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ジョリーフォニックスのお話 5 〜ひっかけ単語〜

フォニックスは英語を読む、書くためにはとても便利なものですが、残念ながら全ての英単語をフォニックスのルールで読めるわけではありません。それは、英語という言語が長い歴史の間に様々な言語の影響を受けてきたためです。

言語において、文字と音のルールは様々です。例えば、イタリア語はほとんどが1つの文字につき決まった音は1つだとされています。一方、英語は様々な例外の読み方が発生するケースがあります。

英語は、発音と綴りが一致しない単語が多いので有名です。なぜ現代の英語がこのようになったのか、という英語の歴史を研究する「英語史」という学問があるくらいです。

ジョリーフォニックスでも42の基本的な音を学ぶと同時に、フォニックスのルールでは読めない例外の(重要な)単語も練習します。普段英語に日常的に触れている地域では42音の指導に並行してこの例外の単語も指導していきますが、日本では基本となる42のフォニックスに慣れてきた頃に少しずつ導入するのがいいかな、と思います。

Tricky Words ひかっけ単語

例外的な読み方をする単語のことを、ジョリーフォニックスではTricky Words(トリッキー・ワード)と呼んで指導しています。ジョリーフォニックス・トレーナーの第一人者でもある山下桂世子先生はTricky Wordsを「ひっかけ単語」と呼びました。英語のTrickyの絶妙なニュアンスが再現されていて納得の訳語です。

ひっかけ単語とは、フォニックスのルールだけでは読むことができない単語のことです。単語をそのままフォニックスのルールでブレンディングする(つなげて読む)と、正しくない発音になってしまいます。ですから、それらの単語は目で見て認識できるようにしなければなりません。

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ちなみに、ひっかけ英語は読み方が難しいからトリッキーなのではありません。単語のどこかにフォニックスのルールで読めない「トリッキー」な部分がある、それをみんなで見つけて「ひっかからないようにしよう!」ということが大切です。

子どもたちにとっても、「この単語は例外だから、暗記して覚えようね」と言われるよりも、「この単語はみんなをひっかけて間違った読み方をさせようとしているから、みんなでそれを見つけて、ひっかからないようにしよう!」と言われる方が、ずっとおもしろいと思いませんか?

ジョリーフォニックスは、現場の先生が実際に子どもたちのことを思いながら、子どもたちに優しく、そして楽しく指導できるような工夫が随所にされていて、私は大好きです。

どこが「ひっかけ」なのかを確認する

*英語の音は本当はカタカナ表記しない方がいいのですが、便宜上、ここでは一番近い音で書いています。

例えば、be というひっかけ単語があります。これをフォニックスのルールで読もうとすると「ブッ」と「エ」という音を組み合わせますから、「ベ」という音になります。しかし、実際の発音は「ビー」です。

さて、どこが「ひっかけ」かな?と子どもたちに聞きます。「b」は「ブッ」とフォニックス通りの発音です。では「e」はどうでしょう? この「e」がフォニックス通りの発音になっていません。「ee イー」と発音しなくてはいけない!

つまり、be は「e」がひっかけであることを確認します。色を使って e (ひっかけ部分)を強調するのもオススメです(私は赤色で表示したり、星印をつけたりします)。ひっかけ部分を視覚的に認識できるようすることで、「ひっかからないぞ〜」という気持ちで読み方を意識できるようになります。

書く練習は多くても3回まで!

次に、Look, Cover, Write & Check (単語のお手本を見る、お手本を見ないで単語の音を言いながら書く、書いたあとすぐに確認する) という方法で練習します。日本の漢字のように何度も何度も書いて練習はしません。せいぜい書くのは3回まで。

あとは、一度習ったらその場で完璧に覚えようとするのではなく、レッスンの度にカードを使って復習しながら、「be = ビー」と発音する経験値を増やしていきます。

be と同じ「ひっかけ」を持つ単語に、he, she, me, we があります。これらはみんな「e」がひっかけです。ですから、これらの単語はこの「e」のひっかけを知っていれば、類推して読むことが可能です。同じひっかけパターンの単語が他にもある場合は、最初の単語とセットで教えます。

ただし、上の be も「b」と「ee」というフォニックスに十分慣れ親しんでいるから、「ひっかけ」に気がつくことができます。フォニックスの経験がまだ少ない場合、その「ひっかけ」自体を理解するのは難しいです。

基本の42音に十分慣れ親しんでいる場合、一度「ひっかけ」の文字と音の対応を学んでしまえば、その単語が厄介と感じたり、不規則と感じたりする抵抗感は少なくなると感じています。

Sight Words(サイトワード)

以前に、英国のホストシスター(私にジョリーフォニックスを初めて教えてくれた幼稚園の先生)と話題になったこと、それはSight Words(サイトワード)との違いです。

英語圏の小学校に通った・関わった経験がある方にはおなじみだと思うのですが、英語圏の学校では、小学1年生からフォニックスと同様に、Sight Word (サイトワード)という重要単語を学びます。Sightは「視覚」です。つまり、見ただけで理解し、読むことができることを目指す重要単語です。

このサイトワード、英語圏ではどこでも悩みの種というか、先生も保護者も指導に苦労しているというか、指導法が試行錯誤されているというか。インターネットで調べてみると、様々な相談や指導法がたくさん見つかります。

ホストシスター曰く、サイトワードは目標であって、見ただけで自動的に認識できるようになることを目指す、英語では絶対に欠かせない重要単語のこと。そして、サイトワードは英語での頻度が高い順に教えられます。例えば、'the'という単語は、最もよく使われる単語の一つで、最初に教えられる単語の一つでもあります。

通常、サイトワードは音素ごとに解読したりせず、単語まるまる全体として学び、暗記するように教えられてきました。子どもたちは、単語の形を覚えるように言われ、フラッシュカードでひたすら訓練されてきました。ですから、大人でもサイトワード=大変というイメージを持つ人が多くいます。

単語を積極的に分解できるように

中には本当に厄介な単語、例えば eye ようなものがあります。この単語は、たとえ上級者であっても、知らなければ文字化または音声化することはできません。

しかし、eye のように完全に不規則な綴りの英単語は、全体の2〜4%程度だそうです。ということは、サイトワードの不規則な単語の多くは、一部(ひっかけ)を除いてフォニックスのルールが当てはまる「ひっかけ単語」であり、ひっかけ以外はフォニックスの知識があれば読むことはできます。

単語を丸々暗記させるのではなく、どこがひっかけなのか、全部ひっかけ(=完全な不規則単語)なのか、単語自体を子ども自身が分析できるような指導の方が、ゆくゆくは子どもたちのためになり、単語を積極的に分析することで、長期的な記憶に残すことができるのではないかと考えています。

参考資料として

ある程度ひっかけ単語を学習したら、こういう歌で練習するのも一つの方法です。

ジョリーフォニックスは「同じひっかけの言葉はまとめて教える」というスタンスです。英国のナショナル・カリキュラムでもひっかけ単語をフェーズごとにまとめていますが、ジョリーフォニックスで指導する順番とは異なっていますので参考までに。

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この表はtwinklというサイトから。このサイトは超・超・超おすすめです!私も随分前(もう10年くらい?)からお世話になっています。いつか、このtwinklのサイトについては詳しくご紹介したいと思います。

英国在住のジョリーフォニックス・トレーナー山下桂世子先生のサイトです。ひっかけ単語の具体的な指導について書かれています。

現地の先生方も指導を工夫されていますので、ヒント満載です。GoogleやDeepLなどの機械翻訳を使えば意味が大体わかります。

最後に。ホストシスターお気に入りのフォニックス動画です。


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