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タコグラフデータ→Googleストリートビュー→車内エンタメ空間?! 〜JDLA主催ハッカソンで、ABEJAがサポートしたチームが大賞!〜

ディープラーニングの技術で新サービスの開発を競うJDLA主催「CDLE※ハッカソン」でこのほど、ABEJAがメンターとしてサポートしたチームが大賞を受賞しました!

チームが開発したのは「TACHOTIFY」(タコティファイ)。乗用車の直近5分の走行状況を解析し、Spotifyからおすすめの楽曲を選んで自動で再生するシステムです。

大賞受賞の特典として、10月10日(木)には、日経X TECH EXPO2019・X TREND EXPO 2019内で行われたセッション「ディープラーニング活用最前線~アワード企業に学ぶ~」内で、試作品を発表しました。

受賞チーム記念写真


スポンサーでドライブレコーダーを扱う企業「矢崎エナジーシステム」から参加者に出された開発のお題は...?

「1年分のタコグラフ(車走行)データを使って自社では出てこないアイディア求む」

自動運転の普及で運転が不要になれば、移動中の車内空間はそれまでの移動空間にとどまらず、何かを楽しみながら時間を過ごす「エンターテイメントを楽しむ空間」に変わっていくはず。そうなってきたとき、ドライブレコーダーを提供する企業として、どんなサービスが提供できるだろうかーー。

法人向けのAI関連事業に取り組んでいる同社ですが、自動運転に伴い車内の新しい過ごし方が今後求められるようになるとみて、消費者向けサービスの開発も必須だと考えているそうです。

そこで社内だけでは出てこない「ナナメ上」のアイディアが生まれることに期待し、今回のハッカソンのスポンサーに。参加チームには、1年分のデジタルタコグラフデータを開発用に提供しました。

提供データ

タコグラフデータから楽曲レコメンドを行うアイディア

ハッカソンの参加チームは初日、出された「キーワード」を元に、メンバーがやりたいアイディアを出していきました。

最初に出たのは「路面の異常検査」「運転をスコアリングしてポイントを貯める仕組み」...なんとなく既定路線から脱せない。

そんな中、メンバーの一人からドラレコのデータを使って楽曲のレコメンドを行うアイディアが飛び出しました。消費者向けのサービスで、かつ車内が「エンタメ空間化」するという点で、求められているお題にぴったり。ありそうでなかったこのアイディアに、チームは盛り上がっていきました。

ブレスト中の様子

タコグラフデータ⇒Googleストリートビュー⇒車内エンタメ空間へ?!

アイデアは、どうやってかたちになったのでしょうか。タコグラフデータに含まれる緯度経度などのデータをGoogleストリートビューなどに紐づけます。それらから抽出された運転風景や車のテンポ/リズムなどの特徴と、Spotifyのプレイリストの歌詞情報から抽出された特徴をつなげ実現しました。

システム概要


特に、運転している場所を認識する画像分類モデルの構築にあたっては、ABEJA Platformのアノテーションツールテンプレート機能を活用。緯度経度をGoogle ストリートビューのデータに紐付け、紐付けた画像データにたいして、”海”、”山”、”市街地”...などなどアノテーション作業を行いました。その数、およそ1250枚...!(もちろん、参加メンバーは皆働いているのでその合間をぬって作業しています。)

DL活用ポイント

メンバーの努力の積み重ねの結果、ドライブシーンに合わせた楽曲レコメンドシステム「TACHOTIFY」が完成。例えば、車が、桜が満開の市街地をゆったりと走っていると、”SAKURA/いきものがかり”が、海沿いの道を走ると”夏の思い出/ケツメイシ”がレコメンドされます。

2019年9月28日にFinc Technologies実施された最終報告会では、みごと大賞を受賞!


データ形式の枠にとらわれないアプローチ、着想の面白さを評価

参加した審査員の方々からも、柔軟なアプローチ方法や、着想の面白さについて評価いただきました。

中部大学 工学部情報工学科 山下隆義准教授/JDLA有識者会員のコメント
全体として、すごく良かったです。今回与えられたデータとSpotifyをうまく組み合わせたというのは、非常に正しい手法の選択で、面白いですね。特に、プログラムといったデータの情報を言語、単語にする点は、いろんな特徴量のとり方を工夫されていました。また、タコグラフの緯度経度のデータをGoogleストリートビューの画像データに変換し、さらにその画像をアノテーションするという非常に大変な作業もあり、苦労されたんだろうと思います。同じシーンでも乗車している人の年齢層や運転している車によって聴きたい曲が違うはずなので、そのあたりを反映できたらもっとよくなると感じました。
connectome.design株式会社 佐藤 聡代表取締役社長/JDLA理事 兼 産業活用促進委員長のコメント
ビジネス、発想、技術のバランスが良く、全体的に高い評価でした。アイデア面では、審査会にて、テーマ提供スポンサーの矢崎エナジーシステム・矢崎社長からも「矢崎エナジーシステムはとても真面目な会社。社内だけでは、デジタルタコグラフデータと音楽を組み合わせるという発想はなかなか出てこないだろう」とのコメントをいただきました。また、技術面では、ディープラーニングをきちんと活用していた点、プレゼンテーション後には、「歌詞がない楽曲をどのようにレコメンドするのか」という審査員からの意地悪な質問にも、方針を持って展望を回答をしていた点が良かったです。


仕事ではなく、好きだからやることの大切さ。

最終報告会の終わりには、今回データを提供した矢崎エナジーシステム株式会社 矢﨑航代表取締役社長からも、講評をいただきました。

矢崎エナジーシステム株式会社 矢﨑航代表取締役社長のコメント     皆さんの発表を聴いて、大変感銘を受けました。「仕事だからやる」のではなく、「好きだからやる」ということは、非常に大切なこと。社内だけではなく、多様な方々が集まって出てくる豊かな発想、尖った発想を取り入れていきたいと思っています。みなさんの中で、矢崎グループや、我々が目指す「交通事故のない社会づくり」の取り組みに関心がある方がいらっしゃいましたら、是非教えてください。これをきっかけに、一緒に新しいものをつくっていきましょう。」


企画、デザイン、開発、多様な視点がうまく噛み合った結果

メンターをしたABEJA Platform事業部の中尾さんにも話を聞きました。

データをもらって自由な発想でAIモデルを作るハッカソン、最初はどうなるんだろう?という気持ちも正直ありました。でも、実際に体験してみて、アイディアをプロダクトとしてかたちにしたり、車内環境をエンタメ空間にするというお題に対して試行錯誤するプロセスはとてもおもしろかったです。
今回の結果を得られたのは、メンバーのバランスが良かったから。まさにテクノプレナーシップじゃないけど、企画、デザイン、開発それぞれの個性がバラバラのままに終わらず、1チームとして、いいプロダクトを作ることにフォーカスできました。

今回の取り組みをきっかけに、商品化がすすむといいですね!

参加されたチームのみなさま、イベント運営に携わられたみなさま、
本当にお疲れさまでした!

※1 Community of Deep Learning Evangelists(略称:CDLE、シードル)
一般社団法人 日本ディープラーニング協会(JDLA:https://www.jdla.org/)が実施するディープラーニング資格試験制度合格者が所属するコミュニティ。「ジェネラリスト検定(G検定)」「エンジニア検定(E検定)」の2つの検定があり、いずれかの試験合格者が所属する。


ABEJAでは、ともに働く仲間を募集しています!

今回のハッカソンで利用いただいたAI開発運用基盤ABEJA Platformでは、以下のポジションの募集を行っています。

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