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木曜日の恋人

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SKYWAVE FMで毎週木曜日23時から放送の「東別府夢のDream Night」にて朗読されましたおはなしたちです。読み切りですのでお好きな所からどうぞ。
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#恋愛

ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜㊻ 『神宮でナイター』

一回の裏  ずっと野球が嫌いだった。  子供の頃、テレビで読売巨人軍の試合中継があると父…

あべたかふみ
8か月前
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ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜㉜ 『わたしが九十才になっても』

 それは、なんてことはない戯れの会話から始まった。  金曜の夜、彼の家で二人はワインを飲…

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ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜㉛ 『九月が終わったら起こしてくれ』

 人間は人生の三分の一を眠って過ごす。  そんなことは誰だって知っている。  毎年、年の…

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ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜㉙ 『いい夢を、おやすみ』

 夜空というものは、それを見る者の心のありようを鏡のように正確に反射する。  嬉しいこと…

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ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜㉘ 『世界はきっと終わらない』

 最後の日、僕らは裸で抱き合っていた。  彼女は僕の耳元で囁くように歌を歌った。 「この…

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ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜㉗ 『ドラッグストア・カウガール』

 壁一面に据えられた棚には色も大きさも値段も違う商品が並んでおり、それぞれの下に、ラッシ…

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ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜㉖ 『晴れ、のち雨』

 六月の末、彼からLINEがきた。 「来週、いつもの場所で待ってる」  わたしの都合を聞きもしないで、そんな風に誘ってくる所が、いかにもあの人らしい、とわたしは思った。そういう強引さを、出会ったばかりの頃、わたしは〝男らしさ〟だと勘違いしていた。いまとなっては、ただ鼻につく身勝手さにしか思えない。  わたしは返信をせず、既読もつけなかった。何度も電話が掛かってきたけど、それに応じることもせず、彼を頭の中から追い出し、ただ仕事に没頭した。しようとした。けど、服飾関係

ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜㉕ 『純白の恋人たち』

 二人は本当に若かった。  右も左も分からず、この世が、人々の善意によってのみ成り立っ…

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ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜㉔ 『与える男』

 我々はいま、バーにいる。  どんなバーか。テディ・ウィルソンやアート・テイタムといっ…

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ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜㉒ 『虹が消えぬまに』

「やまない雨はない。そして、冷めないコーヒーはない」というのが僕の大まかな人生観だ。 …

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ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜㉑ 『元町・中華街』

 横浜で一つ仕事を終わらせたあと、時間に余裕があったので、わたしは、思いきって中華街へと…

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ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜⑫ 『ハチ公前物語』

 私の名前はハチ公像。東京都渋谷区道玄坂1丁目在住の銅像である。  その昔、ここ渋谷駅で…

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ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜⑪ 『次の駅に着いたら』

 午前二時。いつものバーのカウンターに突っ伏して眠っていたわたしは、がばっと起き上がり、…

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ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜⑩ 『スナック夢』

 今じゃあ信じられないだろうけど、昔はこの町だって随分栄えてたんだわ。ニシンが沢山獲れて、数の子の加工なんて日本一だったのさ。映画のロケ地にもなって、高倉健も来たし。それが今じゃあご覧の通りさ、すっかりさびれて、寂しい港町になっちまったよ。  そんな町で暮らしていく中で、唯一の楽しみと言やあ、酒を飲むくらいのもんだべ? 賑やかだった頃は、そりゃあ、キャバレーだパブだ、つってなんでもあったけど、今じゃあポツポツとスナックがあるばかりだもんな。ああ、そうそうスナックと言やあね、