『古畑任三郎』の新作ストーリーを考えてみた

 三谷幸喜氏が脚本を手がけたテレビドラマ『古畑任三郎』(以下『古畑』とする)をご存知だろうか。
 分からない方のために内容を簡単に説明すると、完全犯罪を目論む犯人たちのトリックやアリバイを、警視庁捜査一課の警部補・古畑が持ち前のトーク力と推理力で次々と見破り、犯人を追い詰めていく刑事ドラマである。

 このドラマの大きな特徴は、「倒叙もの」と呼ばれる手法を用いていることだろう。
 倒叙ものとは、犯人が誰なのか、どのような手口で犯行に及んだのかを視聴者にあらかじめ見せておく手法であり、「誰が犯人なのか」ではなく「何をヒントに犯人を特定できたのか」という点に重きを置くことができる。
 それゆえ、各回の犯人役には超大物俳優や人気タレントをキャスティングすることができた。
 代表的な例でいくと、笑福亭鶴瓶、明石家さんま、唐沢寿明、福山雅治などが犯人として出演しているほか、本人+犯人役でSMAPとイチローが出演を果たしている。

 俺がこのドラマに出会ったきっかけは高1の数学の授業で、背理法を学習したことだった。
 当時の俺からするとちんぷんかんぷんだったが、改めて調べてみると「命題の内容が間違っていると仮定して証明を進めていき、どこかで矛盾が生じたら結局その命題は正しい」という証明方法なんだそうだ。
 この背理法について先生が解説する中で、例として挙げたのが『古畑』だった。
 その日の授業をきっかけに、それまでタイトル程度しか知らなかった『古畑』がどのようなドラマなのかを知り、興味を持った。試しに見てみようと思って視聴を始めると、気が付けば俺は古畑ワールドにすっかり魅了されていた。

 今まで見てきたドラマの中で一番好きな作品は何かと聞かれたら、真っ先にこのドラマを挙げるほど大好きになり、最近では全話収録されたBlu-ray BOXを購入し、何度も見返して新たな視点の探求もしている。

 そんな『古畑』に没頭するうち、次第に「俺もストーリーと犯人役のキャスティングを考えてみたい」と思い始めた俺は、自分で考えたストーリーをiPhoneのメモに書き残すようになった。
 今回は、その一部を紹介していきたい。

旅行く殺人者
犯人:新山秀作(にいやま・しゅうさく)
演:斎藤工
職業:バックパッカー
凶器:ナイフ
〜あらすじ〜
新山は、未だ見たことのない地を求めて世界中を飛び回る青年。あらゆる国を訪れているため英語が堪能であり、各地の産業や文化などにも詳しい。普段は次なる旅へ向けての資金を稼ぐために日本国内でアルバイトに明け暮れている。ついに目標金額を達成した矢先のある日、不景気による雇用者削減を理由に、突如として長年勤めていたアルバイト先を解雇されてしまう。旅の資金を調達する手段を絶たれたことに激昂した新山は、無人のバックヤードで店長・越後を刺殺し、旅の資金を手に国内からの脱出を試みる。

あの世の物語
犯人:塚本玲菜(つかもと・れいな)
演:有村架純
職業:絵本作家
凶器:懐中電灯
〜あらすじ〜
塚本は、デビュー作『あるくドラゴン』シリーズの累計販売部数が100万部を突破した人気絵本作家。七光りに頼りたくないという信念から、自身が少女コミック作家・小石川ちなみの姪(小石川の妹の娘)であることは公表していない。シリーズ続編の制作と並行して新作絵本の完成が目前に迫っていたが、出版社側が求めているのは高い利益が期待される『あるくドラゴン』シリーズであり、それ以外は一切受け付けない旨を告げられる。プライベートの時間をも注ぎ込んだ制作期間が無駄となったことに憤慨した塚本は、担当編集者・佐口を撲殺する。

五つ星のプライド
犯人:宇都宮勉(うつのみや・つとむ)
演:北村一輝
職業:ホテル総支配人
凶器:ライフル
〜あらすじ〜
かつて日本有数の高級ホテルとして知られたホテル皇楼閣は、建物の老朽化と客足の減少から、慢性的な赤字に悩まされていた。ある日、隣のホテル・アルファセカンドから吸収合併を提案される。利益と伝統のどちらを取るかの2択を迫られた宇都宮は、祖父の代から続くホテルを守ることを決断する。自室に仕掛けた狙撃装置を作動させた宇都宮はホテル・アルファセカンドの支配人室を訪ねる。そして吸収合併についての返答をしながら、支配人・水堀を銃殺する。

開いたドンペリ
犯人:翔輝(しょうき)
演:白濱亜嵐(GENERATIONS)
職業:ホスト
凶器:拳銃
〜あらすじ〜
歌舞伎町のホストクラブ「DAHLIA」に所属するホスト・翔輝は、数年前まで年収が軽く1億円を越すほどの圧倒的な人気と歌舞伎町No.1ホストの座を手にしていた。しかし、時代の流れと共に人気は下り坂となり、今では若手たちに大きく差をつけられている。かつて彼の熱狂的ファンであった女性までもが1番人気の若手・エレンに乗り換え始めていた。翔輝はエレンを帰り際に銃殺し、返り咲きを目論む。

