魂の螺旋ダンス 改訂増補版 (2)

・ 太古から存在するシャーマニズム

人類の精神文化の歴史を覗き込む。
その遠い遠い始原の冥がり。
猿と人間の間。
その最初のほの灯りの中に、すでに「シャーマニズムの世界」は、存在したことが認められる。
ネアンデルタール人の埋葬跡、クロマニヨン人の残した壁画。

人が動物であり、動物が神であり、すべての存在が互いに神秘的なつながりを有していた時代。
人類の幼年期。
そこにシャーマニズムの原点がある。

もっとも今日では、その歴史上の真の姿を知ることは難しい。
世界中にシャーマニズムの伝統は伝わっているが、その初源的な姿は、どのようなものだったのだろうか。

そのささやかなヒントになるのは、アメリカ先住民社会など、部族的な先住民社会を比較的最近まで維持してきた地域である。
これらの地域では、古いシャーマニズムの形が、ある程度保持されていると考えることができる。

人類の歴史の原点は、狩猟採集生活にある。
百万年の長きにわたって(猿であった時代を含めればもっと長い間)、狩猟採集は、世界中の人類の基本的で普遍的な生活様式であった。
だから、狩猟採集社会を比較的最近まで伝えてきた社会のシャーマニズムは、歴史の始原のシャーマニズムに比較的近いものがあると考えられるのである。

だが、これには反論もある。
レヴィ・ストロースに言わせるならば、近現代の部族社会は、そのまま歴史上の原始社会と同じなのではない。
それは、一定の歴史的過程を経ながら、退行現象を起こした社会だとするのである。その上、ほとんどの先住民社会は、欧米文化との接触以来、後戻りすることのできない変形を受けてしまっている。

そのどの部分がそれ以前の文化を純粋に継承しているものなのか、今となっては明らかにするのは難しい。

したがって、部族シャーマニズムについて、現在得られる知見をそのまま太古のシャーマニズムにあてはめて考えるのには無理がある。
そこでこの章では、螺旋モデルの原点としての部族シャーマニズムの像を得るために、二つのアプローチを併用したい。

一つは現存する部族シャーマニズムの世界に学ぶこと。

もう一つは壁画などの歴史的資料の語る内容にも耳を澄ますことである。

歴史とは多かれ少なかれ、現時点において考えうる過去の再構成といった側面がある。
それは史実としての太古とは異なるものかもしれない。だが少なくとも私の思想モデルの中の始まりの姿ではある。
そして、とりあえずこの思想的な営みにおいては、それで十分なのである。

・ シャーマニズムの二つのタイプ

シャーマニズムにおいて、シャーマンは様々な方法を用いて通常とは異なる変性意識状態に入る。
変性意識状態は、シャーマンに異なるレベルのリアリティを開示する。
聖なる次元との回路が開かれ、様々な洞察や智恵、勇気や力がもたらされる。

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