カスタマーハラスメントとは企業側の言い逃れ 現場に権限を与えないのがハラスメント

カスタマーハラスメントという言葉があるらしい。
しかし、その大部分は、企業側が末端従業員をハラスメントしているのに、それをくらますために、顧客が末端従業員をハラスメントしていると言い訳しているに過ぎない。
末端従業員には権限が与えられていないため、顧客が今何に不満を持ち何を主張しているのかについて耳を傾けることができない。「そうですね」と思っても、上からの指示どおりに「こう決まっている」としか言えない。
マニュアルを見て客を見ないから客が怒り出すのだ。それが日本では常態化している。いつも僕が記事にしているのもそういう事例が多い。
こないだ弟に聞いた話では、マクドのバイトをしていたとき、客にレコメンドすることがマニュアル化されているために注文を聴いた後に「ご一緒に何々などいかがでしょうか」と言わなければならない。相手が見るからにやくざとわかる人物でも。だから言った。すると
「俺は何何と何何や、言うとるやろ! それを出したらええんじゃ!」と言われた。これはカスタマーハラスメントか? いや、企業ハラスメントだ。レコメンドするかどうかは、様子を見て、たとえば小さい子がいるから、何何ジュースもありますよと言う場合などは、こちらから言ってもいい。状況を見て、言うか言わないかは従業員が決められるように権限を与えるべきだ。権限を与えないのが、ハラスメントなんである。カスタマーがハラスメントしているのではない。
はとこはNTTdocomoに勤めているが、電話で何か質問に答えるには顧客情報をすべて検索するため、根掘り葉掘り相手の情報を聴かなければならない。「ユーザーだ」でいいではないか。質問内容が、教えることにより問題が起こるかもしれない内容のときだけ必要なだけの情報を引き出せばいいのに。それなのにすべてのケースについて何もかも聞くから、他の客の待ち時間も長いし、顧客はせっかくやっと人間に辿り着いたのにこっちのことばかり聞かれ、イライラしてくる。その挙句の答が規定により、何何できません。では、客もキレるだろう。
中国の会社huaweiの日本支店のカスタマーセンターなら、スマホの使い方などの簡単な質問ならこちらの名前さえ聞かない。何何のユーザーだが、こうこうこうなるのだけど、どうしたらいいですか?と聞くと、こうしてください、あ、できました。以上である。ここでカスタマーハラスメントなどという奇妙な言葉を持ち出さなくていいのは、オペレーターにケースバイケースの権限があるからだ。
日本人学校の生徒と親が殺されたとき、アメリカの警察官に「被害者の娘はうちの生徒だが保護する必要があると考えている。娘の居所はわかるか」と聞くと「まだ発表できない情報だが、あなたの事情はわかるので、教えるが内密にしてくれ。いいか。ショックかもしれないが耐えてくれ。若い女性が一緒に殺されていったという報道がされているが、被害者の娘であることはほぼ間違いない」と言った。まだ発表してはいけないのに、一警察官の判断で言った。「わかった。つたない英語ですまなかった」と僕は言った。「ミスターナガサワ、あなたはよくやっている。ショックに耐えてくれ」と警察官は言った。
末端に権限があるのだ。

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