眠れる口紅
犯人:白井泰恵(しらい・やすえ)
演:石原さとみ
職業:社長秘書
凶器:睡眠薬
〜あらすじ〜
株式会社ブレイドフロントの社長秘書を務める白井は、秘書検定1級の資格を持つ非常に優秀な人材。秘書としてだけでなく、妻としても社長・邦明を支えていたが、密かに別の男性・石川とも関係を持っていた。ある日、白井が石川の子を身ごもったことが判明する。白井は一度は離婚をしようとするが、邦明が法的手段を取る可能性を考え、不倫の隠蔽と巨額の遺産を目当てに邦明の殺害を計画する。邦明は、多忙ゆえに日頃から睡眠薬を常用していた。白井はこの習慣を利用し、致死量の睡眠薬を混入したコーヒーを邦明に飲ませ、中毒死させる。

従順な復讐
犯人:福部雪典(ふくべ・ゆきのり)
演:竹内涼真
職業:執事
凶器:警棒型スタンガン
〜あらすじ〜
雪典ら福部家は、明治時代から大企業を経営する名家・猪狩家に代々仕えてきた。雪典は当代の令嬢・百音の世話を担当している。百音は両親から可愛がられすぎたために非常にわがままな性格をしており、雪典の悩みの種であった。雪典の些細なミスすら許さない百音は、遂に雪典の解雇と福部家との決別を一方的に宣言する。百音のあまりに横暴な振る舞いに福部は怒り心頭に発し、百音を電殺する。

おののく調理場
犯人:外村滋彦(とのむら・しげひこ)
演:二代目 中村獅童
職業:板前
凶器:包丁
〜あらすじ〜
高級料亭「成蘭亭」で板前を務めている外村は、料亭から独立して開業する夢を一途に抱いていた。開業資金も貯まり、決意を固めた外村は店長・木原に話を切り出す。しかし、木原からは外村ほどの技量を持つ料理人が他にいないことを理由に残留を求められる。いとも簡単に自分の夢を握り潰された外村は、今まで受けてきた叱責や指導による怨恨も相まって木原を刺殺してしまう。

筆の過ち
犯人:三井龍雲(みつい・りょううん)
演:本木雅弘
職業:書道家
凶器:日本刀
〜あらすじ〜
日本の文化を代表する人物の1人として万国博覧会やニコニコ超会議のようなイベントに出演するなどして世界的に活躍する書道家・三井は、活動35周年を記念する特別個展を開催する予定であった。しかし、唯一のスポンサーであった阪神物産が新しく就任した社長の意向を理由に降板してしまう。これによって個展の開催が不可能となってしまった三井は、腹いせに阪神物産の広報部長・竹岡を背後から斬殺する。

知りすぎな男
犯人:河西達朗(かさい・たつろう)
演:大泉洋
職業:新聞記者
凶器:石
〜あらすじ〜
東京政経新聞の記者・河西は一度も自分で特ダネを見つけたことが無く、遂にやらせに手を出す。しかし、ネタを仕込む姿を偶然通りかかった上司・有賀に発見されてしまう。河西は、この事実を会社へ報告しようとする有賀を止めるため石で撲殺する。その後、自身がその殺人現場へ記者として再び赴くこととなる。現場の様子が記事にあまりにも細かく書かれていることに古畑は不審感を覚える。

貴方が欲しいから
犯人:吉崎満智子(よしざき・まちこ)
演:観月ありさ
職業:小学校教諭
凶器:青酸カリ
〜あらすじ〜
区立牧ヶ原南小学校教諭・吉崎は、同校の男性教諭・田渕と数年ほど前から不倫関係にあった。吉崎は独身であるが田渕は妻子持ちであるため、お互いに結婚願望はあるものの、田渕は妻にこの事実を切り出せずにいた。ある日、この事実を耳にした田渕の妻・恵子が不倫相手を探しに学校へ乗り込んでくる。妻への対応という絶好の機会を得た吉崎は、同僚に淹れさせた緑茶に素早く青酸カリを混入し、恵子に飲ませて毒殺する。

チェックメイトの一手
犯人:常磐蔭寅(ときわ・かげとら)
演:堂本光一(KinKi Kids)
職業:チェスプレーヤー
凶器:灰皿
〜あらすじ〜
「神の子」と称されるチェスプレーヤー・常磐は、圧倒的な強さと勝率で日本チャンピオンの座に君臨する実力者。しかし、その裏では補聴器に見立てたワイヤレスイヤホンで師匠・桑原からのアドバイスを聞きながら対局するという不正行為を行っていた。世界王者への挑戦を数日後に控えたある日、自身の卑劣な行いに罪悪感を抱き続けていた桑原は、常磐に不正行為への加担から手を引くことを告げる。窮地に追いやられた常磐は、立ち去ろうとする桑原を撲殺してしまう。

 …と、挙げればキリがないので今回はこの辺で終わりにしておく。
 ちなみにストーリー構想は、ステイホーム期間中に比べてスローペースではあるものの、規制が緩和された現在も続けている。
 そのうち第2弾、第3弾、…と投稿していければと思っているので、心の中で密かに楽しみにしていてくれると嬉しい。

※これらの事件は創作であり古畑任三郎は架空の刑事です。

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