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ワールドクラス候補生/Jakub Kiwior

 ポーランド代表としてW杯に出場して1/21にアーセナルへの移籍が決まったヤクブ・キヴィオル。スペツィアでの活躍が評価された訳ですが、半年前までは何者でもありませんでした。半年前の私にキヴィオルがアーセナルに移籍していると言っても恐らく信じていないでしょう。では、何がキヴィオルの価値を高めた原因になったのでしょうか?昨季と今季で異なる起用法と彼のプレースタイルについて説明できたらなと思います。

経歴

名前:ヤクブ・キヴィオル
所属:スペツィア→アーセナル
国籍:ポーランド🇵🇱
ポジション:CB・DH
今季成績:17試合0得点0アシスト
主なスタッツ(22-23シーズン/セリエA)
・パス成功率85%
・インターセプト数1.4/試合
・タックル数1.3/試合
・クリア数4.0/試合
・空中戦勝率65%

 キヴィオルを語る上で、欠かせないのが、守備的MFからCBへのコンバートでしょう。ボランチだった昨シーズンはブラビアやコヴァレンコらとポジションを分け合っており、絶対的なレギュラーというわけではありませんでした。最初に「何者でもない」と言ったのはそれが理由です。

 昨シーズンのスペツィアはチアゴ・モッタ監督の下、433をメインに戦うチームでした。当初のレギュラーはブラビアで、彼の負傷離脱後はコヴァレンコとキヴィオルで回していたという感じです。チアゴ・モッタはポジショナル志向の強い監督ではありますが、スペツィアではあまりそれが体現できるとは言い難かったです。GKのプロヴェデルこそイタリアでは数少ないリベロ型のGKであると言えますが、当時のCBのエルリッチやニコラオウ、SBのアミアン、レカはプレス耐性が高いとは決して言えず、割と早い段階で前線へロングボールを蹴る場面が珍しくありませんでした。そのため、中盤の選手にはセカンドボールを拾うこと、カウンターの芽を潰す能力が求められました。アンカーを務めていたキヴィオルはパス出し能力よりも危機察知能力を活かしたインターセプトが持ち味の選手というのが私の評価です。

 キヴィオルの評価を高めるきっかけとなったCBへのコンバート。彼の才能を開花させたのは、今シーズンからスペツィアの監督を務めるルカ・ゴッティです。ゴッティ監督は352を愛用する指揮官で、キヴィオルは3バックの中央でリベロとして振る舞うことを要求されました。これが大当たり。パス出しのできるレフティーのCBとして評価がうなぎのぼりに。私は今シーズンのスペツィアをセリエAで注目するべきチームのひとつだと思っていますが、その要員がキヴィオルの存在であると言っても過言ではありません。

プレースタイル

 前述した通り、プレス耐性は高いと思います。相手のプレス下に於いても慌てずにボールを運ぶまたは去なす。足元に自信がある故に最終ラインの選手にしては危ないと思うような切り返しをすることもありますが、全チームが前半からハイプレスを仕掛けてくるリーグではないセリエAではさほど問題に感じる場面はなかったです。スペツィアのサッカーの性質上、ロングボールを蹴るとしたら3バックの左右であるアミアンまたはニコラオウなので、キヴィオルがロングフィードを展開することはほとんどありません。ボールを受けに来たアンカーまたはインサイドハーフの選手に対して縦パスを入れるのが保持時に於けるキヴィオルの役割でした。低くて速いパスを多用する選手です。アーセナルの試合を見ているわけではないので、断言はできませんが、ビルドアップの構造がしっかりしているチームであれば保持時に腐ることはほぼないんじゃないかと思っています。プレス強度の激しいプレミアリーグでどこまで許されるかは分かりませんが、標準以上のビルドアップ能力は保証しましょう。左足の精度を10としたら右足を使う能力も5から6程度はあります。

 CBというポジションと守備能力は切り離せません。こちらの能力について問われた時、正直プレミアリーグで通用するか疑問符を付けざるを得ません。ボランチで出場していた時も前に出て潰しにいくのが得意な選手でしたが、ボランチの選手がマークするのは主にトップ下をはじめとする中盤の選手です。CBとして屈強なストライカーを潰すのとは難易度がいくつか落ちると思います。セリエAの試合でもフィジカルの強いアタッカーには手を焼いていた印象なので、さらにフィジカルコンタクトが重要視されるプレミアリーグだと簡単に収められてしまう危険性は常に付き纏うはずです。危機察知能力は高いので、相手ストライカーにボールが渡る前にカットするというのが理想的でしょうか。ユヴェントスvsアーセナルのフレンドリーマッチでは、アーセナルのプレス強度は高く、相手チームに自由にボールを回させないチームというイメージがあるので、キヴィオルが苦手な守備能力をチーム全体でカバーすることは充分可能だと思います。

 左SBでの起用を考えている方が一定数いましたが、私はお薦めしません。機動力がそこまで高いわけではないので、俊敏なドリブラーとの1vs1をあまり得意としておらず、スペツィアで味方のカバーに入った際もスピードあるいは変幻自在なドリブラーに後手を踏んでいた印象です。起用するなら左CBがメイン、オプションとしてアンカーになると思います。アンカーで出る場合は危ないタックルとロングフィードがないジャカと言えば想像しやすいかもしれません。

まとめ

 予想以上に早い旅立ち、そしてビッグクラブ挑戦となったキヴィオルの紹介をさせていただきました。個人的な評価ではありますが、フルシーズンスペツィアに在籍していればセリエAベストイレブンに入っていた可能性が高い選手だったと思います。今回のアーセナル移籍は嬉しくもありますが、寂しくもあるのが正直な気持ちです。でもやっぱりまだ寂しいの方が大きいかな。私の寂しさを払拭するような活躍をアーセナルで見せてくれることを願っています。まずはマガリャンイスやジャカとのポジション争いになるでしょう。キヴィオルが今シーズンのアーセナルのリーグ優勝に少しでも貢献できたら何よりの幸いです。





(了)

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