の頭脳を魅了し、最先端のテクノロジーを取り込んできた。米ソ冷戦の終結に伴い、いわゆる「ロケットサイエンティスト」が大挙してウォール街に進出したことにより金融工学が発展し、デリバティブや証券化商品市場が急拡大した。

そして近年ではフィンテックが世界的潮流となるなか、金融はさまざまな技術革新の成果を取り込み、人々の暮らしに深く浸透しながら巨大化し、複雑化し、人類にとっていわば天使と悪魔の両方の顔を見せつつある。

それを学ぶことは、これからの日本人にとっても、国と個人のサバイバル戦略の観点からも、大切なこと。

そのためには、過去から現在にいたる「金融の俯瞰図」を手に入れ、遠い将来でなく「近未来」の金融市場・金融システムを形づくらなければならない。

それを支えるであろう最先端のサイエンスと応用分野のテクノロジーを知り、それらを使いこなし、人々の暮らしに役立てるためのルールである規制やベストプラクティスなどに取り組み、さらにはそこに横たわる諸課題について各分野を代表する科学者・実務家とともに対話する──こうしたことを通じ、これからの金融システムを創造し主導していく次世代の人材を養成することを狙いとして、「近未来金融システム創造プログラム」が設計されているとのこと。

本郷キャンパスの情報学環・ダイワユビキタス学術研究館が学びの場となる

プログラムの舞台となるのは、東京大学。

理学・工学の分野において世界的に高い評価を得ている同大学が、学びの場として最もふさわしいと考えている。

講師には、各分野でその最先端を開拓し、現実にディールをドライブしている、日本を代表する研究者・開発者・実務家を起用し、それぞれの分野における「知の格闘」の空気に触れる機会を提供するとともに、講師・受講者相互、または受講者間のネットワーク形成にも資する仕掛けを用意している。それは、フィンテック分野における生態系(エコシステム)の形成を後押ししようという試みでもある。

また、このプログラムに参加する価値の一つに、今の金融フィンテックを理解するために役立つ「読むべき本」のリストが手に入るというものがある。

全15回のプログラムの各回ごとに、それぞれの講師が提案する、事前に読むべき「必読図書」と、新たな分野を開拓する講師自身が今読んでいる本ともいえる「推薦図書」が示される。とくに後者は、それぞれの講師が、現在進行形で今何を考えているか、何に関心を抱いているかを知る手掛かりになる材料と位置付けている。

「金融版の東大EMP」ともいえるこのプログラムは、日本の金融リテラシー向上やフィンテックの将来に一石を投じるものとなるのではないだろうか。

今年度の開催は、まだ決まっていないようだが、開催するのであれば是非とも参加したい内容である。

皆さんも、日本ひいては金融の未来を考える世界を体験してみてはいかがだろうか。

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