見出し画像

危険な罠「先生!教えてください」

私の周りの社労士は勤勉、職業倫理観が高く、志もあり、気さくでお人好し!
そんな素敵な人が多い社労士だが、自分で事業をするのはまた別の話、うまくいく人もいれば、失敗する人もいる。
社労士は人に深く関わる仕事であるから難易度が高い。そして、社労士事務所を経営をするならあらゆる工夫とたゆまぬ努力が必要だ。
今回は人に関わる社労士がハマる危険な罠について話します。

️あなたは何の先生ですか?


私たち社労士は顧客からも先生と呼ばれる。独立をした頃はそれが嬉しく感じることもあったが、今では先生!と顧客に呼ばれる度に身構える。
理由は何かを無償で教えなければいけない…そんな気持ちになるからだ。
専門分野の労務相談やお互いに決めた範囲での相談事であれば構わないが、実はこの問いかけには我々社労士を苦しめる「教育」の要素が潜んでいる場合がある。

教育の難しさ…わかっているつもり

どんな仕事が大変か?
私は真っ先に教育と答える。
教育とは相手がいて、相手を成長させることに意味がある。いくら質の高い教育を提供しても、受ける側の資質や理解度、やる気やモチベーション等によって、その相手の成長スピードは異なる。
そもそも教育にもあらゆる工夫が必要で、その相手に合わせたプロセスを構築する必要がある。
さて、我々社労士は自分たちのサービスの中にこの教育をどれだけ組み込むか?
顧客は人事のプロフェッショナルか?おそらく、そうではないし、それを目指しているわけでもない。私たちが学んで蓄えた知識や技術を駆使して成し遂げる人事の業務を「教えてください」と求められ、顧客に教える形でサポートに入ることがある。いや、むしろいつの間にか教えなければいけない状況になっていることがある。せめて、顧客が教えた通りできるならよいが、できない場合には、相手ができるようになるまで付き合う。それは顧客からのあらゆる質問に応えていくことになる。
大切な時間と体力は次第に奪われていく…
もしこれがサービスとして料金に含まれていれば頑張れる。しかし、そうではないケースの方が多いのが現実だ。

危険なのは便利なツール

顧客が増えれば増えるほどたくさんの人と関わる。それに伴って問い合わせも増える。ラインやチャットの便利なツールが増え、気軽にコニュニケーションが取れるからこそ、調べればすぐにわかることでもなんでも聞いてくる。とりあえず先生に聞いておこう!これが顧客の心情だ。様々な問い合わせは夜中でも休みでも24時間、いつでもやってくる。そして様々な相談に混じって、教育の依頼が含まれていたりする。

様々な相談事例
年末調整って何ですか?
先日のあの書類もう一度送ってください。
なんで今年は所得税の還付が少ないのですか?
扶養の範囲で働いた方が私は得でしょうか?
EXCELが壊れているかもしれません。
クラウドにログインできません。
EXCEL計算式がズレてしまいました。

相談に教育の要素が潜んでいれば要注意!

デジタルな時代、それについていけない顧客は多い。パソコンやエクセル操作がおぼつかず、便利なフォームやツールを提供しても、何を作っても使えない。感覚で使えるような工夫をしても、ログインから操作方法まで教える。最悪の場合スマホの使い方まで教えることも現場ではよくある。
このような顧客とは距離を置いた方が良いかもしれない。
企業として重要なことに取り組む前に膨大な時間を費やす可能性がある。顧客がそこに費用を捻出できるならわかるが、大抵そのような顧客の利益率は低いのが現実だ。

対策を考えておく


なかなか難しい問題ではあるが、対策はできる。私がこれまでやってきた対策を具体的に紹介する。

①顧客の解決のためにまずは話を聞く
ここでは自分のルールとして料金設定をする。(相談料〇〇分〇〇円)、電話で簡易的に相談がくれば改めて話を聞くので時間を設けることを提案する。
もし無料で対応することや相談のしやすさを重視する顧客なら、それは注意が必要かもしれない。社労士側は無料相談に多くの時間を使えないことについて理解してもらう必要がある。毎月の顧問料を見直そう。そこにその相談費用が入っていなければ丁重にお断りをするべきだ。

②自分ができることとできないことを仕分けして明確に伝える。
できることは見積書をつくり、有料である旨を伝える。自分でできないことは誰にどこに聞けば良いかだけを伝える。それだけで良い。もしここで顧客から自分でやるからやり方を教えてほしいと依頼されたら、私ならお断りをする。教育の要素があるからだ。受注するなら高単価で出して良い。自分でやるならすぐ終わるのに相手に教えることで膨大な時間を費やすことになる。

③ポイント
アドバイスはするが、やり方は教えないことだ。また見積書をすぐに出せるツールや仕組みを作っておくことも大切だ。

最後に

デジタル化が進み、便利なツールが増えている。それにより様々な人と簡単に関わる機会が増えた。あらゆる相談はどこからでもやってくる。ある意味チャンスだし、気をつけるべき部分でもある。サブスク社労士、お手軽社労士にはならないようにしたい。
あくまでも利益以上に工数や人件費がかかれば経営は続かない。これを肝に銘じておく。
私たち社労士はあらゆる工夫とたゆまぬ努力が必要だ。さらに、顧客からの依頼や相談が入る時、これはどのようなものか?を咄嗟に判断するスキルも必要だ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?